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中東における緊張の再燃を背景に、先週の初めは米国債利回りが上昇傾向となりました。これは、ホルムズ海峡を通じた貿易の正常化には、依然として時間が掛かるであろうことを改めて認識させるものでした。しかし、トランプ大統領が「停戦合意は終わった」と述べたにも拘わらず、市場参加者は敵対行為の大幅なエスカレーションの可能性には懐疑的な見方を維持しました。
この場合、重要なのは言葉ではなく実際の行動となりますが、投資家は米政権が地域的な泥沼に再び引きずり込まれることは到底望まないであろうと結論付けているようです。このような見方が足元のボラティリティの抑制に寄与しています。
結果として、市場において見られるセンチメントは、この夏はキャリーを取る戦略が賢明との見方を後押しします。そのため、新規の株式や社債発行に対する需要は今のところ堅調さを維持しており、その文脈で言えば、先週のアマゾンによる250億米ドルの大型起債は、同規模の起債としては年初来で7件目の案件となりました。
しかし、このような社債(および株式)発行額が膨大であることは、これらの市場の上値の勢いを抑制する要因となっているようです。さらに、このような資金調達ラッシュによって、市場参加者が大規模な企業の投資プログラムの有効性について徐々に懸念をし始めることは極めて自然であり、投資家はこうした野心的な行動を裏付ける収益成長の証拠を、この先求めていく可能性が高いでしょう。
当社ではこのような疑念が今後数カ月で日増しに強まっていく可能性が高いと評価しており、人工知能(AI)を取り巻くセンチメントが急転換すれば、重大なマクロ・ショックとなる可能性があるとみています。とは言いながらも、現時点ではこれが起こる兆候はほとんど見られません。
債券投資家にとって、今より重要と思われるのは、堅調なAI投資のダイナミクスによって米国のインフレ率の低下ペースは比較的緩やかになる可能性が高いということであり、結果としてFRBもタカ派的な道筋を維持する可能性が高いということでしょう。インフレ見通しをより詳細に分析すると、原油価格が下落しているにも拘わらず、精製品の供給逼迫によって、ガソリン価格がより粘着性を持って推移していることは既に確認されており、注目に値します。
一方、米国の住宅インフレは緩和が見込まれますが、AIが半導体価格を押し上げていることから、消費者物価指数(CPI)のより急速な低下を想定する市場の見方には誤りが存在していると考えています。
このような状況を踏まえれば、9月に25bpsの利上げ、その後来年の1-3月期にさらなる利上げを織り込む米短期金融市場は、将来の金利の軌道を概ね適正に織り込んでいるとみています。7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)について予想することは、困難です。
ウォーシュ議長がフォワード・ガイダンスを避けていることから、市場参加者は会合直前まで推測せざるを得ない状況に置かれるでしょう。この点で言えば、7月のFOMCでは利上げに関する議論が行われるとみていますが、多数派のコンセンサスが、この秋の利上げに傾いたとしても不思議ではないでしょう。
欧州に目を向けると、欧州中央銀行(ECB)は、7月には一旦追加利上げを避ける可能性が高いと考えていますが、9月に動くかどうかは、今後数ヶ月の経済指標によって決定されることになるでしょう。米国と欧州のイールドカーブは比較的フラットな状態であり、財政政策や政府債務の軌道に関する懸念が続いていることから、当面は長期債に重石が掛かる可能性が高いとみています。
しかし、市場が現在織り込んでいる以上に引き締めを織り込むリスクが後退するまでは、イールドカーブのスティープ化を見込んだ取引にエントリーするタイミングではないとみています。
先週はフランスの政治に再び市場が注目が集まり、国民連合(RN)のマリーヌ・ルペン氏が来年の大統領選挙への出馬を表明しました。市場では、ルペン氏がRN党首であるジョルダン・バルデラ氏よりも、極端で分断的な人物であるとの見方があります。結果として、今回の報道を受け、先週はフランス国債がアンダーパフォームしました。10年債スプレッドは82bpsまで拡大し、昨夏のスプレッドの高値である85bpsをわずかに下回る水準となりました。
日本の投資家からのフランス国債への需要がかつてと比べて減少したことや、フランスの信用力が低下し続けていることなどもあり、来年の大統領選挙に向けてフランス国債がさらに弱含む可能性があるとみています。ただし、低ボラティリティの環境下においては、利回りとスプレッドへの需要がこれを抑制する可能性もあるとみており、実際に足元で、フランス国債の対ドイツ国債スプレッドは欧州投資適格社債指数とほぼ同等の水準となっています。
英国でも、先週は再び政治的なドラマがあり、世論調査で支持率トップに立っている英国改革党(リフォームUK)党首であるナイジェル・ファラージ氏が下院議員を辞職し、補欠選挙に出直し出馬する意向を示しました。
他の政党はこれを、ファラージ氏が直面している金銭的な不正疑惑に対する批判の高まりから目をそらすための政治的スタントとみなしており、クラクトン選挙区の補欠選では、ファラージ氏と、有名な「ビンフェイス(Binface)伯爵」との一騎打ちとなる可能性が出てきました。ビンフェイス伯爵はゴミ箱の衣装を着て、政治への抗議と笑いを目的に、定期的に補欠選挙に立候補しているお笑いキャラクターです。
