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先週の金融市場では、ガス先物価格が供給不足への懸念から上昇を続けるなか、欧州の利回りが上昇しました。欧州のガス在庫水準は季節的に見て比較的低い状態にあります。これは、買い手が中東の和平による価格下落を期待して、購入を遅らせてきたためです。
しかし、紛争が長引く中、そのような期待は打ち砕かれてしまっているようです。現時点では、多くの原油タンカーがホルムズ海峡を通過し続けているものの、液化天然ガス(LNG)輸送は依然として極めて困難な状況が続いています。これはLNG船に何らかの発射物が命中した場合の爆発リスクが伴うためです。
その結果、TTFガス先物価格は70を超えており、これは紛争前の水準から約140%の上昇です。結果として欧州では、エネルギーコストが引き続きインフレ懸念を高める要因となっています。
欧州中央銀行(ECB)は9月に利上げを実施し、その後年末にも追加利上げを実施すると予想されています。その後の政策金利の経路はより不透明で、2027年に掛けてエネルギー価格がどれだけインフレを押し上げ続けるかに大きく左右されるでしょう。
今後数週間でTTFガス先物価格が100に向けて上昇すれば、これは来年春に掛けてのエネルギーコストの更なる上昇として表れ、このシナリオではECBが利上げ路線を継続する可能性が高いでしょう。
しかし、ガス価格が現在の水準近辺で頭打ちとなれば、ユーロ圏のインフレのピークは4%を下回り、エネルギー価格のベース効果によって、来年のイースターまでには総合インフレが低下することで、ECBは2027年以降は政策を据え置く可能性があるでしょう。
この点で、この先はECBの「悪化」シナリオと「深刻化」シナリオのどちらに陥るかに大きく依存することになり、引き続き中東情勢が大きく影響することになるでしょう。
しかし、ECBが物価のオーバーシュートを可能な限り短期間に抑えようとする姿勢を取るだろうという点については確信を持っています。
実際、ECBがこれに成功すれば、ECBや他の欧州の中央銀行が来年後半には利下げに転じたとしてもそれほど不思議ではないでしょう。
このような点を踏まえ、ガス価格に関連したリスクはあるとは言え、現時点では欧州の短期債利回りに投資妙味があるとの見方を維持しています。
先週は、中東の緊張の高まりを背景に米国債利回りも上昇しました。米国からすれば、インフレ懸念の主因はガスではなく原油であり、この文脈において、米国の天然ガス価格については過去1年間でほとんど上昇していないことは注目に値します。
ジャクソンホールでのケビン・ウォーシュ米連邦準備制度理事会(FRB)議長のタカ派的な発言により、米連邦公開市場委員会(FOMC)による9月の利上げ期待は強まり、(執筆時点において)後ほど発表される米雇用統計の内容が市場の落胆を誘う内容でない限り、クリス・ウォーラー氏からのややハト派的なコメントはあったものの、今月後半に利上げが実施されると予想しています。
イールドカーブは過去1カ月でフラット化を続けており、その背景には、米政権が長期借入コストの更なる上昇を防ぐためには可能な限り何でもする意向である、との認識があります。
そのような文脈において、米国において(およびグローバルに)債券利回りが数十年ぶりの高水準にある時に、短期金利の上昇がイールドカーブ上の長期ゾーンに対する市場の信頼を支える可能性があります。
足元では米国債や米国のイールドカーブについて明確な方向性を持った見方は有していませんが、物価連動債やそのデリバティブについては引き続き投資妙味があるとみています。米国では、インフレが目標に回帰するまでに、市場が織り込んでいるよりもはるかに長い時間が掛かるとみています。
日本における長期債利回りの上昇も、政策当局者に行動を促す要因となっているようです。植田日銀総裁の発言により、9月の日銀会合での25bpsの利上げは確実視されてます。より大幅な利上げの可能性を示唆する声もあるようですが、日本では物事が緩やかなペースで、かつコンセンサスに基づいて進展していく傾向があることを踏まえれば、大幅利上げの可能性は低いと思われます。
しかし、今後数カ月での、より速いペースでの金融政策正常化を示唆するコミュニケーションはあると予想しています。スコット・ベッセント米財務長官が高市氏に対しても財政抑制を強化し、長期債利回りの上昇を防ぐよう働きかけている中、10年債利回りが3%を突破した今、日本の政策当局者が日本国債売りをより深刻に受け止めている印象もあります。
過去1週間では、GPIFが資産配分において日本国債の保有を大幅に増やす見直しを行うとの観測も強まりました。一方、政治面では、高市氏が目先の内閣改造で、片山財務大臣をより財政保守的な人物に交代させる可能性も取り沙汰されました。
こうした動きは、先週末に掛けての日本長期債利回りの低下を促し、外国為替市場でも円が米ドルに対して一時155円台まで上昇するきっかけとなりました。当社では、4%を超える日本30年国債利回りには構造的な投資妙味があるとの見方を維持していますが、円については、他通貨に対して引き続き大幅に過小評価されているにもかかわらず、短期的には上昇が抑制される可能性があるとみています。
最終的に、高市氏がどれほどの円高を望んでいるかどうかについて懐疑的にみているためです。多くの点で、今後の政策変更は、円と日本債券のさらなる弱体化を回避することに、より焦点を当てたものになると考えており、これは与党自民党内での高市氏自身の立場をさらに弱める可能性があるとみています。
