フランス国債の下落は行き過ぎか?

Oct 26, 2026

債券市場はフランスに変化を求めている

コメント要約
  • フランス国債利回り:フランスにおける暴動の激化を受けて、フランス10年国債利回りは2011年以来の水準である、5%を超え、ドイツ国債とのスプレッドは175bpsを上回りました。
  • 債券市場からのシグナル:債券市場はフランスの政治家に対して、方針を転換し、拡大する財政赤字や公的債務の抑制に取り組むよう求めていると言えるでしょう。
  • ユーロ圏ソブリン・クレジット:欧州通貨同盟の安定性が疑問視される局面を目の当たりにしているという見方については、当社は否定的です。指数レベルのスプレッドが数年ぶりのワイドな水準に達しているユーロ圏のソブリン・クレジットには、投資妙味があるとみています。
  • 米国市場:当月予定されている会合で米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ可能性が市場でほぼ織り込まれなくなり、株式市場と社債市場に下落圧力が掛かる中、質への逃避から米国債利回りが低下しました。
  • 米国金利見通し:ハイテク株の動揺は、2027年に向けて経済の勢いが衰え始める可能性を示唆しており、米連邦公開市場委員会(FOMC)が市場で織り込まれているよりも少ない利上げ実施に留まるという我々の見方につながっています。しかしながら、エネルギー価格のインフレがここからさらに加速した場合、それがより長期的なインフレのオーバーシュートのリスクとなり得ることも認識しています。

先週の金融市場では、当月予定されている会合で米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ可能性が市場でほぼ織り込まれなくなり、株式市場と社債市場に下落圧力が掛かる中、質への逃避から米国債利回りが低下しました。

一方、大西洋の反対側では、フランスにおける暴動の激化を受け、フランス国債市場の信用懸念が強まる中、欧州市場に注目が集まりました。フランス10年国債利回りは5%を超え、ドイツ国債とのスプレッドは175bpsを上回りました。これは2011年以来の水準で、当時はユーロ圏の崩壊が極めて現実味を帯びて懸念されていた時期です。

端的に言えば、債券市場はフランスの政治家に対して、方針を転換し、拡大する財政赤字や公的債務の抑制に取り組むよう求めていると言えるでしょう。しかしながら、来年の重要な大統領選挙を控えた時期に、政治家がフランス国民の間で政治的に不人気な改革を受け入れることは困難でしょう。

定年年齢の引き上げや持続不能な公的支出に対処するといった計画は、常に幅広い抗議と非難に直面します。国民の意識が変わり始めるまで、政治家がどのように明確なリーダーシップを示せるのか不透明です。

この点で言えば、改革への道のりにおいては、厳しい現実を認識する必要があるかも知れません。従って、EUの政策担当者は、こうしたことが完全に理解されるまで、フランスを支援することを急がないでしょう。とは言いながらも、圧力が高まるにつれ、フランスの有権者が政治的中道の安定性へと立ち返る傾向を強めるかどうかが注目されます。

この点に関して言えば、先週末の破壊行為の責任の大部分を担う極左勢力の行動が、結果的にメランション氏への支持を弱める可能性があります。これにより、来年5月の決選投票で、中道候補者がマリーヌ・ルペン氏との決選投票に進む可能性が高まるかもしれません。

この観点からすれば、ここ最近のフランス国債のスプレッドの拡大は、ルペン氏及び国民連合(RN)が有権者の支持を得る可能性の織り込みと密接に連動してきたと考えられます。中道派候補者への支持がメランション氏を上回って拡大する兆候が見られれば、スプレッドの安定化に寄与する要因となる可能性があります。

極左勢力が決選投票から除外されれば、エドゥアール・フィリップ氏やガブリエル・アタル氏、ラファエル・グリュックスマン氏といった候補者にも大統領選で勝利を収める道筋が残ります。この点について皮肉な見方をすれば、債券市場によってフランスの政治状況に変化がもたらされることを、欧州の既成勢力(エスタブリッシュメント)はそれほど悪いことではないと思っているかもしれません。

市場が織り込むルペン氏勝利の確率が今後数週間でピークとなれば、フランス国債のスプレッドの安定化に寄与する可能性があります。従って、2027年度予算が承認される可能性が高まり、季節的に天候が厳しくなって抗議活動も収束に向かえば、短期的にはストレスがさらに高まる可能性はないでしょう。

