インフレ圧力?

May 18, 2026

傷ついた英国よ...落ち着いて、持ちこたえよう!  

コメント要約
  • 米国インフレの粘り強さ:米消費者物価指数(CPI)は60ヶ月以上にわたり、米連邦準備制度理事会(FRB)の2%目標を上回って推移しています。ここ最近の経済指標において物価圧力はより広範囲に広がっていることを示しています。
  • 中東エネルギー危機:備蓄が枯渇していく中での、エネルギー価格の上振れリスクを警戒しています。紛争の終わりが明確に見えるまで、確信を持ってインフレの天井を見定めることは難しいでしょう。
  • ウォーシュ氏率いるFRBFRBは物価に対して楽観的な見通しを維持するとみており、利上げのハードルは依然として非常に高いと考えています。
  • 日本国債:先週の日本国内の機関投資家との面談では、多くが国内債への配分を増やしている印象を受けました。
  • 英国政治の混乱:スターマー首相は多数の閣僚辞任に直面し、リーダーシップの不確実性や市場の脆弱性を背景に、国債利回りは30年ぶりの高水準に達しました。

グローバル債券利回りは先週も上昇を続けました。インフレ圧力の高まりが投資家センチメントの重石となっています。米財務省は先週、2007年以来初めて、クーポンレート5%で30年債を発行しました。米消費者物価指数(CPI)は60ヶ月以上にわたり、米連邦準備制度理事会(FRB)の2%目標を上回って推移しています。  

短期的には、中東での紛争勃発をきっかけとしたエネルギー価格の上昇が、物価上昇圧力を加速させる要因となっています。しかし、これだけでは先月の米生産者物価指数(PPI)投入価格が4.0%から6.0%に跳ね上がったことを完全には説明することは出来ません。

加えて、先週のCPIにおいては、財とサービスのインフレが、より広範囲に広がっていることが示され、来月の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合では、FRB自身の物価軌道に関する比較的穏やかな想定が見直される可能性があるとみています。

多くの米国のエコノミストは、インフレ動向が平均回帰し、目標水準に戻ることを長きに亘って想定してきました。確かに、中東に起因するサプライチェーンの混乱が終わりを迎えれば、1年後の原油価格は現在の水準よりも低い可能性があり、より良好な環境を生み出す要因となるかも知れません。

しかし、インフレが目標から乖離し続ける期間が長くなればなるほど、より高い水準のインフレが物価期待に組み込まれるようになることも認識する必要があるでしょう。その結果、労働者は実質所得が損なわれないよう、より高い賃金を求めるようになるでしょう。雇用主が抵抗する場合もありますが、労働市場がより悪い方向へと向かわない限りは、労働者の要求が鈍化することはないとみています。

さらに、米国の経済成長は、当面の間、テクノロジー分野の急速な事業投資によって支えられ続けるでしょう。また、低賃金労働を担っていた移民の不在を受け、雇用主が職を埋めるために給与を上げざるを得ない可能性についても強調したいと思います。明確なデータはないものの、庭師や保育士、家事清掃サービスなどの業界において、この傾向が見られることは事実のようです。

ある専門家の間で、インフレ懸念に対抗するために提唱されている見方の一つとして、人工知能(AI)が今後の数四半期にわたって生産性向上をもたらし、これが価格押し下げにつながるとの見方が挙げられます。しかし、短期的には、データセンターの建設やキャパシティ追加に対する熱狂が、実際には供給不足を生み出しており、これが物価に上昇圧力をもたらす可能性もありそうです。

加えて、生産性が伸び、投資が拡大している期間においては、事業投資がより緩やかな期間と比較して、金利がより高い水準にあるべきと主張することも可能でしょう。別の見方をすれば、長期停滞論は、貯蓄額が投資額を上回っている期間に、インフレと金利が長きに亘って低位に留まることであり、これは過去10年間、とりわけベビーブーマー世代が退職に向けて貯蓄を続け、企業の投資支出がより抑制されていた時代に多く聞かれた見解でした。

しかし、私たちは今、退職者が貯蓄を取り崩すとともに、投資支出が加速している時代に突入しており、これまでとは正反対の結果を生む可能性があります。その文脈において、この集約的な投資の最中に、インフレと金利が今後数年間に亘ってより高い水準に留まったとしても、驚くべきことではないかも知れません。

最終的には、AIによる効率性の向上が賃金の伸びを抑圧し、よりディスインフレ的な圧力となる可能性はあるものの、それは短期的というよりも長期的な目線でみた場合でしょう。この点に関して、経済指標においては、このような効果はまだ全く明白ではないと言えます。

インフレは高止まりしているものの、ウォーシュ氏率いるFRBは、物価に対して楽観的な見通しを維持するとみています。その点で言えば、金融環境指数は極めて緩和的な水準にあるように見受けられるものの、利上げのハードルは依然として非常に高いと考えています。

米国の総合CPIは今後数ヶ月で4.5%に達すると予想していますが、この先のエネルギー価格の正常化や今後数ヶ月でのサプライチェーン圧力の緩和によって、政策面で行動を起こす必要性が緩和されるであろうとの期待感の下、FOMCは当面の間は、(物価圧力が)「一時的である」との見方を採用するとみています。もちろん、中東危機が長期化した場合には、この前提が見直される可能性があります。

現時点では、ほぼ全てのコメンテーターが和平合意が間もなく成立することを想定しているようであり、また金融市場が少しでも下落すれば、特定のニュースサイトが合意は間もなくであることを示唆するストーリーを流しているかのようにも見え、現時点ではそのような見方に目立った異議は唱えられていません。しかし、週が経過するにつれて、イラン側が行使しているレバレッジが増し続けているようであり、トランプ政権は出口を見出すことにますます躍起になっているようです。

