他者がひるむとき、我々はひるまない

Sep 28, 2026

債券のパフォーマンス不振

コメント要約
  • 米国債利回りの急上昇:米国のイールドカーブのここ最近の動きは、中期的な観点で評価した場合、フェア・バリューからオーバーシュートした水準であると考えています。
  • 米金利市場の織り込み:市場は今後1年間でFOMCがさらに100bpsの利上げを行うことを織り込んでおり、その後の10年間、政策金利が5%を超える水準に留まるとの想定になっています。このようなの予想は、インフレ率がFRBの2%目標を大きく上回る水準で恒常的に推移する場合にのみ論理的だと思いますが、そのようなインフレ見通しはインフレ・スワップには織り込まれていません。
  • 欧州のエネルギー安全保障:エネルギー安全保障における欧州の脆弱性は日増しに明らかになっています。しかし、EUのガス消費量は、再生可能エネルギーへの移行推進によって、2022年の水準から約20%減少しており、ピーク容量の60%というガス貯蔵レベルについての緊迫性は過去よりも薄れていると言えるでしょう。
  • ECBの見通し:ガス価格が現在の水準付近で天井を打った場合、ユーロ圏のインフレ率は来年1月に4.0%でピークに達し、その後数ヶ月間で低下するとの見方に確信を強めています。ここでは、10-12月期及び来年1-3月期にECBが2回の追加利上げを行うとの予想も伴いますが、来春以降、追加的な金融引き締めが必要になることはないと考えています。
  • ユーロ圏のソブリン債スプレッド:ユーロ圏のソブリン債スプレッドには圧力が掛かっており、フランス国債は、同国の財政状況に対する懸念が高まり、ソブリン格付けの引き下げの恐れから、大きく売られています。

先週の金融市場では、債券利回りがグローバルに急上昇し、米国債利回りは水曜日に、2025年4月以降で見て最大の一日での上昇幅を記録しました。このような値動きは力強い経済活動を示唆する堅調な米購買担当者景気指数(PMI)の発表と重なりましたが、この指標のみでは20bpsの利回り上昇を完全に説明することは出来ません。

確かに、値動きを説明するための材料を探し求めてしまう誘惑に駆られてはしまいますが、今回の場合、長きに亘って保有されてきた強気派のポジションの投げ売りが、価格の混乱を引き起こしたという意味で、ファンダメンタルズ要因よりも市場の需給面による影響が大きかったとみています。

結果として、今後1年間で米連邦公開市場委員会(FOMC)がさらに100bpsの利上げを行うことを米金利市場は織り込む格好となり、長期金利の水準は、その後の10年間、政策金利が5%を超える水準に留まるとの想定になっています。このような、持続的かつ高水準の政策金利の予想は、インフレ率が米連邦準備制度理事会(FRB)の2%目標を大きく上回る水準で恒常的に推移する場合にのみ論理的だと思いますが、そのようなインフレ見通しはインフレ・スワップには織り込まれていません。

あるいは、こうした高金利環境は、生産性の大幅な向上によってR*(アールスター; 自然利子率)が上昇することによって説明可能かもしれません。しかし、現在目の当たりにしている人工知能(AI)ブームによって、あらゆる業界のあらゆる企業が、恒久的に高い実質金利水準に耐えられる強固な状態になるのかという点は、現時点では全く確証が持てません。実際、米国経済には、実質金利が3%に留まった世界で生き残るのに苦労するであろう業界や債券発行企業が多数存在する可能性が高いとみています。

また、米国において過去、そのような高い実質金利水準は、1990年以降の35年間で長くとも1年程度しか続かない傾向にありました。そのような点を踏まえれば、足元の金利は極端な水準に達している可能性があると言えるでしょう。

したがって、当社では米国のイールドカーブのここ最近の動きが、中期的な観点で評価した場合、フェア・バリューからオーバーシュートした水準であると考えています。このため、前週にFOMCが利上げを決定し、FRBが伝統的な政策に回帰したことを受けて構築した、米金利に対する強気な見方を維持しています。

多くの債券運用者は2026年初め、中央銀行が緩和路線に入ることを広く予想していたことから、年初来から金利をロングすることで失敗したように見受けられます。聞くところによれば、パフォーマンス不振のために多数のヘッジファンドや運用会社で退職する運用者が、ここ1ヶ月間で多くいたようです。その結果、ロング・ポジションが清算されており、これが収束したかどうかを知ることは常に困難ながら、数週間前と比較すれば、市場の需給面はこの先の利回りにとってはるかに支援的であると推測されます。

