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原油価格の下落を受け、債券利回りは過去1週間で低下しました。中東和平合意によってホルムズ海峡が再開されたことで、インフレ懸念が引き続き後退しています。ブレント原油は1バレル当たり70米ドルとなり、イラン紛争勃発前の水準に戻りました。物理的な供給不足に関する当初の予測は、具体的な形では顕在化しなかったようです。
結果として、インフレ連動債のブレークイーブン・インフレ率やインフレスワップは、中央銀行の物価目標と整合的な水準まで低下しています。しかし、当面の間、インフレ率は高止まりすると見られ、消費者物価指数(CPI)の低下は今後数カ月に亘って徐々にしか起こらない可能性が高いと考えます。
とは言いながらも、このようなインフレ環境の変化により、中央銀行が利上げを実施する必要性は低下する可能性があるでしょう。このような観点から、国債のイールドカーブ上では短期ゾーンがより底堅く推移すると予想され、イールドカーブのフラット化は止まる可能性があるでしょう。
米国では、人工知能(AI)ブームに関連する投資の拡大に牽引された堅調な経済により、2026年を通じてインフレ率が高止まりするとみられます。この点を踏まえれば、米連邦準備制度理事会(FRB)はタカ派的なスタンスを維持すると予想されますが、実際の利上げは控える可能性があります。
新しいFRB議長として、ケビン・ウォーシュ氏がインフレ対策において実績を残したいと考えることは理解できます。しかし、CPIがピークを付け、市場が予想するこの先のインフレ率が抑制されていることから、ウォーシュ氏には今後数回の会合でいかなる政策対応も先送りするための十分な理由があります。
この文脈において、ウォーシュ氏は実際には何も実施せずに強硬な発言を続け、その後物価圧力が緩和し始めたときに評価を得ることが出来るかもしれません。市場は10月までのFRBの利上げを織り込んでおり、年明けにはさらなる引き締めが織り込まれています。このような織り込みは、今後やや過度に見え始める可能性がありますが、今のところインフレ率が目標を大きく上回っていることは事実であり、今後数週間から数カ月に亘って政策引き締めの可能性は一定程度市場に織り込まれ続ける可能性があるでしょう。
この観点からすれば、金利の見通しは久方ぶりに改善しているように見受けられますが、米国と比較して成長見通しが大幅に弱い米国以外の市場に、より投資妙味があるとの見方を維持しています。
ユーロ圏では、欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁が「イラン戦争に対してより強力な対応をする必要はない」と述べたことが先週の債券市場の支援材料となりました。これは7月に利上げが実施される可能性が極めて低いことを示唆します。
しかし、ECBのフィリップ・レーン理事が、より持続的なインフレのオーバーシュートのリスクを指摘し、常にタカ派的なイザベル・シュナーベル理事もさらなる政策引き締めの必要性を強調していることから、市場は9月に政策金利が2.5%に引き上げられる可能性を高く織り込み続けています。
しかし、購買担当者景気指数(PMI)が軟調な経済活動を示していることから、ECBは利上げを終了した可能性があると考えており、この観点から2.75%の水準にある2年のスワップレートには引き続き投資妙味があるとみています。
ただし、財政拡張策が続く場合、長期債の見通しはそれほど明確ではないかもしれません。ドイツ30年債利回りが今年初めの水準と同水準にあることから、より大きな利益を得られる投資機会は短期および中期ゾーンにあると考えています。
英国の政策金利見通しも、インフレ懸念の後退によって改善しています。表面的には、市場は今後数カ月でイングランド銀行(英中央銀行、BoE)による1回の利上げを織り込んでおり、その後政策金利は2027年末まで4%前後で推移すると予想しています。
歴史的に見て、英国では他の経済圏と比較して物価安定の基盤が弱い傾向があるため、2022年のウクライナ戦争によるエネルギー価格ショックなどの過去の事例に基づくと、英国では他国よりも大きなインフレのオーバーシュートが起こるリスクがありました。しかし、インフレ状況が懸念されたほど悪化しない場合、高ベータ市場として英国で得られる利益は他国よりも大きくなる可能性があります。
