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先週は、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げにより、米国債利回りの動きが安定しました。この動きは、政策の信頼性が疑問視されていた時期を経て、伝統的な政策への回帰というストーリーを裏付けるものであったように見受けられます。
FRBの動きは米連邦公開市場委員会(FOMC)会合前から広く織り込まれていましたが、ウォーシュFRB議長が会合後の記者会見で安心感を与えるパフォーマンスを見せたことは、前回の会見での質問に戸惑う様子を受けた市場センチメントの改善に寄与する上で、重要でした。
市場は年末までにさらなる利上げを織り込んでいますが、10月の会合での連続利上げについては、次回の消費者物価指数(CPI)がインフレに関してネガティブ・サプライズをもたらした場合にのみ、必要になると考えており、1回おきの会合での、より緩やかな引き締めペースの方が可能性が高いとみています。さらに、来年のこの時期までにさらに3回の利上げが織り込まれていることを踏まえると、今後12カ月間に必要とされる金融引き締めは、(市場織り込みよりも)多くなるよりも、少なくなる可能性の方が高くなっている印象を持っています。
米国の経済活動は当面、人工知能(AI)主導の堅調な需要に支え続けられると予想され、エネルギー価格が高止まりしていることから、インフレ率の低下は緩やかなペースになると考えています。しかし、物価の方向性が低下傾向を辿る限り、FOMCは政策金利を過度に抑制的な領域まで引き上げることには慎重になると考えています。
明らかにインフレ、ひいては政策はエネルギー価格の軌道、そしてその延長線上にある中東で進行中の紛争の進展に依存しているとの認識があります。しかし、中東に関しては、現時点で実行可能な政策面での選択肢がない中、米国がこの地域から離脱しようとしているとの認識が高まってきています。この点で注目すべきは、サウジアラビアに対するフーシ派の攻撃に対する米国の対応が、サウジアラビア政権に対する直接支援よりも、イエメンの反政府勢力との外交対話を優先しているように見えることです。これは武器在庫の枯渇や戦争コストの増大によっても説明できますが、それでも、米国が事態のエスカレーションに関心を示していないことは注目に値します。
原油価格は先週から軟化し始めており、ここ最近のトレンドの転換であると判断するには時期尚早かもしれませんが、米国のエネルギー価格がさらに大幅に上昇すれば、政策転換の可能性が高まると考えています。この点で言えば、ディーゼル価格が1ガロン当たり6米ドルを超えたことが全米でどの程度の注目を集めるのか、国内での価格を抑制するため、ディーゼルの輸出禁止に関する議論がどの程度再浮上するのかということに注目しています。
このような措置は米国の物価圧力の抑制に役立つ一方で、欧州では悪化させることになりますが、トランプ氏の「アメリカ・ファースト」のアジェンダは、後者にはそれほど配慮しないでしょう。米国のエネルギー価格を引き下げるための措置は、先週提案された5,000米ドルを配るという人気取り策よりも、トランプ氏に多くの国民の支持をもたらす可能性があるでしょう。しかし、いかなる行動であっても、今年11月の中間選挙における共和党への支持を促すにはおそらく足らなすぎ、また遅すぎることになるでしょう。
輸出規制には前例がありますが、米国内で全面的な支持を得られる可能性は低く、米国内のサプライチェーンの地域的な複雑さのため、実施が困難となる可能性があります。この点から、原油価格がさらに大幅上昇した場合にのみ、このような手段が取られると予想しますが、そうはならないことを期待しています。
一方、米国のインフレと金融政策に関しては、原油価格が今後数カ月間横ばいで推移した状況では(現時点ではこれが妥当なベースケースと思われます)、価格変動が横ばいになることで今後6カ月以内にベース効果が現れ、二次的な物価圧力が高まる証拠がなければ、CPIは3%に低下し、その後2%台後半に入っていくと予想しています。その水準でインフレは横ばいとなる可能性がありますが、この時点でコア個人消費支出(PCE)が2.5%を下回っていれば、その後数カ月間の経済指標が異なる道筋を示さない限り、2027年1-3月期以降に政策金利をさらに大きく引き上げる必要性はそれほどありません。
利回りがピークに達する時期は、今年の債券ベア・マーケットを特徴づけてきたイールドカーブのフラット化トレンドのピークと重なる可能性もあります。そのような見方から、米5年国債利回りが5%に近づいていることには一定の投資妙味があると見ていますが、より長期の年限については依然として慎重な見方を維持しています。世界的に政府や企業からの多額の債券発行が引き続きターム・プレミアムに圧力となっているように見え、この観点から中期よりも長い年限への投資に関しては消極的です。
エネルギー価格の頭打ちは、これが起きれば欧州の債券利回りにとっても有益となる可能性があります。特にここ数週間、ドイツ国債利回りとTTF天然ガス先物価格との相関が高まっていたことを踏まえれば、尚更です。この点で言えば、ガス先物価格は先週やや下落しましたが、ユーロ短期金利は過去1カ月間で50bps上昇していることから、この先の一定の安定を期待しています。
