フランス国債の乱高下がもたらす不満の秋

Oct 13, 2026

ブラジル総選挙でのサプライズ

コメント要約
  • 米国債:米国債のイールドカーブは、ここ最近のベア・スティープニング傾向が継続し、米長期金利は25年ぶりの高水準に達しました。
  • 米国のタームプレミアム:社債及び国債の発行増加は継続する見通しであり、これは長期債に高いタームプレミアムを付与することを求め続ける要因になり得ると考えています。
  • 欧州債券市場でみられる圧力:政治家が債務の持続可能性へ取り組むとの信頼を市場がなくす中、フランス国債への圧力が高まり、ストレスの兆候が高まっています。
  • ブラジル総選挙ではボルソナロ氏が優勢:先週の選挙では、右派候補のフラビオ・ボルソナロ氏が第1回投票で得票率トップに立ち、ブラジル国内資産は力強く上昇しました。政治と政策が金融市場をどのように動かすかを改めて思い起こさせるものとなりました。
  • 中東情勢の悪化リスク:トランプ大統領が11月の中間選挙後に中東での更なる軍事行動の激化を追求するのか、との疑問が渦巻き続けています。

先週も、米国債のイールドカーブは、ここ最近のベア・スティープニング傾向が継続し、米長期金利は25年ぶりの高水準に達しました。現時点では、市場が吸収出来る以上の新発債が発行されていることから、債券利回りを安定させるためには需給バランスがより均衡になる必要があるように思います。

この点で言えば、借入コストの上昇は今後の企業の支出計画を抑制する可能性があり、実際に最近、複数の米国の銀行から、金利上昇を受けて債券発行計画が縮小されているとの話も耳にしました。しかし、人工知能(AI)への熱狂が株価指数を押し上げ続ける中、最近の起債増加の主因となっている発行体の多くは、それほど金利に敏感ではありません。

さらに、2028年の米選挙における民主党による「ブルーウェーブ」への警戒感が強まる中、規制環境が大幅に変化する前に、出来るだけ多くのAIインフラを構築しようという切迫感があるようです。

その結果、社債及び国債の発行増加は継続する見通しであり、これは長期債に高いタームプレミアムを付与することを求め続ける要因になり得ると考えています。

このことは、イールドカーブがさらにスティープ化する余地があることを示唆しています。米連邦公開市場委員会(FOMC)が今後1年間で市場の織り込みよりも少ない利上げ回数に留まるとの見方から、米短期債については建設的な見方を維持していますが、イールドカーブのより長期のゾーンについては慎重な姿勢を保っています。

経済のファンダメンタルズに関しては、先週の雇用統計は比較的軟調で、消費者信頼感の弱さも、二極化する「K字型」経済を浮き彫りにしています。AIに関連するものは確かに非常に好調ですが、それ以外では、金利敏感なセクターに冷え込みの兆候が見られます。

社債市場においても、ここ最近、CCC格の発行体のスプレッドが圧迫されており、金利上昇環境において、脆弱な借り手が市場から締め出される(クラウディング・アウトされる)リスクが浮き彫りになっているようです。

同様の傾向はB格の銘柄でも見られていますが、CCC格付けのスプレッドが過去4年間で最もワイドな水準に拡大しているのとは異なり、CLO関連のB格クレジットへの需要により、B格のスプレッドは2026年の平均に近い水準に留まっています。

とは言いながらも、債券利回りの上昇がリスク資産に重くのしかかり始めているとの見方は勢いを増しているようであり、この点で言えば、国債利回りのさらなる上昇は、これが米国の金融環境の実質的なさらなる引き締めにつながるのであれば、自己調整機能を促す可能性があるとみています。

一方、欧州では、政治家が債務の持続可能性へ取り組むとの信頼を市場がなくす中、フランス国債への圧力が高まり、ストレスの兆候が高まっています。

ルペン氏率いる国民連合(RN)から、政権に就いた際には財政再建を目指す、とのコメントがあったにも拘わらず、この目標を、定年引き下げや社会保障支出の継続的な増加という政策と調和させることは依然として困難です。