米国内では、ディーゼル価格の上昇が引き続き政治的な注目を集めています。しかし、米政権がディーゼル輸出禁止を検討しているとの見方は、すぐに打ち消されたようです。そのような政策は一定の人気を集めるように思えるかもしれませんが、実際には、こうした措置によって国内のディーゼル価格を引き下げるのではなく、むしろ引き上げるリスクがあるようです。またそのような政策行動は海外からの報復を招く可能性があるとともに、タイムラグを伴うため、短期的には消費者への恩恵はほとんどないでしょう。

欧州でも、先週は債券利回りの動きが米国市場に追随する格好となりました。欧州大陸が精製されたディーゼルの50%を米国からの輸入に依存していることを踏まえれば、供給が途絶えれば成長とインフレの両方に対して追加的な経済ショックとなる可能性があります。それを抜きにしても、エネルギー安全保障における欧州の脆弱性は日増しに明らかになっています。

しかし、先週行った欧州の政策当局者との面談では、再生可能エネルギーへの移行推進によって、EUのガス消費量は2022年の水準から約20%減少しているとの指摘がありました。したがって、ピーク容量の60%というガス貯蔵レベルは一見低く見えますが、この数字の緊迫性は過去よりも薄れていると言えるでしょう。さらに、欧州はガスを調達する際に互いに競合して、他地域の国々を上回る入札を行って必要以上に価格を押し上げないことを学んだようです。

欧州も米国からの輸送でガス不足を補っていることは注意点ながら、グローバルな供給体制に追加的な混乱が発生しない限り、TTF先物の80近辺でガス価格が天井を打つとの確信は高まっているように思います。ガス価格が現在の水準付近で天井を打った場合、ユーロ圏のインフレ率は来年1月に4.0%でピークに達し、その後数ヶ月間で低下するとの見方に確信を強めています。ここでは、10-12月期及び来年1-3月期に欧州中央銀行(ECB)が2回の追加利上げを行うとの予想も伴いますが、来春以降、米欧の両市場で追加的な金融引き締めが必要になることはないと考えています。これも、米欧の国債利回りに対して前向きな見方をする背景となります。

一方、ユーロ圏のソブリン債スプレッドには圧力が掛かっており、とりわけフランス国債は、同国の財政状況に対する懸念が高まり、ソブリン格付けの引き下げの恐れから、大きく売られています。フランス国債の対独スプレッドは110bpsを超え、2012年以来の拡大した水準にありますが、多くのEU政策当局者が市場の動きに任せ、スプレッドの拡大を容認しているかのように見受けられることは注目に値します。

EUでは、財政状況の改善に向けたフランスの消極的な姿勢に対して苛立ちが広がっており、スプレッド拡大によって、フランス当局がより持続可能な道に乗せるための措置を講じることを余儀なくされることへの期待感がありました。しかし、財政再建は身の丈を超えた生活に慣れてきたフランスの有権者には不人気で、2027年の大統領選挙の前に大幅な改善を期待することは難しいかも知れません。

とは言いながらも、フランスのショート・ポジションは今や市場のコンセンサスなポジションとなっています。今後1ヶ月間で予算案成立によって、スプレッドが縮小する可能性は十分にあり、現時点では中立的なスタンスを選好し、より魅力的な水準でショート・ポジションを再構築することを検討する方針です。

他の地域に目を向けると、他のソブリン債スプレッドもフランスとともに拡大しており、投資適格社債に比べても魅力的な価格となっています。折しもドイツ自身の信用力が、経済が苦戦する中で弱体化する道を辿っており、相対的に見れば他の国々がより良好とも言え、スプレッドの大幅な拡大はファンダメンタルズ的には正当化されないようにも見受けられます。

英国でも債券利回りが上昇を続けました。これまでのところ、イングランド銀行(英中央銀行、BoE)はインフレに対して比較的穏やかな見方を選好してきましたが、来年1月の公共料金の急増や、その他のコストが消費者に転嫁されることで、英消費者物価指数(CPI)は来年1-3月期に5%に達する可能性があります。賃金の約50%がCPIに連動している(最低賃金や公共部門の賃金)ことを踏まえれば、来年4月初めにCPIに連動して賃金上昇が顕在化すれば、英国のインフレ率は2027年前半を通じて高止まりすると予想されます。

