フランス社会が変化を受け入れなければ、政治家も受け入れない

Oct 05, 2026

先週、フランス国債は後味の悪いパフォーマンスとなりました。

コメント要約
  • フランス国債危機:フランス10年国債の対独スプレッドは2012年のEUソブリン危機以来の高水準に達しており、2027年の大統領選挙も視野に入る中で、財政責任へ懸念が高まっていることが反映されています。
  • 英国予算リスクはフランスを彷彿させる:バーナム政権が予算を検討中である英国は債券市場でフランスと同様の圧力に直面しています。英国改革党(リフォームUK)が混乱状態にあり、保守党が信頼回復に苦戦している中、英国では早ければ来年にも総選挙が実施される可能性があるでしょう。
  • 中銀の利上げサイクルは減速:FRBやECBは10-12月期後半の追加利上げを示唆したものの、インフレ懸念が後退する中、主要中銀による連続利上げへの市場の懸念は幾分和らいだようです。
  • AI関連の起債は利回りの圧力となる: AI関連の起債が今年5,000億米ドル超になり、平均年限は13.5年と予測されています。債券の発行額が市場の吸収能力を超えており、これはイールドカーブのスティープ化につながる可能性があるとみています。
  • マクロ見通しは引き続き不安定: 債券市場における短期的なセンチメントが過度に弱気になっているとの見方を維持しており、短期および中期年限の債券において大きな利益が得られる可能性があるとみています。これらのトレンドをより早期に活用出来る、アクティブ運用を通じてリターンを提供する機会があるとみています。

先週は、グローバルに債券のイールドカーブがスティープ化し、債券利回りの変動の大きさがようやく金融市場全体で注目を集め始めています。クレジット・スプレッドも大幅に拡大しており、株式市場さえも軟調となり脆弱さが強まっています。

一方、過去数日間では、主要中央銀行による連続利上げへの市場の懸念は幾分和らいだようです。米連邦準備制度理事会(FRB)のウィリアムズ氏や欧州中央銀行(ECB)のクリスティーヌ・ラガルド総裁は、大西洋の両側でさらなる利上げが行われることを市場参加者に示唆しましたが、こうした動きが実現するのは10-12月期の後半になる可能性が高いとしています。

9月のユーロ圏のインフレ指標は、先月のエネルギー価格の上昇を背景に、大方の予想通り高い水準となりました。しかし、天然ガス先物価格の落ち着きや、中東の原油輸出がイラン戦争の開戦前の水準の97%に達したとの報告により、この先のインフレ懸念は和らいでいます。

米国では、コア個人消費支出(PCE)インフレ率が、年次改定による影響で、以前報告された3.3%から3.0%に低下しました。

この点に関して、FRBの2%目標に対するインフレ率の超過幅は、2022年のエネルギー・ショック時に見られた、8%を超えるインフレ率と比較すると比較的小幅であることを強調したいと思います。その意味で、インフレ率は依然として高水準ではあるものの、政策当局者がパニックになる理由はほとんどないように思われます。

当社では、米連邦公開市場委員会(FOMC)が今年12月と来年1-3月期に利上げを実施すると予想しています。しかし、来年の春までには米国の総合インフレ率は3%台半ば~後半から、2%台後半まで低下する可能性があるとみています。したがって、追加的なショックや想定外の指標がない限り、FRBが来年春以降も利上げを続ける必要はほとんどなくなると予想しています。

そのような見方を踏まえれば、現時点で先物市場で織り込まれている利上げ回数よりも、実際には少なくなる可能性があるとみており、ここ最近の投資家のポジション整理が米短期債利回りの過度な上昇につながったと考えています。

FRBには成長を抑制する意図や義務は特段なく、またそうすべきでもないことに留意すべきでしょう。人工知能(AI)投資が生産性を高め、GDPを押し上げるのであれば、中央銀行にとって重要なのはインフレ率を目標水準に固定させることだけです。

さらに、AI関連経済は過熱しているように見えるかもしれませんが、ハイテク以外では経済の大部分がそれほど堅調ではないことも念頭におくべきでしょう。

(当レポート執筆時点では)金曜日に発表予定の最新の米雇用統計を待っている状態ですが、米労働市場は概ね安定しているように見えます。とは言いながらも、新規雇用が名目的には緩やかな水準にとどまっていることは、消費者需要の伸びが緩やかなペースであることを示唆しています。さらに、実質所得が圧迫され、消費者の信頼感が弱いことから、消費者側には、この先やや慎重姿勢を強める余地があると言えそうです。

債券市場に話を戻すと、主要中央銀行の利上げ回数が市場の織り込みよりも少ない回数に留まるとの当社の見方が、短期債利回りへの見通しの根拠になっていますが、長期債については引き続き慎重です。

長期債供給の多さは、この先も継続する場合にターム・プレミアムを押し上げる要因となることが予想されます。この文脈で言えば、AI関連の起債が今年5,000億米ドル超になるとみられており、これらの債券の平均年限は13.5年と予測されています。

端的に言えば、債券の発行額が市場の吸収能力を超えており、これはイールドカーブのスティープ化につながる可能性があるとみています。実際、長期金利の上昇が金融環境の引き締めにつながれば、これも中央銀行の政策として、金融引き締めを強化するのではなく、むしろ緩和することを促す要因となる可能性があります。

社債供給に加えて、高水準の財政赤字も世界の債券利回りを押し上げる要因となっています。過去6年間で3回の大きな供給ショックを経験した後、物理的な安全保障やエネルギー安全保障、食料安全保障への投資の必要性は、いずれも政府支出の増加が必要となります。高齢化社会も社会保障支出に圧力を掛けており、世界的に見て、財政抑制という概念が少しでも人気ある国はほとんどありません。