とは言いながらも、引き続き政治的不確実性が英国債市場の見通しに影を落としており、市場は過去10年間で7人目の英国首相となるであろうアンディ・バーナム氏の就任を事実上待っている状態です。
先週は、バーナム氏が労働党内での左派と距離を置き、ウェス・ストリーティング氏を財務大臣に指名する方針であるとの示唆が、バーナム氏が首相就任後、スターマー氏とリーブス氏による政策とそれほど変わらない経済アジェンダを追求するのではないかとの期待感につながりました。
財政緩和を行う余地が限られていることを認識し、長年切望してきた地位を失うリスクを冒すことになるため、金融市場と対立することは避けたいと考えているとの主張がなされています。これは事実かもしれません。しかし、市場は現在多くを信頼に基づいて判断しており、バーナム氏の意図する政策計画について、本人の口からまだ多くを聞いていないように思われます。
結局のところ、バーナム氏がより活気ある性格とマンチェスターなまりを持つだけの、また次のスターマー氏に過ぎないのであれば、わずか数年前に英国の選挙で記録的な勝利を収めた現在のリーダーを、労働党がなぜそれほど熱心に排除しようとしているのか疑問に思います。
他の中央銀行や経済圏とは対照的に、日本では植田総裁に対して金融政策の引き締めペースを加速し、長年の超低金利政策の後、金融政策をより中立的なスタンスに戻すよう圧力が続いています。
その点で言えば、米ドルの堅調さが引き続き円相場に圧力を加えており、2026年末から秋に次回の利上げを前倒しするためにさらなる行動を取らなければ、今後数週間で円がさらに下落するリスクが高まっているように見えます。
仮にそうなった場合、その責任は主に高市首相にあると指摘したいと思います。円安は日本において極めて不人気で、同通貨のさらなる下落はインフレを悪化させ、購買力をさらに低下させるリスクがあります。
したがって、円が1米ドル170円に向かう動きは、首相の支持率にとって大きなコストとなる可能性があり、麻生氏などのキングメーカーが水面下で動いているも踏まえ、高市首相がこれを許すわけにはいかないということを認識していることを願います。
日本国債に関しては、引き続き超長期債に対して建設的な見方を持っています。非常にフラットな他の国債のイールドカーブとは異なり、日本のカーブは非常にスティープです。30年国債利回りが3.75%を超える水準にあることから、日本の超長期債利回りは十分なプロテクションを提供していると考えています。
為替市場をより広範に見渡すと、強い経済指標や米連邦公開市場委員会(FOMC)がややタカ派寄りにシフトしたとの見方などから、米ドルが堅調に推移してきました。しかし、FRB織り込みがピークアウトする可能性があることから、米ドルは今後数週間で勢いを失う可能性があると考えています。米ドルのディベースメント取引については常に懐疑的でしたが、米政権が米ドルのさらなる上昇軌道を求めているとは考えていません。
資産配分における中期的なシフトは、米ドル安トレンドの再開につながる可能性があります。多くの大規模投資家は、米国の政策不確実性の高まりや米国株の高いバリュエーションを背景に、戦略的観点から米国資産への投資が過度になっていると述べています。
一方、エマージング市場(EM)では、コロンビア大統領選挙での右派候補デラエスプリエジャ氏の勝利が、中南米資産全体のセンチメント向上につながっており、モンロー主義と西半球の地域的文脈における米国の役割拡大に再び注目が集まっています。
米国金利と米ドルの上昇が今後数週間で横ばいになれば、ここ最近利回りに上昇圧力がかかっているブラジルなどの債券市場にとって、より好ましい市場環境が生まれる可能性があります。
社債市場では、株式の堅調さと原油価格の低下がスプレッド資産への需要の継続につながっています。しかし、引き続き新規発行が活発であることから、現時点でスプレッドをさらにタイト化させる明確な材料は見当たりません。
直近の新規株式公開(IPO)を受けて、スペースXは社債市場で発行を行い、大手格付け機関フィッチは多くの財務指標を提供出来ないにもかかわらずBBB+格付けを付与しました。発行当初の興奮と需要にもかかわらず、同社の長期債スプレッドは約15bps拡大しており、投資家は、赤字企業が収益性に道筋をつけるための資金調達として、今後さらに多くの社債発行が行われる可能性があると結論付けたようです。
より広範に言えば、中東和平合意と原油価格の下落により、欧州全体の景気縮小を招き、スプレッドに大きな拡大圧力となる可能性のあった悪いシナリオは、ここ数週間で大幅に後退したように見受けられます。