英国債の利回りも、この1週間で欧州の動きにつられる格好でアンダーパフォームしました。英国は自前のガス貯蔵施設を持たず、電力発電コストの価格設定に関して自己破壊的なSRMC(短期限界費用: Short-Run Marginal Cost)を引き続き遵守しているため、他の欧州諸国よりも脆弱な状況にあります。SRMCにより、すべての電力価格が需要を満たすために必要な最も高価な燃料源に連動することになります。
この見当違いのアプローチは、地政学的危機の際にガス価格が急騰すると、インフレが必ずオーバーシュートすることにつながり、他の多くの規制価格料金がインフレの動きに連動しているため、二次的な影響が迅速に価格に反映される可能性もあります。
一方、インフレと借入コストの両方の上昇が財政余地に関する英予算責任局(OBR)の計算の足かせとなっており、バーナム政権は増税を進めたとしても、使うお金が残されていないことに気づき始めているようです。
英長期国債利回りが6%に近づく中、根強い英国債強気派の多くはポジション解消をためらっているようですが、英国が幸運に恵まれるか、もしくは速やかに是正措置を取らない限り、消費者物価指数(CPI)は来年1-3月期にも5%に向かって上昇する可能性があり、結果としてイングランド銀行(英中央銀行、BoE)は利上げを進めざるを得なくなるでしょう。
英国内における石油・ガス生産を承認することは、英国において明確な経済的合理性があると考えます(遠方からコモディティを輸送する必要がなくなれば、環境にとってもおそらく正味でメリットとなるでしょう)。しかし、短期的には、SRMC式の廃止がインフレ面で最大の効果をもたらす可能性があるでしょう。
一方、英国政府が肥大化する社会保障支出に何らかの対策を講じなければ、国が自己破産に陥ることになると思われます。実際、このような対策が左派寄りの政権によって実行された場合の方が、実際にははるかに信頼性が高いとの意見もあります。
現時点では英国債においてポジションを有していませんが、英ポンドについてはアンダーウェイトを維持しています。財政面での問題により、今後数カ月で英ポンドが圧力を受ける可能性がある一方、英ポンドの上昇を促すような材料はほとんど見当たらないためです。
その他の市場に目を向けると、社債市場では再び静かな一週間となりました。投資適格債では、インデックスのスプレッドは過去数カ月間4bps程度のレンジ内で取引されており、近い将来ボラティリティを高める明確なきっかけは見当たりません。
同様のことはハイ・イールド債にも当てはまり、近年では信用力の低い発行体がプライベートクレジットやバンクローン市場に見られることから、ハイ・イールド市場の信用の質は構造的に改善しており、同資産クラスはかつて我々が投資適格と考えていたものに似てきているように思われます。
このことは、多くのBB格、さらにはBの発行体のスプレッド水準にもますます反映されているように見受けられます。また、大手運用会社が継続的にボラティリティを売るような仕組みの大型商品を組成していることも明らかなようです。
これによりボラティリティのプレミアムが低下する可能性がありますが、何かのきっかけによりボラティリティが急上昇した場合、ポジションのショートカバーにより、その後のオーバーシュートは多くの人が想像するよりもはるかに大きくなる可能性があることを意味しています。
実際、世界金融危機以前の類似点を振り返ることは興味深いでしょう。例えば、信用力がすでに悪化していた時期に、ドイツ国債に対して25bpsのスプレッドでギリシャ国債を購入していたのは誰だったのか、あるいCDO(債務担保証券)を束ねた取引が良い投資だと考えて資金を注ぎ込んだのは誰だったのかなど、今となっては奇妙なことのように思えます。
しかし、信用サイクルが延びるほど、レバレッジが増大し、リターンへの貪欲さが増す中、過大評価された銘柄が散見されるようになります。このような観点から、プライベート市場で蓄積し続けている問題を目の当たりにすることは、レバレッジが行き過ぎた際の人生の痛みを思い起こさせるものです。
この点で言えば、2010年代は量的緩和(QE)と安価なレバレッジの10年間であり、債務者を優遇し、現金保有者にペナルティを課した時代であったことを忘れてはなりません。我々は今、これらの時代の逆の状況に生きており、利回りが最高値に達し、結果として資金調達コストが上昇していることは、バランスシートと財務健全性に対して日増しに高まる脅威となるでしょう。
今後の見通しとして、米雇用統計に注目が集まった後は、債券の投資環境を見極めるために、次の米CPI発表に投資家の関心が集まるでしょう。現時点では、借入コストの上昇が経済成長に悪影響を及ぼしている兆候はほとんど見られていませんが、この先は、特に金利に敏感なセクターへの波及に関して、注意を払う必要があるかも知れません。
その点で言えば、世界中で住宅価格が下落しており、主要都市の多数で2桁ペースの下落が見られているようです。住宅ローンの負担感(またはローンが不可能なこと)により住宅市場の活動は引き続き圧迫されており、世界金融危機を受けたQEの後の数年間で、価格が信じられないほど高騰した地域では、価格がかなり下落する余地があるかもしれません。
この点で、明確なデータではないものの、ロンドンにおいて不動産を購入する同僚の印象としては、不動産価格は2013年頃の水準に戻っているようです。このような傾向が続けば、不快感が増大しているのは単にガス不足にとどまらないかも知れません!
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