証券化クレジット:なぜ今か?

Oct 19, 2026
主なポイント
  • マクロ環境と地政学的な不確実性の重なり、そしてタイトな社債クレジット:マクロ経済および地政学的な不確実性の高まりが金利見通しのボラティリティを押し上げており、クレジット市場のボラティリティが再び高まるリスクを残しています。同時に、社債クレジットのバリュエーションは、証券化クレジットとは対照的に、こうしたリスクに対してわずかな対価しか提供していません。
  • 証券化クレジットが現在投資家にメリットをもたらし得る6つの理由:バリュエーション面では、同等の格付の社債に対して相応のスプレッド・プレミアムを提供します。金利感応度の面では、変動金利という特性が金利リスクの管理に役立ちます。リスク面では、構造的なプロテクションと、社債クレジットからの分散が強靭性をもたらします。また、短期のスプレッド・デュレーションは、ボラティリティが高まる局面で有益となり得ます。さらにファンダメンタルズ面では、当資産クラスは質の高い投資適格格付を維持しています。
  • 過去最高の発行がアクティブ投資家の投資機会を拡大:今年は底堅い需要を背景に、欧州の証券化クレジットの発行額が過去最高となりました。発行体の幅が広がっており、アクティブ・マネジャーにとって新たな投資機会への扉が開かれています。

現在のマクロ経済環境および市場環境を踏まえると、証券化クレジットへの配分は特に説得力があると考えています。AIの台頭や、ウクライナおよび中東における紛争の余波が広がるなか、世界的に成長のばらつきが見られ、今後のインフレも不透明な状況となっています。

これらすべてが、金利およびリスク資産の見通しを複雑にしています。社債スプレッドは数年来のタイトな水準またはその近辺にあり、不確実性が高まっている局面でリスクに対する対価は薄くなっています。対照的に、証券化クレジットは社債クレジットに対して魅力的なスプレッド・プレミアムを提供し続けています。これは信用力が劣っているためではなく、構造上の細かな違いによるものです。さらに、以下で述べるとおり、これは単なるバリュエーション面での投資機会にとどまりません。

本稿では、現在の市場ダイナミクスが当資産クラスへの投資にとって理想的なタイミングであると考える理由を解説します。当資産クラスの仕組みと構造については入門資料『証券化クレジット:資産クラス入門』で、長期的な配分の戦略的意義については関連レポート『証券化クレジット: ポートフォリオにおいて多様な役割を果たす資産』で解説しています。

現在の環境において証券化商品が投資家に有効な理由

1)社債クレジットと比較して魅力的なスプレッド。証券化クレジットが提供するスプレッド・プレミアムは、同等の格付の社債と比較して引き続き優位にあります(図表1)。例えば、AA格のCLOは、同等の格付およびスプレッド・デュレーションを有する社債に対して109bpsのスプレッド上乗せを提供します。このプレミアムは、信用力の低さではなく、市場構造と需給要因 ― すなわち証券化市場の非効率性と供給ダイナミクス ― を反映したものです。社債スプレッドが現在のリスクに対してわずかな対価しか提供していないなか、この追加的なキャリーはスプレッドのワイド化に対する有効な緩衝材を提供します。

図表1: クレジット資産別のスプレッド

Spreads across credit assets chart

出所: RBCブルーベイ・アセット・マネジメント、ブルームバーグ、ABS/RMBSの直近の発行銘柄。2026年9月30日時点

2)証券化クレジットの大半は変動金利です。金利感応度が抑えられ、従来の固定金利債券が下落する局面でもより高いインカムをもたらします。これは、短期金利が上昇する環境下では、特に価値があります。実際、証券化クレジットは、構造的に長めのデュレーション・バイアスを持つポートフォリオにとって戦略的な分散手段となり得ます。

3)マクロの不確実性が高まるなか、短期のスプレッド・デュレーションのポジションを保有する意義があります。証券化クレジットはこのための複数の手段を提供しており、投資家はスプレッド変動への感応度を抑えつつ魅力的なキャリーを獲得し、インカムを犠牲にすることなくより慎重なスタンスを取ることができます。

4)構造的なプロテクション。当資産クラスに組み込まれた優先劣後構造 ― ジュニア・トランシェがシニア債保有者に先立って損失を吸収し、キャッシュフローをシニア・トランシェに振り向ける仕組みによって補強されています ― は、クレジット・ボラティリティに対する特有の強靭さをもたらします。これらの構造的なプロテクションについては入門資料で詳しく解説していますが、クレジット・ボラティリティのリスクが高まっていることを踏まえると、現在の環境では特に有益です。