結局のところ、緊縮財政はフランスの有権者に非常に不人気であるため、現在、政治家は選挙での敗北を恐れ、選挙前に財政政策について強硬な姿勢を取ることが難しくなっています。

当局者からの、フランスは支援を受ける必要はなく、または受ける状況でもないとの発言も投資家心理を動揺させ、ヘッジファンドがフランスで維持していたキャリー・ポジションを解消する中、スプレッドは過去12年平均の3倍を超える水準に達しています。

今後を見据えると、フランスは2026年予算については5.4%の財政赤字になると考えており、気温が低下するにつれて国内の抗議活動も沈静化し始めれば、追加の悪材料がない限り、ここ最近の価格動向に多少の落ち着きがもたらされる可能性はあるでしょう。しかし、海外投資家が引き続きフランス市場からの退出に向かえば、そのような落ち着きは特段長続きしない可能性があるでしょう。

フランス国債の国内投資家の保有比率はわずか12%に過ぎず、このことはフランスの貯蓄者やフランスの銀行が高い利回りの恩恵を享受するために保有を増やす余地があることを示唆していますが、比較的リスク許容度の低いフランス国債の保有者が、ここ最近の市場の下落に動揺し、下落相場の中での売却を進めることで、さらなる売りを引き起こす可能性への懸念が燻ります。

このような価格動向は、ユーロ・ソブリン危機で見られたものを彷彿とさせます。今日ではそのような危機からは程遠いものの、フランス社会が頑なに変化に抵抗し続ける場合、懸念がさらに高まる余地は残っています。

この点に関して言えば、以前はユーロ圏周辺国の一部ソブリンが「大きすぎて潰せない」ことが懸念されていましたが、今回はフランスのような国は「大きすぎて救えない」ことが証明される可能性への懸念があります。

一方、よりリスク回避的な見通しを踏まえ、先週は、ユーロ短期金利が低下し、投資家による利上げ織り込みは後退しました。このようなプロセスはさらに進む可能性があると考えており、米国と同様、ユーロにおいてもイールドカーブの短期ゾーンの金利に引き続き価値を見出しています。

海峡を越えた英国では、与党政治家らがフランスの動向を懸念とともに見守っており、より野心的な支出増加型予算の計画は一旦後回しにされているように見受けられます。

その点で言えば、バーナム氏が2028年の総選挙に目を向け始めているかどうかを推測するのは興味深いかもしれません。英国の他の政党がさまざまな混乱状態にある中、労働党は世論調査において比較的良好なパフォーマンスを示しています。

先週のブラジルでの選挙も、政治と政策が金融市場をどのように動かすかを改めて思い起こさせるものとなりました。右派候補のフラビオ・ボルソナロ氏が第1回投票で得票率トップに立ち、ブラジル国内資産は力強く上昇しました。金融市場はルラ大統領の続投を恐れていたことから、第一回投票の結果はポジティブ・サプライズとなり、直後にブラジル現地債券利回りは150bps低下、ブラジル・レアルは5%近く上昇しました。

当社ではブラジル資産に対して建設的な見方を維持しており、ボルソナロ氏が決選投票で勝利するという前提では、資産価格の上昇基調はさらに続くと考えています。

また、これを中南米全体での右派かつ市場友好的な政権に向かうという継続的な動きの一部であると捉えており、同地域全体の資産に対して比較的前向きなスタンスを維持しています。

社債市場では、国債の下落を受けてフランス銘柄が苦戦したことから、ユーロ建て社債が他市場をアンダーパフォームしました。多くのフランス企業の銘柄はスプレッドで見て、フランス国債よりもタイトな水準で取引されていますが、他の市場でも見られてきた通り、社債市場は国内の国債市場の動向による影響を受けることとなります。

