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米・イランの和平合意への期待の高まりを背景に、先週は債券利回りが低下し、リスク資産が上昇しました。S&P500 種指数は最高値を更新しましたが、これは好調な四半期決算シーズンと、先月中旬に急落したハイテクセクターへの懸念の緩和に支えられたものです。
中東情勢に関して言えば、過去数週間で、米国のパトリオット・ミサイルの備蓄が大幅に枯渇し、湾岸諸国がミサイル攻撃に対してはるかに大きなリスクに晒されていることが明らかになりました。このことが和平合意への動きを後押ししており、米国が地上軍を派遣して「任務を完遂する」立場にない中、これらの諸国が和平を求めている状況です。これにより、現時点ではイラン側が比較的有利な立場から条件を決定出来る状況となっています。しかし、イラン政権が強気に出すぎて失敗する恐れがあり、それによって合意の成立が阻まれる可能性も依然として残っています。
この文脈において、ある草案では、イランとオマーン、そして恐らく米国による共同統治機関が想定されているようであり、ホルムズ海峡の通過に際しての収入の一部を受け取ることになります。交渉担当者によれば、そのような合意は東南アジアのマラッカ海峡に関して既に実施されているものと一定の類似性があるようです。
このような枠組みはトランプ氏にとってかなりの譲歩となりますが、米国内のコメンテーターは、たとえイランが強固な姿勢を貫き、6カ月弱前の「壮絶な怒り(エピック・フューリー)作戦」開始時点よりも、強い立場で紛争を終えることが明白であるとしても、不人気なこの戦争が終結することを、より重視する可能性が高いでしょう。米国では今や中間選挙が間近に迫っており、大統領の支持率が過去最低となっている中、国内におけるアジェンダが喫緊の課題となっています。
これらの進展を踏まえれば、原油価格が6月の直近最安値に回帰したとしてもそれほど不思議ではないでしょう。このことが、インフレの上振れリスク後退や、中央銀行による追加的な金融引き締めの必要性の回避につながるとみなされれば、債券利回りが幾分低下するきっかけとなる可能性はあるでしょう。
しかし、今後どのような結果になったとしても、中東地域は極めて不安定な状態が続くことに留意すべきです。我々は既に和平合意が一度失敗するのを目の当たりにしており、今後の交渉も決裂し、敵対行為が再燃する可能性は十分にあるでしょう。イラン側は明らかにホルムズ海峡を重要な交渉材料として使用することに成功したことで勢いづいており、さらに多くを求め続ける可能性があります。この点で言えば、たとえ紛争が今のところは沈静化したとしても、両者は依然として対立が避けられない状況にあるように思います。
フーシ派も紅海で問題行動を起こしており、湾岸地域では機雷除去が必要であることから、貿易が紛争前の水準に戻るまでにはかなりの時間を要すると思われ、したがって原油価格が1バレル70米ドルを下回る水準を維持する可能性は低いとみています。
そのような中で、クラック・スプレッド(原油と精製製品の価格差)は当面高止まりするとみています。精製施設の生産能力が失われたことで、精製品市場は原油市場よりもはるかに逼迫しています。結果として、インフレ圧力は市場が織り込む以上に根強く残るとみています。これは中期的に金利のエクスポージャーを持つことへの熱意を削ぐもので、インフレ連動債やデリバティブへの選好を続ける要因となっています。しかし、短期的にはより建設的な値動きとなる可能性があり、投資家は過去にも金利の低下局面で買いに入ろうとした経緯があります。たとえ最終的には(金利上昇によって)失望させられたとしても、です。
米国では、米連邦公開市場委員会(FOMC)会合後の記者会見におけるケビン・ウォーシュ米連邦準備制度理事会(FRB)議長のパフォーマンスに対する金融市場の反応に、政権側はやや困惑したようです。しかし、トランプ氏の周辺は、ウォールストリート・ジャーナルのニック・ティミラオス氏のようなジャーナリストを攻撃するのではなく、ウォーシュ氏に、もしフォワード・ガイダンスを無くし市場に何も語らない方針を追求したいのであれば、今後は記者会見を非常に短く保つよう助言したほうが良いのかもしれません。