過去数週間、財政責任に関する債券市場の懸念はフランスに集中する展開となり、フランス国債への圧力は高まり続けています。フランスの有権者が依然として変化の必要性から目を背ける中、2027年の大統領選挙も視野に入り、フランスのどの政党もこれを受け入れることは非常に困難です。

現在の世論調査を見ると、ルペン氏及び(同氏率いる)国民連合(RN)の勝利がベースケースのように見え、とりわけ決選投票において極左の社会主義者であるメランション氏と対決した場合にはその可能性が高そうです。フランス10年国債の対独スプレッドは2012年のEUソブリン危機以来の高水準に達しています。つまり、過去単一通貨の崩壊が極めて現実的な可能性に見えた時期以来の水準となっており、債券市場において危機感が強まっています。フランス国債市場のボラティリティは他の欧州周辺国スプレッドにも波及しています。

先週は、イタリア国債のスプレッドが久方ぶりに一日で2桁の拡大となる場面も見られました。短期的には、フランス国債の売りは行き過ぎた可能性があり、ある程度の反転が予想されます。しかし、フランスのスプレッドへの圧力が和らぐ可能性は低く、当社はイタリアや他のユーロ圏ソブリン債に比較して、フランス国債のスプレッド縮小が見られた場合には売りポジションを検討する方針です。

また、フランスでは国債市場での国内投資家の比率が低いことも注目に値し、これは買い手基盤の構造的な弱さを示しています。フランス当局は、国内投資家の比率を高めることを目的とした政策を検討すべきです。実際、この資産配分の国内回帰というテーマは、今後数年間、世界市場においてますます重要性を増していく可能性があるとみています。

フランスで起きていることは、バーナム政権が予算を検討中である英国にとっても警告となるでしょう。首相は労働党大会での演説で次の総選挙後の優先事項を概説しており、英国改革党(リフォームUK)が混乱状態にあり、保守党が信頼回復に苦戦している中、英国では早ければ来年にも総選挙が実施される可能性があるでしょう。

一方、国内資産への回帰は日本においてはすでに始まっており、ここでは長期債利回りの支援材料になるとの見方を維持しています。他の債券市場とは対照的に、日本のイールドカーブはすでに非常にスティープであり、金融政策が正常化するにつれて、フラット化していく予想しています。

その他では、債券利回りの上昇がリスク資産を圧迫し始めているという印象が強まっています。米国株式は堅調な企業業績モメンタムに支えられていますが、長期利回りの容赦ない上昇は他の長期デュレーション資産にとっても課題となっています。

この点に関して言えば、ここ最近面談した多くの資産配分の担当者は、株式から債券に配分を増やす傾向にあるようです。利回りは数十年ぶりの高水準にあり、こうした資産配分のシフトは、S&P500 種指数の大半の銘柄が現在、指数自体に対して負の相関となり、一部の銘柄が指数全体を左右するという状況にある中、株式市場の将来的な見通しがより不確実であるという考えによっても起きています。

外国為替市場では、米国の成長見通しに対するより強気な評価を背景に米ドルが堅調に推移しています。しかし、米国資産からの長期的な分散というテーマが、最終的には広範な米ドルの上昇を抑制するとの見方を維持しています。

このような状況を踏まえ、ここ最近の米ドル上昇を受けて、米ドルに対するカナダドルのショート・ポジションを解消しましたが、引き続き高い実質金利水準を維持している国の中で、キャリー水準が魅力的と思う一部エマージング国の通貨に対して、米ドルを少しショートにしています。

足元では多くのソブリン債のスプレッドに投資妙味を見出しており、ここ最近の動きが反転することを期待しています。ドイツの信用力の継続的な悪化も、南欧諸国に比較して更に強まってくる可能性があり、これが時間の経過とともにスプレッドの追い風となるはずです。  

今後の見通し

今後を見据えると、米国債市場のボラティリティが高まっている時期において、米雇用統計などの経済指標で予想外の大きなサプライズがあれば、短期的な市場の大きな反応を引き起こす可能性があります。とは言いながらも、現時点では成長関連指標よりもインフレ指標の方が重要です。この点に関して言えば、今年の最後の3ヶ月に入る中、次回の消費者物価指数(CPI)の発表が債券利回りにとってより重要な意味を持つ可能性があるでしょう。

米中間選挙も近づいており、トランプ氏の人気が低下し続ける中、世論調査では民主党が「接戦」と見なされているすべての上院激戦州でリードしていることが示されています。議会両院で民主党が過半数を占める可能性は非常に高く、上院では民主党が54~55議席を獲得することさえ想像できます。

これにより、米大統領が残りの任期中に自らの権限を越える行動を取った場合には、トランプ氏の弾劾成功への期待が再燃する可能性があります。こうした政治的配慮がトランプ氏の中東でのさらなる大規模なエスカレーションや、他の物議を醸す政策行動の能力を抑制するのであれば、これは悪いことではないかもしれません。しかし、トランプ氏が黙って身を引くことはないであろうことも分かっています。それは彼のDNAではないからです。

いずれにせよ、今後数カ月間にボラティリティと混乱が生じる余地は十分にあり、これらのトレンドをより早期に活用出来る、アクティブ運用を通じてリターンを提供する機会があるとみています。

年初来では債券利回りに厳しい年となっていますが、2023年も最初の9カ月間は同様であったものの、最後の3ヶ月間で利回りが110bps低下したことも思い起こされます。

当社では、債券市場における短期的なセンチメントが過度に弱気になっているとの見方を維持しており、そのような見方が正しければ、短期および中期年限の債券において大きな利益が得られる可能性があるとみています。

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