欧州での金利デュレーションのロング取引は、ここ数カ月間、市場参加者の間でのコンセンサス・ポジションとなっていたため、この数週間はパフォーマンス面での痛みが増し、広範囲にポジションを閉じる動きが見られています。結果として、市場の需給面も以前よりユーロ圏金利にとって支援的になっており、一部の投資家調査では、投資家のコンセンサス・ポジションが弱気バイアスに転じたことを示唆していることから、今や大多数にとって痛みを伴うのは、利回りの上昇ではなく、低下であると言えるかも知れません。
英国では、懸念されたよりもやや穏やかな内容となったインフレ指標に助けられ、イングランド銀行(英中央銀行、BoE)が先週、政策金利を据え置きました。英国のCPIは3.1%に上昇しましたが、コアサービス価格のインフレは抑制されたままで、二次的な影響がほとんどないことを示しており、英国のインフレ指標がここ数カ月間、我々を含む多くの人々が恐れていたよりも低い水準に留まっている傾向に注目が集まっています。
依然として、英インフレ率は2027年1-3月期に4%を超えると予想していますが、同時期に英国内のエネルギーの上限価格が15%以上上昇したとしても、インフレは5%未満でピークを付ける可能性がありそうです。これは依然としてBoEが政策を引き締める必要性を示唆していますが、すでに弱い英国経済に利上げが与えそうな影響を考えると、英国で政策金利が5%を超えるような利上げサイクルは想像しにくいように思います。英国金利に対して方向感を持ったポジションを取ることは引き続きリスクが高いと考えていますが、他の地域と同様に、現在市場に織り込まれている政策金利見通しを踏まえれば、イールドカーブの長期ゾーンよりも短期ゾーンの方に相対的な投資妙味があるとみています。英長期国債に関しては、政府が財源がないにも拘わらず支出を増やすことに依然としてコミットしていることを懸念しており、これが年末に掛けてバーナム政権と金融市場との衝突を招く可能性を懸念しています。
日本では、広く予想されていた通り、日銀は政策金利を1.25%に引き上げました。しかし、政策委員会内で高市首相が任命した「ハト派」とされる2名が反対票を投じたことは、今後の政策正常化に向けた日銀の姿勢に対する懸念を招きました。これは、最も「タカ派」な2名の委員がまもなく任期満了を迎える中、首相が彼らの後任として、よりハト派的な人物を政策委員に任命する可能性があるためです。こうした動きを受けて円安が進みましたが、植田総裁が政策正常化のペースが加速していることを示唆する発言を行った点は、市場に一定の安心感を与えました。日本の投資家との面談では、国内資産への需要の高まりが引き続き浮き彫りとなっています。しかし、日本国債の保有を増やす計画が広範囲に亘っているにも拘わらず、これまでのところ市場に流入している資金規模はかなり控えめであることは興味深い点です。これは日本国債の需給面での見通しが改善していることを示唆しており、日本の長期国債に対する前向きな姿勢を維持しています。
外国為替市場では、FRBの利上げを受けて米ドルが強含んで推移していますが、このトレンドに飛びつくことには慎重です。依然として、中期的には米国からの資産配分シフトが米ドルの魅力とその上昇幅を抑制するとみています。円に関しては、日銀の行動は米国や欧州通貨との既存の金利差を維持するに留まるとみており、この差が縮小し始めるまでは、円の大幅な上昇には懐疑的です。その他、クレジット債市場では極めて静かな一週間となり、市場を動かし続けているマクロ面でのイベントや変動性の高まりに市場参加者の注目が集中しました。
その他では、ここ数週間でEUとカナダが急接近していることは注目に値し、先週のフォン・デア・ライエンEU委員長によるEU準加盟の申し出の発表で、これが頂点に達しました。技術的な観点から批准される可能性は低いものの、両者の温かさと友好関係を目にすることには勇気づけられます。
欧州はカナダからのエネルギー輸出を切望しています(ケベック州がこれを助けてくれればの話ですが)。テクノロジーから宇宙産業、防衛産業に至るまで、多くの分野でEUと「欧州外で最も欧州的な国」との間で、より連携を深め、協力を図る余地は十分にあるように思われます。
カナダは米国の政策によって今後数年間、困難な時期が続くとみられますが、トランプ氏のアジェンダからもたらされる課題が、大きな国家連帯と達成意欲を促している様子を見ることも興味深いことでした。これは過去10年から20年に亘り、世の中に欠けていた何かであったように思われます。この点でカナダは、短期的にはリスクがあるとしても、中期的にはマクロストーリーが改善することになるかも知れません。ひょっとすると、カナダの友人たちは、英国がEUと再び友好関係を築こうとする試みを助けることさえ出来るかも知れません。
一方、これらの動きはトランプ氏の目を逃れてはいないようで、米政権からの2年間に亘る敵対行為を経て、隣国が米国に背を向けているかもしれないことに半ば憤慨しているようです。これもひょっとすると、カナダを取り戻したいという願望が、カナダ政権に対するトランプ氏の求愛につながる可能性もありますが、カナダ側でそれを固唾を呑んで待っている人は多くはないでしょう。とは言いながらも、マーク・カーニー首相の株がカナダ国内で上昇中であることは間違いないようです。カナダは再び偉大にされつつあるようです。
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