英国の経済見通しは軟調に見えますが、ベイリー総裁は今後6ヶ月で少なくとも2〜3回の利上げを余儀なくされる可能性があるとみています。ただしそれでも、先物市場で織り込まれている5回の利上げよりは少ない回数に留まる可能性があるでしょう。

このような点から、英国の短期金利でロング・ポジションを取ることには一定の根拠があるとみていますが、より長い年限部分については引き続き弱気な見方を維持しており、イールドカーブのスティープ化を予想したポジションを選好しています。この先の予算について現時点で耳にすることの全てが、より多くの支出を示唆しているように思えます。財政余地が150億英ポンドとの発表もなされる可能性が高いのですが、前提条件の信頼性が低く、膨らみ続ける社会保障支出への対応にも否定的であることから、英国債投資家はさほど肯定的に反応しないとみています。

日本市場は先週、祝日のために週の大半が休場となっていましたが、週末に掛けては米国の動きに追随し、債券利回りが上昇しました。そんな中、先週は米ドル全面高となり、ほぼ全ての通貨に対して米ドルが強含む中、米ドル指数は年初来高値近辺に戻りました。

交易条件の好転やAIの優位性、長期的な米経済成長のアウトパフォーマンスなど、2026年に入って見られている多くの要因が、ファンダメンタルズ分析の観点から、過去数ヶ月間での大幅な米ドル高につながってきたのだろうと感じています。ただしこの点において、米ドルの上昇が比較的控えめであったという事実は、米ドルや米国資産からの中期的な資産配分シフトを色濃く物語っているように思います。

そのような点を踏まえ、当面は米ドルに対して方向感を持った見方を示すことに慎重になっており、通貨リスクについては控えめとしています。北中南米においては、カナダドルに対してブラジル・レアルを選好してきました。一方、欧州では英ポンドとスイス・フランのショートに対して、ハンガリー・フォリントやアイスランド・クローナに対しての前向きな見方を維持しています。

他の地域では、エマージング市場(EM)において、米金利や米ドルの上昇に対して幾らか緊張感が見られ、投資家センチメントに重くのしかかっています。ウクライナは和平への期待が薄れ続ける中でアンダーパフォームしていますが、ブラジルでは、来月の大統領選挙に向けて世論調査の支持率が接戦となっていることや、国内インフレ率の低下が相まって、現地債券に恩恵をもたらしています。

当社では、引き続きEMの多くの国での高いキャリーを保有することに価値を見出しており、長期的に、EM債券と株式の戦略への資産配分増加が続くと見込んでいます。社債市場では、スプレッドが引き続きタイトな水準に留まっており、CDSやCDS指数の半年に一度の定期的なロールによる影響を除けば、スプレッドは概ね横ばいで推移し、コメントすべきことはほとんどありません。

今後の見通し

ここ最近の債券利回りのパフォーマンスは、この夏の初めに良いシーズンとなることへの期待が高まっていたにも拘わらず、現在プレミアリーグの最下位にいるトッテナム・ホットスパーと同じように感じられます。

しかし、幸いなことに債券市場ではサッカーとは異なり、価格の平均回帰に向けた中期的なトレンドがより強く出現する傾向が見られます。債券利回りが大きく低下すると、基本的な計算に基づけば、将来のリターンが抑えられることになります。

同様に、利回りの上昇は短期的には痛みを伴うかもしれませんが、そのような動きにより、将来のリターンがより高い水準で確保されることになります。したがって、グローバル債券の利回りが20年来の高水準にある中、デュレーションを保有することに価値があると考えています。

2026年の金利上昇は多くのポジションに痛みをもたらしましたが、そうしたポジションは閉じられ、以前は強気だった投資家がポジションを反転させて、利回り上昇に向けた動きに飛び付いていることで、状況は今や変わりつつあります。過去6ヶ月間は苦しい時期でした。しかし思い起こせば、先週ワシントンの空港でトランプ氏と習氏が会ったとき、爆撃機の轟音という苦痛の最中に、ひるむ者もいれば、ひるまない者もいました。そのどちら側に我々がいたいのかは、明白です...

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