一方、前週の円相場への為替介入も注目に値し、これは円のさらなる下落がグローバルな超長期債利回り上昇トレンドにつながる可能性があるというベッセント氏の懸念に紐付いている可能性があるとみています。
米政権は、住宅購入の負担を軽減するため、住宅ローン金利の低下を強く望んでいます。この点で、ベッセント氏は市場を誘導するために過去の経験を活用することに熱心ですが、最終的には市場価格がファンダメンタルズによって決定されることを最も理解しているのは彼自身でしょう。
さらに、ウォーシュ氏は、FRBが今後経済や金融市場においてはるかに小さな役割を果たすことを望むFRB議長です。この点も踏まえれば、ウォーシュ氏の任期中はファンダメンタルズ要因が政策を決定づける要因になると考えられるでしょう。
円そのものに関して言えば、介入が短期的な安定をもたらしており、さらなる協調介入の脅威が、少なくとも数週間は円相場を1米ドル160円近辺に抑えるのに十分であると期待されています。
しかし、金利差の拡大が続くようであれば、円は引き続き圧力を受けるでしょう。この点で、日銀が9月または10月に利上げを実施することを認めることが重要であり、米政権が日本の政権を支持した背景に、日本で今後も政策調整が行われるという確約がどの程度関連していたかを推測することは興味深いところです。一方、ここ最近の出来事は日本の超長期国債の安定化に寄与しており、30年債利回りは4%近辺で需要を集めています。これは当社が予想していた通りの展開です。
その他では、先週の米国テックセクターのセンチメントの好転は、「シチュエーショナル・アウェアネス」というAI特化のヘッジファンドから、大手ヘッジファンドのシタデルがAI関連投資の大部分を引き受けたというニュースに支えられました。当該ファンドは、レバレッジを活用した例外的に高いリターンを記録した後、危機に直面していました。7月のレバレッジ解消は広範なストップロスの発動を引き起こしましたが、市場が安定するにつれて、ポジションは比較的整理されたとの感覚があります。これにより株式市場は底を形成し、その後再び、既に高い予想を上回る決算を受けて上昇することが出来ました。
社債スプレッドは先週も概ねレンジ内の動きとなりました。しかし、AI関連セクターの反発は、数週間に亘って圧力が高まっていたハイパースケーラーを取り巻く環境を改善させました。
その一例として、ハイイールド市場において、コアウィーブのようなデータセンター銘柄の2031年債の利回りは1週間前には13.5%を超えていましたが、11.5%まで低下しました。これはほんの少し前の6月には9%という低水準を付けていたものです。供給(新規発行)圧力の継続は構造的な市場懸念として残っており、この点で言えば、先週はスペースXが、AI関連投資支出のペース加速を発表した後に株価が押し下げられた最新の事例となりました。
当社では短期的には同セクターに対してクレジットの観点から慎重な見通しを維持していますが、現時点では、信用毀損の可能性が非常に低いと判断出来る状況において、一部の銘柄については中期的な観点から魅力的な水準で取引されているとみています。
中期的な投資見通しは依然として極めて不透明ですが、短期的にはやや楽観的な見方に転換しています。
したがって、リスク・エクスポージャーを積み増す上で、最も魅力的な領域を検討するようになりました。この点で言えば、現時点では多くの投資適格社債と比較してソブリン債に、より投資妙味があるとみています。例えばチリのような安定したA格の発行体のユーロ建て国債がスワップ対比で100bps超で取引されており、これは同等の信用格付けの社債で得られるスプレッドの2倍となっています。
また、ハンガリーにおいても金利エクスポージャーを積み増しました。同国では建設的な国内のニュース・フローやEUとのコンバージェンス(収束)候補となる軌道にも拘わらず、10年債利回りが6月に付けた低水準を40bps以上上回る水準となっています。また、ノルウェーの中期債にも際立つ割安感があるとみています。