中期的に見れば、フランスは信用力の継続的な悪化を防ぐために改革を行う必要がありますが、バリュエーションの観点では、すでに多くの悪材料が価格に織り込まれているとみています。

加えて、欧州通貨同盟の安定性が疑問視される局面を目の当たりにしているという見方については、当社は否定的です。このような点を踏まえれば、指数レベルのスプレッドが数年ぶりのワイドな水準に達しているユーロ圏のソブリン・クレジットには、投資妙味があるとみています。

欧州の他の都市でも模倣的な抗議活動が見られましたが、フランスの問題はフランス固有のものであるとみています(唯一の例外はベルギーかも知れませんが)。イタリアでは、ミラノは都市として好況を呈しており、もっと全般的なことを言えば、メローニ政権は引き続き責任ある、債券市場に配慮した道を歩んでいます。

スペインやポルトガル、ギリシャについても、いずれも力強く成長しており、信用状況が改善している事例です。アフォーダビリティや若者の絶望感といった課題は大陸全体に及んでいますが、現時点では、各国が単独でいる方が良いとの主張はほとんど聞かれていません。

実際、EUへの加盟を目指す国々の列は続いています。さらに、ブレクジット後の英国の10年間の苦境は、他の国々が離脱の主張をする場合の明確な抑止力として機能してきました。

欧州通貨同盟を擁護するための策として、政策当局はシステミックな脅威に対処するための手段を多く持っています。今後数日間では、ユーロ圏の結束への支持を表明する声が聞かれる可能性が非常に高いでしょう。さらに、政策当局の次の焦点は、流動性が枯渇し始めた場合の欧州の銀行に関するものとなる見込みです。その結果、必要に応じてさらなる条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)が実施される可能性があります。

また、欧州中央銀行(ECB)は計画しているバランスシート縮小を終了すると予想しています。政策金利に関しては、ECBはインフレに対する警戒を続ける必要がありますが、高い債券利回りがすでに金融環境を引き締めているとの判断に至る可能性もあり、当初想定されていたよりも利上げ回数を少なくする必要性を示唆するかもしれません。

しかしながら、近い将来での債券購入プログラム(TPI)発動の可能性は極めて低いでしょう。この手段は、投機に対する潜在的な抑止力として未使用のまま残しておくのが最善であるとの意見もあります。とは言いながらも、仮に実施されたとしても、実質的な財政改革が発表されない限り、フランス国債が恩恵を受ける可能性は低いでしょう。

確かに、EU当局者はフランスを切り離して、他への波及を回避したいと考えています。しかし、政策当局は、債券市場に自分たちの役割を代行させるという点では、物事を慎重に進める必要があるかもしれません。我々はしばしば、事態が急速に制御不能に陥る様子を目にしてきており、潜在的にネガティブな結果に対して警戒を続けることが重要です。

他方、エネルギー価格への圧力の高まりは、インフレ環境がより悪化する可能性を示唆しています。この点に関して言えば、来月初旬の中間選挙後に、米国がイランとの紛争をエスカレートさせる可能性についての噂が市場の動揺を招いています。中東において、信頼に足る米国勝利への計画は依然として存在しませんが、現時点では、エスカレーションは不可避と広く認識され始めているようです。

これは、我々がすでに目にしてきたものに加えて、追加的なインフレ・ショックのリスクを生み出すことになるでしょう。和平と譲歩への道筋を描こうとする協議は続いていますが、現時点では実現可能には見えません。一方、ロシア・ウクライナ情勢の見通しは依然として非常に困難であり、エネルギー・インフラへの継続的な攻撃は、世界的なエネルギーコストと輸送コストの上昇に拍車を掛けています。

一方、ハイテク株の動揺は、2027年に向けて経済の勢いが衰え始める可能性を示唆しています。これは、米連邦公開市場委員会(FOMC)が市場で織り込まれているよりも少ない利上げ実施に留まるという我々の見方につながっています。しかしながら、エネルギー価格のインフレがここからさらに加速した場合、それがより大幅かつ長期的なインフレのオーバーシュートのリスクとなり得ることも認識しています。

したがって、上述の見方の確信度はこの数日間でやや弱まっています。足元では、米国短期金利のロング・ポジションを、インフレ・スワップのポジションと組み合わせて保有することを選好しています。実質利回りの面で、魅力的な投資価値があると判断しているためです。

