明確なプランはない?

Aug 03, 2026

ウォーシュ議長は口先だけで行動が伴っていないのでは…?!

コメント要約
  • FRBの政策が混乱を招く:ウォーシュ議長は先週インフレに対して強硬な姿勢を示したものの、金利据え置きの正当な理由を示すことができず、米国の債務水準が記録的高水準にある時にFRBは信頼を失うリスクに直面しています。
  • 欧州の政策明確性:ECBは9月の利上げを見据えた明確なフォワードガイダンスを維持しており、FRBのコミュニケーションのアプローチとは対照的となっています。
  • 英国の政治的移行:バーナム首相は就任以来、短期的なメディアのハネムーン期間を享受しているものの、試練の時が迫る中で、英ポンドはやや軟調に推移しています。
  • 日本の政策遅延:日銀は熊本地震を受けて決定的な行動を延期したものの、最終的には米ドル円相場を安定させ、円安を抑制するため、金融引き締めを加速させる必要があると考えています。
  • マクロ見通しは不透明:エネルギー価格とAIコストにより、インフレリスクは下方よりも上方に傾いている一方、ウォーシュ氏の「余裕のある人物」との印象を与えたいという考えに基づくアプローチは市場を不安定化させるリスクがあります。

先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利は据え置かれたものの、3名の委員が利上げを求めて反対票を投じました。この結果は金融市場参加者にとってさほど驚きではなく、政策発表直後の市場は当初小動きでした。

しかし、その後の記者会見で、米連邦準備制度理事会(FRB)のケビン・ウォーシュ議長が冴えておらず、米国債のイールドカーブはツイスト・スティープすることになりました。ウォーシュ議長はインフレに対してタカ派な姿勢を示そうとしましたが、経済成長が説明通りに力強く、インフレが断固として対処すべき問題であるならば、なぜFRBが今回の会合で利上げをしなかったのかという点で明確な説明を欠いていました。

実際、債券利回りの上昇がFRBの金融引き締めの役割を代替していると示唆したことで、断固たるリーダーシップがない中で、インフレを引き下げる明確な計画がなく、責任を放棄しているとの印象を与えました。

金融政策についてのフォワードガイダンスをなくすことで、市場がFRBへの信頼を失うリスクが高まる可能性があることをウォーシュ議長が学ぶことになるかもしれないと考えています。この点で言えば、過去のFRB議長の下でのフォワードガイダンスがあった時期には、FRBは高い信頼を得ていたと思います。しかし、情報が乏しい状況では、疑念が高まり、FRBへの信頼が低下し始める可能性があると思います。

もちろん、ウォーシュ議長は、前議長の下では、インフレが過去64ヶ月間目標を上回っていたことを指摘し、最も重要なことはFRBが責務を果たし、その結果でのみ判断されるべきだ、と反論するかもしれません。この点について言えば、実体経済の結果は、移り気な金融市場参加者のニーズに迎合することよりも重要でしょう。

しかし、米国の債務水準が記録的な状況にあり、警戒すべき速度で増加し続けている時に、市場の反応に対して自由放任主義の度が過ぎれば、市場の信任が突然失われた場合に、高いリスクを持つアプローチになり得ると思います。

そうは言っても、米国の長期金利が20年ぶりの高水準にあるにもかかわらず、そのような弱気になってしまう状況からはまだ程遠いと思います。さらに、FOMCが9月の次回会合で25bpの利上げを行う可能性が非常に高いということに変わりはないと考えています。

先月の穏やかなインフレ指標の後に原油価格は上昇しており、今後数ヶ月は物価データの再加速が見られる可能性が高く、9月までには、政策金利を引き上げる決定が全会一致で行われる可能性があると思います。

しかしながら、フォワードガイダンスがないという事実からは、ハト派なメンバーが据え置きを望み、不満を持つタカ派は50bpの利上げに賛成して、これに反対する可能性もあるといった憶測も残すことになるかもしれません。