ノルウェーのインフレ軌道については、過去1年間のノルウェー・クローネの相対的な強さによる恩恵を受けるはずであると、やや楽観的にみており、ノルウェー中央銀行が次回の会合で利上げを行うとは考えていません。また、ハト派的なイングランド銀行(英中央銀行、BoE)会合を受けて、英国債の短期的な見通しについても建設的にみています。
BoEのキャサリン・マン理事が7月の金融政策委員会(MPC)で利上げを主張し投票したのは、中東における紛争の再燃を理由としたものであることから、和平合意が成立すれば、9月にはこの投票を覆すかも知れません。さらに、同僚のクレア・ロンバルデリ理事も、BoEは利上げに向けて動くにはまだかなり遠い状況にあると指摘していることから、委員会のハト派的なバイアスが投資家にエクスポージャーを積み増すことを促す可能性もあるでしょう。
とは言いながらも、今年10-12月期のインフレ率上昇によって、これらの取引が最終的に損失を抱えることになっても不思議ではないでしょう。これはまた、バーナム政権がより厳しい財政精査に晒される可能性が高い時期とも重なります。しかし、首相が休暇中で、英議会も夏季休会中であることから、今後数週間は比較的静かな期間となる可能性があるとみています。
この先を展望すると、米雇用統計も含めて、FRBの政策反応関数を理解する上では経済指標の発表がさらに重要になっているという事実を意識せざるを得ません。フォワード・ガイダンスがない中では、市場変動性は高まる可能性があり、不確実性の高まりは時間の経過とともに、より大きなタームプレミアムの必要性を示唆する可能性があります。雇用統計の先を見据えれば、米CPI指標がこの点でさらに極めて重要となり得るでしょう。
一般的に言えば、米国の労働市場が概ね良好な状態にあることを示す指標が数多くあるように思われます。ただし、問題はインフレ関連です。6月の穏やかなCPIの発表により、FOMCが早期に利上げする必要性に対する圧力は緩和されました。
しかし、来週発表されるCPIが上昇に転じれば、重要な意味を持つ可能性があります。いずれにせよ、9月のFOMCでの利上げが60%織り込まれていることから、微妙なバランスにあるとみており、FRBの行動がわずか1つか2つの重要なデータ・ポイントによって明らかになる可能性は十分にあると言えるでしょう。
その他では、米国製パトリオット・ミサイルの不足は中東に影響を与えているだけでなく、ロシア・ウクライナ間で継続中の戦争にも大きな影響を及ぼしています。ウクライナが事実上迎撃ミサイルを使い果たしたことで、ロシアによるミサイル攻撃はより致命的なものとなっており、我々は今、両者が最終的な和平への唯一の道として攻撃のさらなるエスカレーションを視野に入れているというダイナミクスを目の当たりにしている可能性があり、懸念されます。
このような展開は、欧州における軍備増強に関する緊迫感を高め、支出の加速につながるでしょう。しかし、我々は引き続き、このような支出に対する各国の熱意がロシア国境からの距離によって異なる状況を目の当たりにしています。国境から近い東欧諸国は政策課題を推進しようとしていますが、フランスやイタリア、スペインなど遠方の国々は、政府資金を他の優先事項に充てることにはるかに関心を持っています。
それでも、供給にボトルネックがある時期に、不足を埋めるための拙速な動きがコストを押し上げる要因になるとの見方を維持しています。この点で、防衛支出は財政面とともに、より広範な経済面でも影響を及ぼす可能性があります。
一方、トランプ氏はパトリオット・ミサイルの不足や世の中の出来事を形成している防衛サプライチェーンの脆弱性よりも、ワシントンD.C.で今週末で開催される「パトリオット・ゲームズ(全米高校生大会)」に人々の関心を向けることでしょう。もっとも、パトリオット・ゲームズと言えば、同じタイトルのハリソン・フォード主演の古い映画の方が、はるかに見る価値があると言えるでしょう!
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