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先週の市場の動きは比較的穏やかなものとなりました。過去数日間、欧州では、真夏の熱波と日食が最も注目すべき話題であったように思われます。7月の米消費者物価指数(CPI)は予想通りの数値で、総合指数が前年同月比3.4%、コア指数が同2.5%となりました。
前週の軟調な米雇用統計もあり、9月の米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げの市場織り込み確率はわずか35%にまで低下しました。ほんの数週間前にはほぼ完全に利上げが織り込まれていたにも拘わらず、です。しかし、この9月の政策会合までに8月分のデータをさらに確認することになり、エネルギー価格の上昇がそれらの数字に現れることを踏まえれば、インフレ率は再び上昇に転じる可能性が高いとみています。
したがって、米連邦公開市場委員会(FOMC)が9月に利上げを行わないと結論付けるのは時期尚早であると考えており、今後数週間で経済指標が当社の見方と整合的であれば、委員の過半数が25bpsの利上げに賛成票を投じるとの予想を維持しています。
フォワード・ガイダンスがない中、予想を立てる際ににおいて経済指標の重要性が増すことになりますが、この点で言えば、今月の残りの経済指標の発表予定は比較的静かなものとなっています。市場は今月末の年次ジャクソンホール会合でウォーシュFRB議長が何を語るかに注目したいところでしょう。
しかし、議長のタスクフォースが調査結果を出すまでにはまだ数週間から数カ月を要することから、ウォーシュ氏が共有出来る内容は極めて限られているように思われます。この点で、「フォワード・ガイダンスなし」が政策枠組みの基本であるならば、アラン・グリーンスパン氏や、それ以前の議長たちの下で見られたように、FRB議長の発言がかなり少ない状態に市場は慣れる必要があるでしょう。
しかし、このアプローチが機能するのは、ウォーシュ氏が他のFOMCメンバーに対しても、自身の考えを表明することをもっと控えるようにさせられる場合に限られるでしょう。さもなければ、ウォーシュ氏自身の沈黙によって他のメンバーに主導権を奪われるというリスクを冒すことになり、この点においてウォーシュ氏が上手く立ち回っているのかどうかを把握することは、興味深いところです。
そんな中、米財務省による円相場への介入を受けて、FRBをめぐる議論がさらに活発化しています。この介入では、あまり耳慣れないFIMA(外国・国際通貨当局)のレポ・ファシリティが利用されましたが、これはFRBのバランスシートを使用しており、米国債の超長期利回り上昇リスクを抑制することが、為替介入の根底にある意図の一つであるならば、米財務省によるFRBの政策への干渉ではないかとの指摘もあります。
アンダーソン金融経済研究所のファビオ・ナタルッチ氏が鋭く指摘しているように、このスワップラインのカウンターパーティごとの上限を600億米ドル超に引き上げるというスコット・ベッセント米財務長官の提案は、FRBのウォーシュ氏、ウィリアムズ氏、ジェファーソン氏の3名のみの承認しか必要でなく、このFIMAレポ・ファシリティの目的外の使用は、FRBの独立性や財政従属のリスクに関する懸念を再燃させる可能性があります。
米国債利回りと投資適格社債のスプレッドは、先週、狭いレンジ内で推移しました。過去数カ月間、AIハイパースケーラーのスプレッドが徐々に拡大するなど、社債の新規発行増加に関する懸念が聞かれていますが、実際には米国投資適格社債指数のスプレッドは4月末以降、75~80bpsの狭いレンジでの推移を続けており、これは昨年末の水準とほぼ同等です。
社債への需要は、過去数カ月間の絶対的な利回り水準の上昇によって、利回り目標を設定している投資家からの需要に支えられてきました。景気後退リスクが低く、金融環境が緩和的であることから、豊富な流動性によって、ここ数カ月間では新規の債券(および株式)発行の需要が生み出されています。ただし、債券発行のパイプラインが増加の一途を辿る中、懸念される材料があるとすれば、政策が引き締められ、金融システムから流動性が低下した場合に、需要が減退するかどうかという点でしょう。
経済学の理論に基づけば、国債や社債の発行が絶え間なく増えていけば、最終的には一部の潜在的な借り手が資金調達から締め出される、「クラウディング・アウト(押し出し効果)」につながります。この点に関連して、デフォルト・サイクルは、最終的には、借り手が借り換えをする際に実現可能な条件で借り換えることが出来なくなった時点で発生する、ということを思い起こす価値があるでしょう。