この点で言えば、2029年の次期総選挙後の次期首相として広く取り沙汰されているファラージ氏が、「ゴミ箱」に敗れるとすれば、それは示唆に富むものとなるでしょう。
そんな中、英国債は先週も低調なパフォーマンスとなり、引き続きある種の高ベータ市場として動いています。多くの投資家が英国債のロング・ポジションを保有してきたようであり、これは実需投資家コミュニティにおいてコンセンサスのポジションとなっているようです。したがって、これらの投資家が売り手に転じた場合、市場がさらなる弱含みに脆弱となる可能性があるでしょう。また、バーナム氏とそのチームは、政府財政がいかに脆弱な状態であるかを認識しつつあるようです。
しかしながら、当社では英国の財政規律がさらに緩むリスクがあるとの見方を維持しており、このことが英国債のパフォーマンスを抑制する可能性があるとみています。英国でポジションを増やしても良いかなと思うのは、英国の短期金利に関してであり、ここでは今後1年間でイングランド銀行(英中央銀行、BoE)による2回近い利上げが織り込まれています。
当社ではBoEが2回よりも多い利上げを行う可能性は低いと考えており、実際にはそれより少ない利上げとなるリスクがあるとみています。したがって、適切なエントリー・ポイントを見極めれば、英イールドカーブの短期ゾーンにおけるロング・ポジションの投資妙味が増す可能性があるとみています。
その他の地域では、日本の債券利回りも引き続き上昇圧力を受ける展開となりました。市場では、経済がもはやこれを正当化しないように見える中で、日銀が緩和政策の撤回においてビハインド・ザ・カーブとなっている(後手に回っている)との苛立ちが高まっているようです。
しかし、日本のインフレ動向は他国よりも抑制されており、原油価格が高値を更新するか、円が安値を更新し続けない限りは、CPIが大幅にオーバーシュートする可能性は低いように思われます。さらに、日本のイールドカーブが既に非常にスティープであることから、国内投資家が徐々に債券保有を増やそうとしている中、これが最終的に日本国債をサポートする材料になると考えています。
為替市場では、当局の介入の可能性に関して円に多くの注目が集まっていますが、決定的な政策行動はまだ取られていません。一方、バーナム氏が首相に就任することが確実視され、投資家が政治リスクを見過ごす中で、英ポンドはアウトパフォームしました。このような英ポンドの動きはやや想定外であったことから、この動きの要因を再評価する上で、英ポンドのショート・ポジションについては解消しました。
その他、エマージング市場(EM)では、米国金利の上昇がさらなる圧力となっていますが、過去数カ月間で見られたボラティリティと比較すれば、ここ最近の市場の動きは非常に穏やかなものとなっています。
この先を展望すると、中東で、より劇的なエスカレーションが見られるリスクは、今後数週間は可能性あるシナリオとして残り続けるでしょう。しかし、これが市場の売りにつながった場合には、米政権のイランへの地上軍投入に対する姿勢が突然変化しない限り(現時点では可能性は低いと思われます)、リスクを積み増す魅力的なエントリーポイントとなる可能性があると考えています。
しかし、いずれにせよ、夏場は市場の流動性が低下しますし、ボラティリティ指数が低い水準にあることから、ポジション解消や短期的な混乱が起きるのに、それほど大きな材料は必要ないかもしれません。したがって、その機会が訪れるのを忍耐強く待つことが肝要であるかもしれません。
そんな中、米連邦準備制度理事会(FRB)に関しては、来週の上院銀行委員会公聴会におけるウォーシュ議長の発言に注目が集まり、市場参加者は7月の利上げの可能性に関する手がかりを探ることになるでしょう。
来週発表される米CPIについて、コンセンサス予想では前年比4.2%から3.9%への低下が見込まれていますが、コア指数が上昇した場合、これも今月末の利上げへの確信を強める材料となる可能性があります。
現時点では、その確率は25%程度としか織り込まれていませんが、来週末に始まるFRBのブラックアウト期間の開始前には、より明確になっているはずです。
ビンフェイス伯爵についての話に戻れば、もし同氏がナイジェル・ファラージ氏を打ち負かすことが出来れば、それは今私たちが生きている政治の時代がいかに現実離れした状態であるかを思い起こさせるでしょう。確かに、過去10年間で7人目の新首相を迎えようとしている英国の政治は、既に自らジョークのネタを提供しているかのようにも思われます。
とは言いながらも、ワシントンD.C.での出来事も、ここ最近ではほぼ同様に超現実と見えることがあります。トランプ氏が引き続き言動と政治的な課題の中心にいる中で、全てが最低水準に引き下げられているように見え、政治的枠組みや国際関係、節度ある対話という規範に対して、どれほどの長期的な損害が与えられているのか、心配になってしまいます。
もっとも、皆さんの政治的信条が何であれ、誰もが一致することは、世界のサッカーを統括している国際サッカー連盟(FIFA)のリーダーシップが疑わしいことでしょう。ここでは確かに、ビンフェイス伯爵がリーダーとなれば、今よりもましな運営になるのかもしれません。
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