こうしたことから、米国側が最終的に譲歩するように見えますが、双方に大きな隔たりがあるままでは、現状の膠着状態に早急な解決策を期待することは過度に楽観的と言えるかも知れません。したがって、我々は引き続き、備蓄が枯渇していく中での、エネルギー価格の上振れリスクを警戒しています。紛争の終わりが明確に見えるまで、確信を持ってインフレの天井を見定めることは難しいでしょう。

このような見方を踏まえ、足元では引き続きインフレ連動債を選好しています。一方で、ドイツ国債や米国債の方向性や、イールドカーブの形状については、特段強い見解を有していません。対照的に、日本では、インフレのオーバーシュートが比較的抑制される可能性が高いとみており、イールドカーブが極めてスティープ(急勾配)であることから、日本国債利回りに対してはより前向きな見方を選好しています。

日本国内の機関投資家との面談では、多くが国内債への配分を増やしている印象を受けており、日本の超長期国債の利回りが米ドルヘッジベースで見ると7%近くになっていることから、その割安感を指摘する声も多くなっているようです。これらの投資家は、資産配分を数ヶ月間に亘って分散する、より堅実なアプローチを示唆しており、短期的には、グローバルの利回り上昇が債券を積み増す意欲を削いでしまうリスクはあるでしょう。

しかし、日本の年金基金が国内債への投資でそのリターン要件を満たすことが出来るという現状を踏まえると、構造的にアンダーウェイトをしてきた投資家層からの需要が、今後数ヶ月間で市場の下支えとなる可能性はあるとみています。

そんな中英国では、先週も再び政治的動向に覆われる一週間となり、キア・スターマー首相はまさに危機的状況に陥っています。首相への信頼喪失を理由に挙げた多数の閣僚辞任は、彼の退陣時期に関する発表が差し迫っている可能性を示唆しています。

しかし、アンディ・バーナム氏が労働党内で支持されている主要な後継者として浮上している中、現マンチェスター市長の同氏がまだ下院の議席を確保していないことから、迅速な移行は難しくなる可能性があります。

実際、最近の選挙結果を踏まえれば、バーナム氏が補欠選挙で労働党候補として勝利することは確実視出来るものではなく、同氏の辞任はマンチェスターの市長職を英国改革党(リフォームUK)に譲り渡すことになる可能性も十分にあります(ただし、一部が示唆しているように、元サッカー選手であるギャリー・ネヴィル氏が労働党の候補として立候補することになれば、そのリスクは軽減される可能性があるでしょう)。

とは言いながらも、スターマー氏の首相としての日数が限られていることは事実であると見られ、結果として英国資産及び英ポンドは、より長い期間に亘って政治的なリスク・プレミアムの上乗せ対象となる可能性があるでしょう。

このような状況を踏まえ、我々は英ポンドのショート・ポジションを積み増しました。経済見通しが低迷する中で通貨が上昇することは難しいとの見方に基づき、英ポンドの見通しは極めて非対称であるとみています。

今後の見通し

この先を見据えると、トランプ氏と習近平氏の米中首脳会談も終了し、米大統領の次の大きなイベントとしては、7月4日の米独立記念日で、今年は米国が独立宣言から250年を迎えることを記念することになります。コメンテーターは、トランプ氏がこの250周年の祝典に間に合うよう、中東の紛争を終わらせることを確実にしたいであろうと指摘しています。

ワシントンDCの一部関係者は、トランプ氏の支持率が今では21%という低水準にあることからも、彼にとって失うものはほとんど無いということを指摘しながら、今後1、2週間で、最後の(絶望的な)軍事エスカレーションの可能性を示唆しています。実際、米共和党にとって中期選挙を巡る見通しは悪化し続けており、上院レースはまさに接戦となっています。

実際、この夏場にトランプ氏にとって形勢がさらに悪化した場合、米民主党が60議席を獲得し、2027年にトランプ氏弾劾の手続きに入るという、にわかには信じがたいシナリオについての議論さえも始まる可能性があるでしょう。

しかし、マクロ経済や政治的環境における課題にも拘わらず、米国株は邪魔されることなく上昇を続けています。消費者と企業がバランスシートを活用し、S&P500 種指数のモメンタムがさらなる上昇を促しています。ウォーシュ氏率いるFRBがこの価格動向に逆らう可能性は低いことから、バリュエーションが過度に伸張しているように見えたとしても、このような動きは当面の間は続く可能性があるでしょう。

多くの観点から、適当な米経済のリセッションのみが、根強い「押し目買い」のマインドセットを抑制する力を持っているとさえも思ってしまいます。しかし、先週見られたように、米国やテクノロジーの熱狂から距離のある資産に関しては、このような価格動向を維持することは難しいと懐疑的な見方でいます。特に社債市場では、スプレッドがさらに縮小することは難しいとみており、さらに今後数週間から数ヶ月は、経済関連のニュースフローを取り巻く環境は困難になる可能性があります。

政治に関して言えば、米政権内部の関係者からの話に基づけば、米国の政治状況はますます混沌としているようです。しかし、ホワイトハウス(米政権)がカオス状態であるとすれば、ウェストミンスター(英政権)はまさに大混乱の状態であり、国がより左寄りに旋回するであろう英労働党党首選挙は、英国債市場を取り巻くセンチメントが悪化し、利回りが30年振りの高水準を付けている、まさに最悪のタイミングで実施されることになります。

投資家がバーナム氏のような候補者をひとまず肯定的に受け止めるかどうかは疑問で、まずは売却し、後で考えることを好むでしょう。結果として、英国では市場危機の再発リスクと、レタスより短い在任期間の首相の再来(ここ最近のチェルシーの監督も例外ではありませんが!)リスクがあるでしょう。

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