現時点では、米国債の見通しについて確たるものを持っていません。リスクは双方向に非常に大きいように思っています。しかし、引き続きインフレ連動債とインフレ・スワップには投資価値があることを強調したいと思います。米国の実際のインフレ率は、金融市場で織り込まれているよりも長期間高止まりする可能性が高いという見方を持っているからです。

最近の中東情勢は、ホルムズ海峡を通じた貿易が継続的に混乱することを示唆しており、石油製品に関しては、原油価格が下落したとしても、クラックスプレッド(原油とガソリンなどの石油製品との価格差)の急速な縮小は見られず、エネルギー価格は高止まりしたままになると考えています。

AIゴールドラッシュも物価を押し上げ続けており、半導体メーカーの利益と利益率の急上昇がそれを示しているように思います。こうした要因は時間が経てば緩和される可能性はありますが、予見可能な将来において、インフレリスクは下方よりも上方に傾いていると言えるでしょう。

この点については、FRB議長が物価安定を取り戻すとの約束を実現するために、実際にできることはほとんどないかもしれず、今後数ヶ月間、物価の安定に具体的な進展を示せなければ、ウォーシュ議長の信任にさらに悪影響を与える可能性があると思います。

この1週間の欧州金利の変動は米国よりも小さく、経験豊富で信任を得ている中央銀行家であるクリスティーヌ・ラガルドECB総裁の先日の記者会見でのパフォーマンスと、謙虚さや中身に欠け、傲慢さばかりが目立ったウォーシュ議長のパフォーマンスを対比させたくなってしまいます。

ユーロ圏では、フォワードガイダンスは非常に明確で、ECB は9月に利上げをすると予想されています。足元の天然ガスのTTF先物価格は2月末以前の2倍になっていますが、中東での和平合意がない限り、さらなる上昇するリスクがあると見込んでいます。

このような状況では、9月が現サイクルにおける最後の利上げになると断言することは難しく、すでに2回以上の追加利上げが織り込まれていますが、当社も市場コンセンサスとそれほど乖離しない見方になっています。

英中銀も先週、政策金利を据え置きましたが、利上げを求めて反対票を投じた委員は2名から3名に増えました。金融政策決定会合(MPC)委員の大半は引き続き利上げを見送り、中東情勢が緩和することを期待しています。ホルムズ海峡が事実上閉鎖され、持続可能な停戦がなく、小規模の紛争が続くという現状が維持された場合、英国では確実にもっと高い政策金利が必要になるのは明白だと考えています。

悪いシナリオでは、10月もエネルギー価格が上昇して、インフレ率が5%に向けて上昇する可能性があり、英国経済が低迷し、住宅価格が下落圧力下にあると当社では見ているものの、CPIが高い水準にあればベイリー総裁と委員たちは対応を余儀なくされるだろう、と考えています。

それでも、英国の金融政策はユーロ圏よりも制限的な水準であることから、先物金利市場ですでに2回から3回の利上げが織り込まれていることを考慮すると、引き続き短期の英国金利先物には投資価値があると見ています。

一方で長期の英国国債については慎重に見ており、バーナム新首相が財政支出を増やしたいと強く望んでいるタイミングで、高いインフレと借入コストが英国の財政収支に与える影響について引き続き懸念しています。

また、英ポンドについても慎重な見方を続けており、バーナム首相が就任して以来、英ポンドはやや軟調に推移しています。メディアでは新しいリーダーに対してハネムーン期間がありますが、非常な困難に直面する時がすぐに訪れると考えています。

日本では、先日の熊本地震が日銀会合に多少影響をしたように思います。財務省による為替介入により、米ドル円の水準は引き下げられましたが、日銀の政策会合でのハト派的な金融政策のスタンス継続の舞台を設定しただけに終わったように思います。

高市政権の政策目標は紛れもなくリフレ的ですが、日銀が米ドル円の方向をある程度コントロールしたいのであれば、最終的には、金融引き締めのペースを加速させ、政策金利の到達点を意識することを余儀なくされると考えています。