一方、エネルギー関連リスクの高まりを受けて、ユーロ圏の金利に対する選好はやや抑えています。しかしながら、国債がリスク資産に対するヘッジとして機能してきたというここ最近の兆候は、デュレーションを保有する根拠を支えるものです。

一方、日本では、国内需要が拡大している証拠を踏まえ、日本国債のイールドカーブの長期ゾーンに対して、引き続き建設的な見方を維持しています。これは先週の20年物国債の入札においても確認され、応札倍率が過去最高の5.4倍に達しました。

過去には日本の国内投資フローにおいて群衆行動が見られることが多くあり、利回りの上昇抑制に寄与しているここ最近のこうした動きが、今後数週間から数ヶ月間で、より大きな流れへと転じるかどうかは興味深いところです。  

ここ数日間では、社債スプレッドにプレッシャーが掛かっており、新規発行の消化不良やテクノロジー関連の懸念、そして欧州ではソブリン債への圧力がその背景にあります。バリュエーションが割安となるにつれ、ヘッジ・ポジションを外し、方向性のあるクレジット・ベータを拡大したい衝動に駆られます。しかしながら、通常であればスプレッドをはるか大きく圧迫しかねない多くの懸念の拡大があったにもかかわらず、2026年を通じてスプレッドは縮小してきました。

投資家心理の悪化により、この社債市場の反転が今後数週間にわたってさらに進む可能性は容易にあり、株式市場がより大きなプレッシャーを受けた場合には尚更でしょう。とは言いながらも、2027年の景気後退リスクは依然として低く、多くの企業のバランスシートが堅固である一方で、多くの政府のバランスシートは悪化傾向にあることを踏まえれば、ここからスプレッドがさらに拡大した場合には、売りの好機と言うよりも買いの機会と捉えることが妥当に思われます。

今後の見通し

週末に控えたブラジルの大統領選挙の決選投票では、フラビオ・ボルソナーロ氏が勝利すると予想しています。これは、目先のブラジル資産にとってプラスになるとみており、引き続きブラジルの現地金利及び通貨に投資妙味があるとみています。中南米全体の政治的傾向は、いわゆる「赤い波」の下での右傾化という文脈において、より市場友好的な方向に向かっているとみています。

フランスに話を戻すと、同国のソブリン債スプレッドは南アフリカやジョージア、アルバニア、ドミニカ共和国といったBB格級の投資適格未満ソブリン債の水準に匹敵し、またはそれを上回っている状態であり、極めて衝撃的です。フランス国債が近い将来、エマージング市場投資家にとっても相対的な価値を提供し始めるのではないかとも思ってしまうほどです。

多くの点から、スプレッド水準は不安定な均衡に近づいているとみています。プレッシャーが高まるにつれ、フランス国家の健全性が疑問視され始めれば、大統領選前に本格的な危機に向かうリスクがあります。とは言いながらも、長期的に見た場合の投資価値は高まっていると捉えています。ただし、第5共和制の終焉や無秩序状態への転落、債務不履行、そしてユーロ圏の崩壊といった状況に直面しない限りにおいて、ですが。

ユーロ圏ソブリン危機の最中の投資経験は、我々の記憶にしっかりと刻み込まれています。この点で言えば、フランス国債のスプレッドが50bps近辺で取引されていた際に定期的に買い手だった多くの投資家が、今やフランス国債の積み増しを考えようともしないことを振り返ると興味深いものがあります。このような状態は、特にシステム投資型ヘッジファンドや商品投資ファンド(CTA)がトレンド・フォロー型のシグナルに反応して売却している場合、市場のミスプライスやオーバーシュートを引き起こす可能性があります。

しかし、スプレッドがさらに拡大を続ければ、フランスに持続可能な将来はなく、フランスなしにはEUの将来もあまり期待出来ないでしょう。またこれを認識して、政策当局は過去成功してきたように、より結束して危機に対応しようとするでしょう。

この点において、当社では今週のECB会合でラガルド総裁が何を語るかに注目しており、どちらかと言えば今後数日間で何らかの安定化を期待しています。他者がパニックに陥り、出口へと走っているときには、常に買いの機会があるということは、過去の経験から学んだことです。

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