5)マクロの不確実性に直面するなかでの分散の源泉。社債クレジットと比較して分散度の高い証券化商品の特性は、ボラティリティの高い環境において特に価値をもたらします。証券化商品は、社債クレジット・サイクルだけでなく、より幅広いリスク・ファクターへのエクスポージャーを提供します。すなわち、ABSにおける消費者信用サイクル、RMBSにおける住宅ローンの状況、CLOにおけるレバレッジド・ローンの担保プールなどです。その結果、分散された証券化クレジット・ポートフォリオ(ABS、MBS、CMBS、CLOにわたるもの)は、社債クレジットやプライベート・クレジットのいずれと比較しても、テクノロジー・セクターへのエクスポージャーを大幅に低く抑えています。

6)質の高いファンダメンタルズ: 証券化クレジット・ポートフォリオの平均信用格付は、質の高い投資適格水準にあります。今年のマクロおよび地政学的な混乱にもかかわらず、証券化クレジットを支えるファンダメンタルズは引き続き堅調です。例えば、図表2に示すとおり、社債クレジットと比較して、格下げ対格上げの比率は非常に低い水準にとどまっています。

図表2: EUの格下げ対格上げの比率

EU ratings downgrade-to-upgrade ratios chart

出所: モルガン・スタンレー・チャートブック。暦年ベースのデータ。2026年の数値は8月31日時点の年初来。1を下回る場合は、格下げよりも格上げが多いことを示します。

主要なABS、RMBSおよびCLOのセクター全体における担保の返済状況は、質の高い裏付け担保と当資産クラスに組み込まれた構造的なプロテクションに支えられ、概ね安定しています。関連レポート『証券化クレジット: ポートフォリオにおいて多様な役割を果たす資産』で示しているとおり、当資産クラスは近年のマクロ・ショックにおいて投資適格社債よりも強靭であることを示してきました。

過去最高の発行がアクティブ投資家により大きな投資機会をもたらしています

欧州の証券化クレジットは過去最高水準の発行となっており、すべてのサブセクターが成長し、総発行額ベースでは今年1,750億ユーロに達すると予想されています(図表3)。これは、住宅ローンや消費者ローンの残高拡大を背景に、銀行やその他のローン組成機関が自らの貸出の多くの部分を証券化していることが原動力となっています。発行体の範囲は広がっており、融資基準が緩和されている兆候は見られません。

図表3: 欧州の証券化商品の発行は活況

European securitization issuance is booming chart

出所: Concept ABS、ブルームバーグ、Morgan Stanley、2026年9月7日時点。2026年通年の数値はMorgan Stanleyによる推計であり、現時点のデータおよび合理的な前提に基づくもので、将来の結果の確実な指標ではありません。

これは、投資機会が新たなセクターや発行体へと広がるという点で、アクティブ・マネジャーにとって有益です。ただし、銘柄選択の観点ではこれまで以上の慎重さが求められます。証券化クレジットのファンダメンタルズ全般は堅調ですが、一部には軟化の兆しも見られます。

現在の証券化クレジットにおける投資機会

上記の要因はいずれも、証券化クレジットを投資検討に値するものとしています。これらが組み合わさる時、当資産クラスは現在の環境に特有のリスクとダイナミクスに対して極めて有利な位置にあることを示しています:

  • 社債クレジットがタイトなスプレッドと単一発行体への感応度を提供するのに対し、証券化クレジットはワイドなスプレッド、低い相関、そして構造的なプロテクションを備えた裏付けローンの分散されたプールに支えられたキャッシュフローを提供します。
  • 長期デュレーションの資産は金利上昇と根強いインフレのリスクにさらされるのに対し、証券化クレジットは変動金利かつ短期デュレーションのエクスポージャーを取ることができ、金利変動への感応度を抑えつつクーポンの上昇からの恩恵を直接受けられます。
  • 構造的な特性は、かつて誤解され敬遠されていましたが、現在ではダウンサイド・プロテクションと自然なデレバレッジの源泉として認識されています。これは社債クレジットにおける格下げが多い傾向とは正反対の結果をもたらします。
証券化クレジットという資産クラスのメリットは常に魅力的ですが、現在の市場環境は、証券化商品への戦略的な配分が投資家のポートフォリオにメリットをもたらす理由を、これまで以上に浮き彫りにしています。

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