しかし、国内債への投資が増え始めているように見えることは注目に値し、我々は引き続き30年国債利回りが4%付近でサポートされると見ており、10年債と30年債の国債利回りスプレッドに前向きな見方を維持しています。

クレジット債市場では、この1週間でスプレッドが拡大傾向にあり、AI投資計画に関する懸念によって促されている部分もあると考えています。ハイパースケーラーのスプレッドは、株価の再評価とともに大きな圧力を受け続けています。

中東での紛争の再燃もセンチメントに影響を与えており、絶対利回りの上昇により、利回り目的の購入を引き付けているものの、市場環境は数ヶ月ぶりに明らかに軟化しているように見えます。

また、グローバル債券市場は、ここ数ヶ月、社債と国債の供給であふれかえっており、将来予想される発行量も引き続き上方修正されています。

流動性が豊富な時は、この発行増加分を需要で吸収することは問題ないように思いますし、比較的緩和的な金融環境という状況では、実際にその通りでした。

しかし、インフレ率を下げるために金融政策を引き締める必要があるならば、この引き締めは自然に金融環境の引き締めにも繋がり、その過程で流動性の蛇口が絞られることになります。  

この場合、流動性の低下が進む中で、大きな供給が続く可能性があり、この結果、スプレッドの拡大と、脆弱なクレジットを持つ発行体が完全に市場から締め出される可能性があります。今は、景気後退リスクと高いデフォルトサイクルについて心配する状況には程遠いものの、今後数ヶ月間で、スプレッドが縮小するよりも拡大する方向に圧力が強まる可能性があります。

今後の見通し

今後を見据えると、ウォーシュ議長がフォワードガイダンスを放棄することに関して、市場がその決意を試すことになるかどうか、そしてFRBの信任が問われているような場面で、FRB内の反対意見が増え始めるかどうかを見ることは興味深いと思います。FRB関係者は、ウォーシュ議長の多くの考えと原則が主流派の考えから乖離していることを指摘しています。

それがFRBのバランスシートに関するものであれ、市場とのコミュニケーションやフォワードガイダンスへのアプローチに関するものであれ、ウォーシュ議長は大胆でありたいと思っており、自分の信念は簡単には曲げないであろうという印象はあります。しかし、批判が高まり始めた場合、どのように対応し始めるかは示唆的かもしれません。

ウォーシュ議長は自分を正当化する必要はないという、余裕のある人物との印象を与えたいと考えてきたように思います。しかし、市場が揺らぎ始めれば、思惑通りに現実は行かない可能性があります。

グローバル金融市場の安定はFRBによって支えられているため、ウォーシュ議長が正しい判断を下し、ウォーシュ議長が計画を持った人物であり、FRBを縮小して市場に全てを委ねることに満足する人物ではないという信頼を植え付けることが重要になると思います。

この点で、歴史からの教訓は、市場に全てを委ねるということは信頼できないということです。実際、これは最近数週間の韓国といった市場で例示されているように思います。レバレッジの急激な巻き戻しにより、過熱した株式市場での投機的取引で、韓国の成人の30人に1人という信じられない数で追証が発生しました。韓国市場は最近、合理的に機能する市場というよりも、まるでカジノになっているように思います。

利益成長率が2桁台をしっかり維持している時に、株式市場が40%以上下落した時を思い出すのは難しいことです。しかし、レバレッジが巻き戻される中での最近の暴落にもかかわらず、韓国総合株価指数(KOSPI)は依然として年初来で30%程度上昇しており、過去1年間では2倍になっています。

しかし、ここでのポイントは、政策の重要性です。規制が不十分であれば、金融市場の基盤への信頼を損なう可能性があり、信頼が低下すれば、すぐには回復しないように思います。これは、過去の政策当局者が長年にわたって学ぶ必要があった教訓であり、時には自身の個人的なコストを伴うこともあったように思います。

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