したがって、これは今後起こり得る問題を想起させるものですが、現時点では投資家をより慎重にさせるような懸念とはなっていないようです。実際に過去数週間では、スプレッドのボラティリティが低い中で、国債に対して75bpsの上乗せ利回りを獲得し続けることに一定の魅力があることから、クレジット弱気派(ベア)がヘッジを解消し、市場に押し戻される形となっていることが、ポジションに関する調査ではクレジット・エクスポージャーの増加として現れています。
グローバル市場のその他の地域では、8月半ばに差し掛かって欧州が予想通り静かであり、特筆すべきことはほとんどありません。しかし、中東で膠着状態が続いていることが、欧州にとってリスクが高まりつつあるという状況になっており、TTFガス先物価格が再び上昇していることは、今年後半のユーロ圏のインフレにネガティブな影響を及ぼすでしょう。
我々はうだるような夏の暑さに耐え(時には楽しみ)ながら過ごしてきましたが、現実には季節の変わり目は今やそれほど遠くなく、冬に向けて枯渇した天然ガス備蓄を補充する必要があります。紛争終結と価格下落への期待は後退しており、より広範に言えば、クラック・スプレッド(原油と精製製品の価格差)が現在65米ドルとなっていることを改めて強調する必要があります。これは、ディーゼルを含む多くの石油精製製品が今年4-6月期に記録した高値から、それほど遠くない水準で取引されていることを意味します。
一般的に言えば、エネルギー市場や、より広範な中東における状況は、金融市場で織り込まれているよりも高水準のインフレという結果につながるとみており、この点で当社は、米国のインフレ連動債とスワップに対する選好を維持しています。欧州では、より弱い成長見通しを背景に、金利に対してより前向きな見方を持っています。
当社では引き続き、ノルウェーの金利(過去の為替の強さがインフレを抑制していることを好感)、英国の短期金利(ハト派的なイングランド銀行(英中央銀行、BoE))、そしてハンガリーやアイスランドの資産(潜在的なEUコンバージェンス(収束)というテーマ)を選好しています。アイスランドについて言えば、8月29日にEU加盟交渉の再開に関する国民投票が行われます。これが可決されれば、EU及び他のEU加盟国は、同国をEUに迎え入れることに非常に前向きで、熱意を持っていると考えています。
日本では、円が先日の為替介入による上昇分の大部分を失い、160円をわずかに下回る水準となっていますが、今後数日間で円の弱気(ベア)派が介入の限界を試すのか、それとも日米の政策当局者が先制的に市場に戻るのか、ということを興味深く見守っています。日本国内では、今後のさらなる圧力を食い止めるために、日銀が9月の会合で利上げを実施し、金融政策正常化の道筋を加速させることを認める必要性がますます明らかになってきているようです。短期的には、次回の日銀会合が開催されるまで、介入と介入の脅威が値動きを抑制するのに十分であることを期待しているでしょう。
現在は夏場の凪の時期ですが、今後数カ月でより明確なトレンドが出現し、それを捉えることが出来ると期待しています。それ以外では、リスクテイクに関して規律を保ち、やや忍耐強さが求められる時期であると考えています。
この先を展望すると、来る週もまた静かな一週間となっても大きな驚きではないでしょう。決算シーズンは終了し、中央銀行会合の間の時期であるとともに、多くの人々がスクリーンから離れており、経済指標の発表予定も非常に少ない時期に突入しています。とは言いながらも、市場が油断している時にこそサプライズが起こり得るのであり、この点で、最も市場に大きなインパクトを与えるのは常に「未知の未知」であることを我々は認識しています。
未知と言えば、先日の、トランプ米大統領をエアフォース・ワンから別の飛行機に、ケータリング用トラックを使ってこっそりと移動させるという計画は興味深い話でした。おそらくこれは、我々が現在生きている時代がいかに危険であるかを改めて思い起こさせるものであると言えるでしょう。もっとも、この特定のエピソードには、ジェームズ・ボンドの映画というよりは、サタデー・ナイト・ライブのコントを彷彿とさせるような、どこかコメディ的な要素もあるかもしれません。
もっとも、エアフォース・ワンの他の関係者が暗闇の中に置かれ、何も知らされていなかったことで、その後ある種の憤りが生じていたとすれば、同じことがECB内の廊下でも起こっているようです。直近の米国による円相場への介入が、事前の協議もないままに、ユーロの売りであったためです。
先週(欧州各地で見られた)皆既日食によって我々の多くが暗闇に置かれたことからも、これは時代の兆候なのかもしれません!その点で、我々に知らされていない現在進行中の出来事は何か、そして事後になってようやく明らかになる次の大きな展開は何なのかということに、思いを巡らさざるを得ません。何とか確実にそれを見つけ出すため、最善を尽くします……
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