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個人投資家の強気なセンチメントが先週も米国株を最高値に押し上げました。人工知能(AI)やテクノロジー全般を取り巻く熱狂は、衰える兆しをほとんど見せていません。とりわけ半導体株はここ最近、飽くなき需要を集めており、マイクロン・テクノロジーやSKハイニックスといった企業の株価は、過去12ヶ月間でそれぞれ770%及び970%上昇しています。
今のところ、バリュエーションといった概念は意味を失っているように見受けられ、この点に関して言えば、今後予定されているスペースXの新規株式公開(IPO)を巡っても、既に期待が高まっています。直近四半期に40億米ドルの損失を出した企業でありながら、想定時価評価額が1兆7,500億米ドルであることは、株価収益率(PER)のような概念を完全に無意味なものとしています。
究極的には、個人投資家は長期的なことを考えるよりも短期的な価格パフォーマンスに関心を持っているように見受けられます。これが投資家の行動に投機的性質をもたらしているため、何かが上手く行かなくなった場合に混乱とボラティリティが高まる状況にあると言えるでしょう。「噂で買って、事実で売る」という行動が賢明だったかどうかは、今回の上場が実現し、時間が経過するにつれて明らかになるでしょう。
とは言いながらも、投資家心理を軌道修正するには、極端な何かが起こる必要があるように見えます。今のところは、強欲とFOMO(取り残される恐怖)が市場を動かす強力な感情となっているためです。
現在広がっている投資家の強気なセンチメントと、これとは対照的に、主要先進国の大半で見られる、企業や消費者のセンチメントの弱さは興味深い対比です。価格上昇はバランスシートに圧力をかけ、需要を抑制するリスクを孕みます。
さらに、ホルムズ海峡の再開に向けた協議においては、ある程度の進展が見られるものの、サプライチェーンへの影響は、今後数ヶ月、あるいは数四半期に亘って続くとみています。建設的なシナリオであっても、2026年の残りの期間中にエネルギー価格が大幅に低下することは想定しづらいと考えています。
したがって、市場はインフレ・リスクについて過度に楽観的であると考えています。例えば米5年インフレ・スワップはわずか2.6%程度で取引されていますが、これは米連邦準備制度理事会(FRB)がコアPCEインフレの目標である2%を継続的に達成している場合に想定する水準をわずかに上回るだけのものです。
また、当社では引き続き、社債スプレッドが、今後起こり得る下振れリスクに対するプロテクションをほとんど提供していないと考えています。基本シナリオとしては、欧州の低成長の環境を背景として、スプレッドが横ばいで推移することを予想しています。しかし、成長の鈍化が本格的なリセッションとなった場合、リスク・シナリオとして、スプレッドが大幅に拡大する方向に偏っているとみています。
米国においてはリセッションのリスクははるかに低く、これは相対的に米国の社債スプレッドの支援材料となる可能性があります。しかし、ハイパースケーラーなどによる膨大な新規発行は、今後の更なるスプレッド縮小に対する強い向かい風となるでしょう。それでも先週は、中東和平協議への期待が高まり、国債利回りが最近の高水準から低下に向かったことで、スプレッドが縮小しました。
金融政策に話を戻すと、当社では欧州中央銀行(ECB)と日銀が来月ともに利上げを実施し、FRBとイングランド銀行(英中央銀行、BoE)は政策を据え置くと予想しています。ECBの6月利上げはしばらく前から既定路線のように見えていますが、理事会はこれが一連の利上げの始まりであると伝えることを避ける可能性があるようです。
軟調な成長見通しを背景として、ユーロ圏の政策当局者の一部からは、ECBの利上げが「一度きり」となる可能性を指摘する声が挙がっています。つまり、9月の追加利上げの可能性は残るものの、決して保証されているわけではないということです。日本では、日銀の植田総裁が今後の金融政策正常化の道筋について述べることが予想されています。6月に政策金利を1%に引き上げた後、年末にさらに25bpsの追加利上げが実施されるとみられています。
米国では、数ヶ月前にFRB議長職の候補として挙げられていた際、低金利を主張していたウォラー氏が、FRBの金利に対して中立的なバイアスを示したことは興味深く受け止めました。確かに、株式市場の熱狂的なセンチメントは、金融の安定性ということを考えれば、金融政策を景気抑制的にするとの議論につながっても不思議ではありません。
FRBは、株価の力強い上昇が過度なモメンタムを形成することを警戒するでしょう。最終的な調整が不釣り合いに、より痛みを伴うものになる可能性があることを恐れているためです。とは言いながらも、米国において利上げに関する議論は秋より前にはなされないと見られ、またその時点で、インフレ指標が想定を上回り続けた場合においてのみ、議論がなされるとみています。
