ゴールポストを動かす?

Jun 15, 2026

トランプ氏による中東地域における防衛は難航しているものの、ウォーシュ氏は長期的な戦略を練っているようです…

コメント要約
  • 中東の地政学:先週木曜日のトランプ米大統領の発言は、イランとの合意が間近であることを示唆するものと受け止められ、週初から軟調に推移していた債券利回りは低下し、リスク資産は上昇しました。
  • 米国の金融政策:インフレ率が目標を上回っているにも拘わらずFRBは政策金利を据え置いており、9月のFOMC会合では政策引き締めの可能性が検討される可能性があります。
  • 英国政治の不透明感:メーカーフィールドの補欠選挙は首相交代の可能性を高めると懸念されています。英国資産は落ち着いた状況にあるものの、政治的変化に脆弱であると考えています。
  • 日本の利上げは不可欠:さらなる円安を回避し、政治圧力がかかる中で信認を維持するために、日銀は今月利上げを行うと予想されています。
  • マクロ経済の見通し:インフレ期待の高まり、中央銀行の政策における乖離、未解決の地政学リスクはこの先の投資見通しを左右すると考えています。

先週木曜日遅くのトランプ米大統領の発言は、イランとの合意が間近であることを示唆するものと受け止められ、週初から軟調に推移していた債券利回りは低下し、リスク資産は上昇しました。トランプ氏の発言前には、一連の報復攻撃によって中東地域における緊張が高まっていました。過去数週間に亘って、このような状況を何度も経験してきたようにも感じられ、歩み寄りの合意に達するかどうかはまだわかりません。

最終的に、トランプ氏にとって屈辱的な敗北という印象を完全に払拭することは困難であるかも知れず、結果としてイラン政権は通称「壮絶な怒り(エピック・フューリー)作戦」開始前よりも、中東地域内での立場を強固なものとすることになります。これは受け入れがたいことではあるものの、トランプ氏が中東から距離を置き、この件を過去のものにしたいと考えていることは、しばらく前から日増しに明らかになっていました。

しかし、和平合意が成立したとしても、それは不安定な均衡状態に過ぎない可能性があるでしょう。イラン側が勝利を収めた場合、イスラエルや湾岸協力会議(GCC)諸国は不利な立場に置かれることから、同地域での紛争が再燃するリスクは燻り続けます。今後数か月から数四半期に亘って、同地域はさらなる変動にさらされる可能性が極めて高く、世界のサプライチェーンの混乱が続くリスクがあります。このような点を踏まえれば、原油価格は、現在の価格水準と比較して、この先下振れするリスクよりも上振れするリスクの方が大きいと考えています。

先週の初めは、堅調な米消費者物価指数(CPI)の発表により、米国債利回りに上昇圧力が続きました。複数の経済指標において、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策が現在、引き締め的ではなく緩和的である可能性が示唆され始めています。当面は、米連邦公開市場委員会(FOMC)が利上げについて本格的な議論を行う可能性は低いと考えてい`ます。

しかし、夏にかけて物価がさらに上昇するリスクがあることから、9月のFOMC会合では政策引き締めの可能性が具体的に検討される可能性があると予想しています。

新たにFRB議長に就任したケビン・ウォーシュ氏は、一部の市場参加者が想定しているほどハト派的ではないとの見方を維持しています。当然ながら、ウォーシュ氏は今年初め、長年切望していた職を確保するためにハト派的に「聞こえる」発言をしました。しかし、FRB議長に就任すると、アフォーダビリティが重要な政治課題となっている中、物価の安定を実現することに重点を置き、インフレを目標水準に戻すことをより明確に求めるようになると考えています。

足元では、米国債のショート・バイアスを維持しており、また、ブレークイーブン・インフレベースで物価連動債利回りが魅力的な投資機会を提供していると考えています。米国のインフレは5年以上に亘って目標を上回っており、今後も当面その状態が続く見込みです。さらに、人工知能(AI)インフラブームがインフレ圧力を高めていることも踏まえれば、インフレが大幅に低い水準に戻るという市場の確信が、いまだ試されていないことを驚きと共に受け止めています。

ユーロ圏では、欧州中央銀行(ECB)が6月の会合で政策金利を25bps引き上げましたが、追加的な引き締めを予め約束することには消極的です。ECBが連続利上げを行う可能性は低いと考えていますが、インフレがECBの目標を大きく上回っていることから、ラガルド総裁は9月に再び利上げを目指す可能性があると思われます。

ただし、ユーロ圏の成長見通しは米国よりもはるかに弱いため、域内のインフレは比較的早くに目標水準に戻るはずであるとみており、その結果2027年には利上げの巻き戻しが可能になると予想しています。

このような点を踏まえると、ユーロ圏の短期債利回りについては安心感があり、米国債に対するドイツ国債の相対的なアウトパフォーマンスを引き続き予想しています。一方、英国については、今月下旬にメーカーフィールドの補欠選挙を控え、より慎重な見方を維持しています。