さらに、より多くの運用会社がCLOプラットフォームの立ち上げを急いでおり、この発行が「BB」および「B」格付けの銀行ローンに対する非常に強い需要の継続につながっており、これが欧州社債市場全体をより広くサポートしています。
したがって、現時点でスプレッドがさらに縮小する余地は限られていると見ているものの、スプレッドを大幅にワイド化させる明確な材料も見当たらず、このような状況を踏まえ、ポートフォリオにおけるクレジットのヘッジ・ポジションの規模を縮小することが適切であると判断しました。
先週は、インフレ期待の急激な低下により、米国および欧州のインフレ連動債とスワップのポジションがアンダーパフォームしました。経済見通しが弱く、ECBがより予防的に対応していることから、ユーロ圏ではインフレ目標への回帰が米国よりも早くなる可能性が高いと予想し、ユーロにおいてはインフレのポジションを削減しました。
ウォーシュ氏がインフレに関しては「小数点の左側の大きな数字」を気にかけていることから、FOMCはコア個人消費支出(PCE)を現在の3.4%から2.5%に近い水準まで引き下げたいと考えていることみています。しかし、この水準でも、CPIで見たインフレ率は3%近くになります。
米国経済が堅調で、AIがインフラ構築競争において物価圧力を高めていることから、米国のインフレは低下したとしても緩やかなペースに留まるとみており、この点でインフレ・スワップは極めて魅力的なキャリーを提供していると考えています。現在のインフレ率は、インフレ・スワップに織り込まれた水準の2.3%をほぼ200bps上回っています。
過去数日間で、米国金利のショート・ポジションを手仕舞い、クレジットのヘッジ・ポジションも削減しています。また、ハンガリーの短期金利の取引も、金利が大きく低下したことにより利益を実現しました。足元では、ハンガリーの長期債に投資妙味を見出しています。EUがハンガリーを欧州の他の地域に引き寄せようと熱心であることから、時間の経過とともにドイツ国債利回りへの更なる収束の余地があると考えています。
またアイスランドでも、8月末の国民投票で、停滞していたEU加盟交渉の再開に有権者が合意すれば、将来的なEUへのコンバージェンス(収束)に向けた動きを期待しています。世論調査では、同国民投票の予想はかなり拮抗していますが、肯定的な結果となり、アイスランドが最終的にユーロ加盟に合意をした場合、同国長期債利回りに大きな追い風となる可能性があるとみています。
今年の後半を展望すると、過去数カ月間はマクロ投資の観点から困難な時期であったと認識しています。4-6月期には、マクロ経済環境が持続的なインフレショックの証拠によって特徴付けられることを予想し(したがってインフレ連動債とスワップでポジションを取り)、また欧州は高インフレや金融引き締め、サプライチェーンの混乱を受けて、景気後退リスクの高まりに晒されるとの見方を有していました。これらのトレンドは実際には予想していたようには展開せず、ポジションの見直しと再評価が必要になりました。
とは言いながらも、米国のインフレ持続性や、米国債に対する欧州債の相対的なアウトパフォーマンス、日本のイールドカーブの長期ゾーンのフラット化については引き続き高い確信を持っています。多くのEM現地市場にも投資機会があるとみており、米ドル高と米国債利回り上昇のトレンドが弱まり始めれば、EM市場はより良いパフォーマンスを示すことが出来ると考えています。
社債市場では相対価値に基づくアプローチを採用し、現時点では為替リスクは控えめとしているものの、世界的および地政学的な混乱とボラティリティが続くことで、今後数週間から数カ月に亘って積極的なポジション構築の機会が確実に提供されると考えています。
そんな中、欧州が熱波と記録的な気温上昇に見舞われている中、過去1週間、国内外で真っ赤な顔をした多くの英国人を目にしたことは印象的でした。後知恵とは素晴らしいものであり、ある種の後悔の念を持って振り返ることは簡単ですが、人生には常に多くの学習経験があります。
最も重要なことは、そこから教訓を得て、今後同じような苦痛なポジションに自らを置かないようにすることです。2026年前半は決して簡単ではありませんでしたが、試合が前半の45分で決まることは滅多にないことは、サッカーファンなら誰でも口を揃えて言うことでしょう。後半の力強いパフォーマンスに期待を込めて……
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