英国に目を向けると、英国債市場はボラティリティの観点から比較的ベータ値の高い市場となっており、利回りの変動が英国の財政状況に、大きく影響することを反映しています。過去1週間で見るとグローバルに利回りが低下する中で、英国債利回りもアウトパフォームしましたが、引き続き、この先を見据えれば暗雲が立ち込めているとみています。
コスト圧力が実際の経済指標に反映されるにつれ、英国の消費者物価指数(CPI)は夏場に4.5%を超えるとの予想を維持しています。BoEは、資金需要が既に縮小しているタイミングで利上げをなるべくしないよう最善を尽くすかもしれません。しかし、9月に夏休みから学校が再開する頃には、利上げが避けがたいものとなっている可能性があります。
一方、それまでには次期英首相の人選も決まっているはずでしょう(キア・スターマー氏の首相としての残りの日数が少なくなっているという前提に基づいて)。現段階ではアンディ・バーナム氏が有力な候補者とされていますが、同氏がまず勝たなければならないメイカーフィールドの補欠選挙の世論調査においては、英国改革党(リフォームUK)と依然として非常に接戦となっていることが示されており、当選へのハードルは上がっています。
もしバーナム氏が首相に就任した場合には、金融市場から試される可能性が高いと考えており、当面は英国から距離を置いたポジションを選好します。またこのシナリオでは、通貨が潜在的に脆弱となる可能性があるとみて、英ポンドのショート・ポジションを維持しています。しかし、今のところ、英ポンドは他のほとんどの通貨とともに、過去1週間に亘ってほぼレンジ内で取引されています。
その他の通貨では、引き続き円に投資妙味を見出しており、日本の当局が対米ドルで160円という水準を守るというコミットメントを維持するとみています。
欧州の他の地域では、今年の総選挙で親EU派の結果となって以来、ハンガリー資産がアウトパフォームし続けています。ユーロ導入交渉が加速する見通しや、(ユーロ金利との)コンバージェンス・トレードは、引き続き現地金利の追い風となっており、より前向きな見方を維持している市場です。
また、コロンビアやブラジルの現地金利市場に関しても前向きな見方を維持しているものの、これらの市場は過去1ヶ月間、政治的ボラティリティに苦しんでいます。とは言いながらも、今週末に予定されているコロンビア大統領選の第一回投票において、中道右派もしくは右派候補のいずれかが善戦すれば、コロンビア資産のパフォーマンスの力強い回復が期待出来るとみています。
広範に言えば、現時点では社債スプレッドよりも通貨や金利の方が、より魅力的なキャリーの源泉であると捉えています。スプレッドが非常に順調に縮小を続けていることにある程度のフラストレーションはあるものの、基調的な経済環境は年初の時点とは大きく異なることを引き続き強調したいと思います。
欧州がリセッションに近づいている中で、これは今後数ヶ月間の信用力の悪化やデフォルト率の上昇を示唆しており、現時点からスプレッドがさらに縮小することを正当化する環境ではないと考えています。
今後を見据えると、経済指標や中央銀行、AIラリー、地政学的イベントのうち、どれが今後数週間の市場の主なドライバーとなるのかを見極めることは困難です。しかし明らかなのは、ロングを追加したのか、もしくはショートを解消したのか、いずれかの取引で過去数週間に投資資金が市場に吸い込まれるかのように注入されていますが、その価格水準は、仮に下方リスクが試されることになれば、脆弱であろうと考えています。
また、スペースXのIPOは興味深いイベントになると考えており、既に同株式へのロング・エクスポージャーを保有している関係者は、確実にこの取引への市場の関心を盛り上げるでしょうし、ウォールストリートの銀行も手数料収入として10億米ドル近くが掛かっているため、自らのポジションを喧伝する可能性が高いでしょう。
それでも、このIPOを実現させるためには850億米ドルの新たな現金が必要となります。同社株は即座に市場インデックスに組み込まれるでしょうが、パッシブ型のファンドが当初参加出来るかどうかは明確ではなく、また機関投資家もバリュエーションに対してより懐疑的な見方をする可能性が高いため、成功するか否かは個人投資家の需要が大挙して現れるかどうか次第と言えるでしょう。
投資家が最終的に月を飛び越えるほど大喜び(“Over the moon”)出来るかどうかは時間が経てば分かりますが、一つ注目すべきことは、スペースXが株価を2倍にするためには、さらに1兆7,500億米ドルの時価総額の積み増しが必要となることです。その文脈においては、規模が非常に大きい場合、重力が成長速度を抑制する働きをする可能性があることからも、2009年3月の時点で米S&P500 種指数全体の時価総額がわずか6兆9,000億米ドルであったことを改めて思い返すべきかも知れません......
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