メッシな世界

Jul 21, 2026

慎重なスタンス

コメント要約
  • 中東情勢:明確な終結と出口が見えない中、中東における紛争は引き続き原油価格を押し上げています。
  • 米インフレ指数の下振れサプライズ:これが米連邦準備制度理事会の金融引き締め圧力を取り除くと結論付けるのは誤りであると考えますが、米連邦公開市場委員会が今月下旬の政策変更を先送りする機会を提供したことは確かでしょう。
  • ユーロ圏:基調的な経済が弱いことから、インフレリスクは米国よりも抑制されるはずですが、天然ガス価格の動きには注意が必要でしょう。
  • 英国リーダーシップの交代:シャバナ・マフムード氏が次期政権で財務相に就任する可能性がますます高まっています。同氏は財政責任を重視する人物と見られており、他の候補者よりも市場友好的な候補者と言えるでしょう。
  • 日本債券利回りの低下:片山財務大臣が、国内の年金投資家に対して国内資産への投資を増やすよう促したことを受けて、日本の債券利回りが低下しました。

先週も中東における紛争がグローバル金融市場に影を落とし続け、原油価格の上昇を受けて週初めに米国債利回りが上昇しました。米国内では地上軍の派遣にコミットすることに対して相応の抵抗がある一方で、トランプ政権はこの問題から手を引くことで、イラン政権がこの先中東地域の情勢を自由に形成し、主導することを許すことには消極的なようです。

懸念されるのは、妥協がない限り、明確な終結と出口のない戦争となるリスクがあるということであり、現時点では双方を交渉のテーブルに着かせるような目先の材料は見当たりません。

このような状況において、中東情勢とホルムズ海峡の通航は、「メッシー・ミドル(Messy Middle: 不確実で混沌とした中盤期)」に陥っているように見受けられ、紛争が断続的に激化しては鎮静化することを繰り返す可能性があります。これは原油価格が現在の水準近辺で推移し続ける可能性を示唆しており、結果としてインフレ率がより長期にわたって高止まりし続けることを意味します。

とは言いながらも、今週発表された米国の消費者物価指数(CPI)は下振れサプライズとなり、前月のエネルギー価格の下落によって政策当局者には若干の安堵感がもたらされました。しかし、今回の指標は、その数字自体を深読みするものではなく、むしろ個別の月次経済指標は引き続き高いボラティリティを伴う可能性があるということを、改めて認識させるものとして捉えるべきでしょう。

したがって、これが米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締め圧力を取り除くと結論付けるのは誤りであると考えますが、米連邦公開市場委員会(FOMC)が今月下旬の政策変更を先送りする機会を提供したことは確かでしょう。

ユーロ圏では、基調的な経済が弱いことから、インフレリスクは米国よりも抑制されるはずでしょう。しかし、天然ガス価格の高止まりは懸念材料であり、来る冬季シーズンに向けて、今後数カ月で備蓄を積み増す必要性も高まっています。

カタールの液化天然ガス(LNG)の生産・輸出が混乱したことでガス価格が上昇しており、これは欧州中央銀行(ECB)や欧州の他の中央銀行が今後数カ月にわたって注視するポイントとなるでしょう。この点で言えば、ECBは他の中央銀行よりも優れた対応をしたと考えています。つまり、早期に利上げを行ったことで、より積極的な政策対応を後に必要とする恐れのある中期的なインフレ期待の上昇を防ぐことに成功していると言えるでしょう。

このような観点から、当社では引き続き米国債と比較して欧州債を選好しています。先週は、3.12%近辺の利回り水準でドイツ10年国債のエクスポージャーを追加しました。また、米CPIの発表を受けて魅力的な水準となった米国のインフレ・スワップへのエクスポージャーも追加しました。