アンディ・バーナム氏が勝利した場合、その後キア・スターマー氏に代わって同氏が英国首相に就任するとの想定の下、英国資産が回避される可能性があります。この点で、英国債や英ポンド市場は現在、さほど動揺していないように見受けられるものの、そのような落ち着いた状況は長く続かないと考えています。

先週、日本を訪れて実施した投資家や政策当局者との面談を通じて、日銀が今月利上げを行い、今年後半に追加利上げが実施されるとの見方に対する確信が深まりました。日本の金融政策は依然として緩和的で、預金金利は0.75%であり、R*の中立金利と見られる約2%を大きく下回っています。

昨年の高水準からのインフレ低下により、日銀は段階的な政策正常化を追求する余地を得ましたが、日銀がタイムリーに政策を調整する能力に対して政治的な干渉が影響を与えないことが重要であると考えています。

今月利上げを実施しなければ、日銀が政策において後手に回る(ビハインド・ザ・カーブとなる)との懸念から、日本の長期国債に悪影響が及ぶ可能性があります。また、そのような状況は円の価値が再び下落するきっかけとなる可能性もあり、一貫した金融政策調整に支えられない場合、為替介入は失敗に終わる運命にあり、円相場は現在のレンジを突破して下落する可能性があります。海外では金利が上昇しており、金利差が拡大して円売りの材料となることを防ぐためにも、日銀が利上げを実施することが不可欠です。

その点で言えば、円の過小評価に対して日本社会全体で不満が広がっており、円のさらなる下落は国内でネガティブに受け止められるでしょう。したがって、高市首相がこの責任を問われれば支持率が低下し、自民党内での自らの立場が弱まることになります。

高市首相自身は必ずしも自らの考えを明かさないことが多いですが、支持率を非常に重視していることは明らかです。そのような観点から、日銀が適切と判断する政策引き締めについて高市氏がその妨げとなる可能性は極めて低いと思われます。

日銀の利上げのみでは円高を促す材料として十分ではない可能性があり、円強気派は金利差が縮小し始めるであろう2027年までは辛抱強さを求められるかもしれません。したがって、当局の介入による円高を期待して、160円付近でのエクスポージャーを維持することを選好する一方、155円を同ポジション解消の目安となる水準としています。

一方、日本の国内投資家の多くは、利回りが過去1年間で大幅に上昇したことを踏まえ、今後数か月間で国内債券へのアロケーションを増やす計画に肯定的であるように見受けられました。しかし、日本社会全体に見られる合意形成的な考え方を考えると、より強い見方を支持したり、より決定的な動きをする投資家はほとんどいないようでもあり、日本債券への資産のシフトはより緩やかかつ安定的なペースで進むものとみています。

現時点では、日本国債のイールドカーブの急な傾き(スティープさ)が、利回り上昇に対する十分な保護を提供しているとの見方を維持しており、他の年限と比較して、30年債に投資妙味があると考えています。

長期ゾーンにおける需給バランスは徐々に改善しており、超長期債の発行が減少すると同時に、より多くの国内投資家がエクスポージャーを積み増し始める中、10年/30年の利回り差におけるフェア・バリューは、現在市場で見られる125bpsではなく、75bpsに近いと考えています。

リスク資産市場では、半導体株が目立った圧力下に置かれ、株式市場で変動性が激しくなったにもかかわらず、社債スプレッドは概ね安定的に推移しました。今後Open AIによる新規株式公開(IPO)も控え、新規上場に対する個人投資家の熱意は試され続ける可能性があり、この点で言えば、申込超過となったSpace Xの上場後のパフォーマンスを注視することは興味深いとみています。

今後の見通し

アイルランドの非常に弱いデータを受け、ユーロ圏の1-3月期GDP成長率が前期比-0.2%に修正されたことで、今年上半期にテクニカル・リセッション入りする可能性がかなりあり、中東でのサプライチェーンの混乱が未解決のままであれば、今年下半期にはさらなる下振れリスクが生じる可能性があります。

高利回りクレジット債のスプレッドは、格下げやデフォルト率の上昇をもたらす可能性のあるリセッション・リスクの高まりに対して常に敏感です。したがって、クレジット債に対する慎重なポジションに関しては、辛抱強く継続することが賢明であるとみています。目先の経済見通しが大きく変化しているにもかかわらず、スプレッドが2026年初よりもタイトな水準にあることを踏まえれば、さらなるスプレッド縮小の余地はそれほどないように思えます。

そんな中、サッカーのワールドカップが始まり、今週はウォーシュ氏の議長就任後初の記者会見も楽しみにしています。ウォーシュ氏(以下はかなり本物に見えてしまうディープフェイク画像)も、物議を醸しているVARシステムも、ゴールポストを動かしてしまうようなことにならないことを願っています...  

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