フランスの動きを受けて、ユーロ圏全体のソブリン債スプレッドも拡大しており、欧州のクレジット債スプレッドにとってより困難な環境を示唆していますが、これまでのところ、非常に秩序を維持した取引状況となっています。

実際には、国債市場における混乱の方がはるかに顕著でした。例えば先週、フランス2年国債の対独スプレッドは、レバレッジをかけたヘッジファンドのキャリー・ポジション解消により、わずか数日で25bpsから85bpsへと急拡大しました。

これは、市場の需給要因と、長期に亘ってレバレッジが蓄積された際に高まるリスクの重要性を改めて思い起こさせます。

当社ではフランスについてはフラットなスタンスを維持していますが、今のところ、スプレッドが縮小に向かった場合にはフランス国債をショートすることを検討しており、相対価値の観点で、イタリアなどの欧州の他の地域でソブリン・クレジットを保有することがはるかに有益であると考えています。

フランスとは異なり、イタリアはユーロ圏の「過剰財政赤字手続き」から脱却する可能性が高く、基礎的財政収支の黒字を達成しています。財政ルールの例外措置を適用し、防衛費やエネルギー安全保障のための追加支出によって来年の赤字が増える見通しであることは事実ですが、当社ではEUがマーストリヒト基準を多少緩和するという選択肢を許容すると考えています。

この点において、ユーロ圏スプレッドの動きが単一通貨の安定を脅かすような、よりシステミックなものになり始めた場合、イタリアはECBが支援を検討しうる国であるとみています。  

今後の見通し

この先を見据えると、現時点では長期債よりも短期債利回りに価値を見出す方がはるかに容易であると考えています。また、経済成長が見られ、強固なバランスシートを有する国のソブリン債スプレッドにも価値を見出しています。

例えば、ブルガリアとクロアチアは、経済が比較的活気に満ちた状態であるとともに、政府の債務水準が他のEU諸国と比較して極めて低い、小規模なEU加盟国です。

過去の経験から、ソブリンの信用格付けの動きはスプレッドの動きに遅行する傾向があることを学んでおり、その観点から、債券市場が証明するように、フランスは現在、単一通貨圏で最も格付けが低い国であるべきだという感覚があります。

大西洋の反対側の米国では、トランプ大統領が11月の中間選挙後に中東での更なる軍事行動の激化を追求するのか、との疑問が渦巻き続けています。これは脅威ではあるものの、米政権は地上部隊の投入という考えに対しては依然として抵抗感を持っており、現時点で爆撃を通じてほとんど何も達成出来ていないことを目の当たりにしていることを踏まえれば、軍事行動のエスカレーションを望んだとしても、実際にどのような合理的な選択肢が存在するかどうかに疑問が残ります。

これは、近々ワシントンDCで行う予定の政策担当者とのミーティングで探りたいと考えている点ですが、今のところは、中東における現状の継続が、今後当面の間は最も可能性の高いシナリオであるように思われます。

したがって、エネルギー価格が横ばいで推移するのであれば、米国のインフレ率は今年後半に3%台後半でピークに達し、エネルギーのベース効果がなくなる来年春までには2%台後半に低下すると考えています。

その先は、価格上昇を抑制するための進展はより難しくなる可能性がありますが、インフレ率が3%を下回って低下傾向にあり、政策金利が大方の想定する中立水準をある程度上回っている状態であれば、FRBはインフレに対して比較的寛容になると考えています。

フランスに話を戻せば、フランス社会は身の丈を超えた生活を続けることを期待出来ないという考えを改めて思い起こしています。この点に関しては、集団的な国民の学習と認識が必要であり、一定期間に亘って市場が規律を強制してはじめて、もたらされるものなのかも知れません。フランスが目を覚まし、コーヒーの香りを嗅ぐことが出来ればよいのですが!(教育費削減を巡る学生デモが起きている中)まさに国全体が学校に戻る時です!

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