一方、英国では、シャバナ・マフムード氏が次期政権で財務相に就任する可能性がますます高まっています。同氏は財政責任を重視する人物と見られており、社会保障費の削減を明言していることから、他の候補者(特にエド・ミリバンド氏)よりも市場友好的な候補者と言えるでしょう。

先週の初めには、今後12カ月間でイングランド銀行(英中央銀行、BoE)による3回近い利上げが織り込まれていることを踏まえ、短期金利先物を通じて英国金利のエクスポージャーを追加しました。英国のインフレ見通しの悪化により、BoEは今後数カ月で政策引き締めを余儀なくされる可能性が高いものの、基調的な英国経済の成長の弱さから、利上げは全くないか、せいぜい1~2回の利上げに留まる可能性の方にリスクが傾いていると考えています。

他のグローバル市場の動きとは対照的に、先週は日本の債券利回りが低下しました。これは、片山財務大臣が、国内の年金投資家に対して国内資産への投資を増やすよう促したことを受けたものです。

当社がこれまで日本の国内投資家と行ってきた議論では、今年度は日本国債へのアロケーションを増やすことへの広範な支持があることが示唆されていましたが、利回りが上昇トレンドを続ける中では、そのような動きを実行に移すことに躊躇があったように思われます。しかし、そのトレンドが転換し始める局面に達したのであれば、投資待機中の資金がかなり存在する可能性があります。

日本のイールドカーブは海外市場と比較して極めてスティープであることから、今後数四半期で見て、長期債利回りに圧力を掛けることなく、政策金利の上昇を吸収する余地は十分にあると言えるでしょう。これはイールドカーブのフラット化を示唆しており、実際に先週は、日本国債利回りが低下する中、特に30年債がアウトパフォームする展開となりました。

その他の市場では、先週は中東情勢によってグローバル市場全体である種のリスクオフ的なトーンが見られました。とは言いながらも、株式市場や社債市場の動きは、過去の動きとの比較で見れば、非常に限定的なものに留まりました。

株式市場では、半導体とAIに関連したボラティリティの継続が引き続き注目を集めており、社債市場でも、新規発行額が高止まりしていることから、ハイパースケーラーの社債がアンダーパフォームを続けていることは注目に値します。しかし、それ以外では需要は堅調であり、調整局面での押し目買い意欲が継続していることもボラティリティの抑制につながっています。

それでも、当社では現在の市場環境は、クレジット・リスクをアウトライトでロングとするために十分な説得力のある状況ではないとの見方を維持しており、引き続きロング・ポジションについてはCDSのショート・ポジションでヘッジすることが賢明であると考えています。

市場の混乱や説得力のあるエントリー機会が生じた際に、選別的にエクスポージャーを追加する機会を引き続き探っています。そのような姿勢に照らして、先週は短期金利先物を通じて英国金利のエクスポージャーを追加しました。これは、他の投資家がこれまで英国債へのエクスポージャーを追加していたものの、その解消を余儀なくされ、短期ゾーンの利回りが大きく上昇した後のことです。

現在の市場環境下では、忍耐強く投資機会が訪れるのを待つことが出来れば、今後数週間から数カ月のうちに、そうした機会が訪れるとの見方を維持しています。

今年の後半を展望する

この先を展望すると、季節的に流動性が低下する時期であることから、今後数週間で地政学的・経済的ショックが広範なマクロ環境を変化させる場合には、市場のボラティリティが高まる可能性があるとみています。

過去数カ月間、グローバル市場では強欲が恐怖を凌駕していたため、コンセンサスのポジションはロング・サイドに偏っています。現時点では景気後退リスクは低く、何らかの変化がない限り、そのことが下落を抑制する助けとなるかもしれません。

しかし当社では、リスクとリターンのトレードオフを考慮すれば、当面は慎重なスタンスが有効であると考えています。これは先週のサッカーワールドカップ準決勝で1点をリードした後にイングランド代表が取ったスタンスに少し似ています。明らかに、まだまだメッシー(Messi)な世界であることに間違いはないようです!

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