戦闘は終わるかもしれないが、経済への影響はようやく顕在化し始めようとしている

Apr 20, 2026

中東での緊張緩和を受けて市場は上昇

コメント要約

  • 地政学的緊張の緩和:中東での停戦が維持される中、グローバル債券利回りは低下し、米国株は今回のイラン攻撃前を上回る水準へと戻りました。
  • 原油の供給混乱:ホルムズ海峡の閉鎖はグローバルのサプライチェーンに影響をもたらし始めており、ブレント原油のスポット価格は1バレル140米ドル付近で推移しています。
  • インフレ上昇の見通し:エネルギーや食品、航空券価格の上昇によってユーロ圏の総合CPIが3%に到達し、米国では4%の可能性もあるとみています。
  • 中央銀行のジレンマ:欧州中央銀行(ECB)に関しては、2026年末までに2回の利上げが実施される可能性がある一方、米国に関しては、ケビン・ウォーシュ氏の下で米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレが低下軌道に乗るまで、利下げの可能性は低いとみています。
  • マクロ見通し:成長見通しが下方修正される中、欧州圏の成長率は0.5%程度と予想されており、紛争が今後再びエスカレートした場合、リセッション・リスクはさらに高まるでしょう。

中東での停戦が維持される中、過去1週間にわたってグローバル債券利回りは低下しました。投資家のリスク選好の回復が続いたことによって、米国株は今回のイラン攻撃、通称「壮絶な怒り(エピック・フューリー)作戦」開始前を上回る水準へと戻りました。実質的な進展がなかった前週の協議の後も、協議継続の見通しが好感され、ホルムズ海峡が依然としてほとんど閉鎖されたままではありながらも、合意に至ることは可能であるとの楽観的なセンチメントが維持されています。

実際のところ、米国によるイラン港湾の封鎖が発動された中で、米国は、中国政府が今後の交渉で譲歩するよう、イランに圧力をかけることができるとの期待を抱いているようですが、相互に不信感が漂う環境下において、イランがいかなる譲歩を行う用意があるかについては、依然として明確ではありません。とは言いながらも、米国が地上戦に進展させる意思を示していない現状からすれば、ほんの数週間前の状況への逆戻りは回避できるとの希望を抱くことは、現実的であるように思えます。

ただし、ホルムズ海峡経由の輸送が長期間にわたって支障をきたし続ける可能性はまだ相応に存在しており、経済的観点からすると、このルート閉鎖は既に重大な結果をもたらし始めており、そのことはグローバル経済全体で感じられています。

この点について、仮に比較的早期に妥協合意に至ったとしても、インフラへの損害とサプライチェーン正常化に要する期間を勘案すれば、今後6か月間に原油が1バレル80米ドルを大きく下回ることはないと考えています。また、指標とされる原油先物が1バレル100米ドルを下回って取引されている一方で、ブレント原油のスポット価格は、供給不足が始まる中で1バレル140米ドル付近で推移していることにも注視する必要があるでしょう。

この観点で言えば、タンカーが湾岸から最終目的地までの移送に4週間を要する可能性があることを念頭に置くことは重要で、消費者市場にとっては、ようやく今が供給不足を感じ始めるタイミングであり、今後数週間にわたってより深刻化する可能性が高いということを覚えておくべきでしょう。

米国の場合、ガソリンへの税率が低いことから、給油所での価格変化率は他地域よりもかなり大きくなっています。しかし、天然ガスに関しては、米ミッドランドのガス価格は上昇していない一方、欧州のガス価格が大幅に上昇していることは特筆すべきでしょう。これは、中東からの液化天然ガス(LNG)供給が途絶えたことによるものです。

消費者物価指数(CPI)に関しては、肥料供給の途絶が今年の作物収穫量に影響を及ぼし、輸送コスト上昇も消費者物価上昇に転嫁される見通しであることから、食料品インフレが見込まれると考えています。また、ジェット燃料価格が過去1か月間で2倍になったことを受けて、航空券価格の大幅な上昇も目の当たりにしています。

このような形で、インフレの構造は欧州と米国で微妙に異なっていますが、いずれの場合でも、今回の負の供給ショックが存在していなかった場合と比べて、1%程度高い水準のインフレを見込んでいます。つまり、ユーロ圏の総合CPIが3%に到達し、米国では4%の可能性もあるとみています。ただし、コアCPIはその0.5%程度低い水準になると予想しています。

一方、経済成長は0.5%よりもやや大きな幅でマイナスの影響を受ける可能性が高いと考えています。それでもなお、米国経済は2%を上回る堅調なペースで成長を続けるとみているものの、ユーロ圏では、現在のメインシナリオにおいて、成長率が0.5%程度となっています。よりネガティブなシナリオとして、紛争が今後再びエスカレートした場合、リセッション入りは、可能性の話ではなく、むしろ蓋然性の高い結果となるでしょう。

その点において、2026年のエネルギー価格ショックは典型的なスタグフレーションをもたらす供給ショックで、2022年に起きたものとは異なります。2022年は、コロナ禍からの反動によって需要が力強かった時期にエネルギー価格上昇が起きました。そして、政策金利はゼロ金利で、財政政策も需要を押し上げている中で、金融政策は景気刺激的で、やや後手に回っていました。

この経済状況は、2026年初頭に我々が織り込んでいたものと著しく異なります。したがって、ミサイルが空を飛び交う状況ではなくなったからと言って、ここ最近のリスク資産の反発に対しては注意が必要であると考えています。米国株は過去数日間で最高値を更新していますが、マクロ経済の環境は年初時点よりも一層困難になるとみられ、米欧の金融政策の状況はより引き締め(もしくはより緩和的ではない)方向へと向かう可能性があると考えています。

欧州中央銀行(ECB)に関しては、年末までに2回の利上げが実施される可能性があるとみており、概ね先物市場の織り込み程度と一致しています。米国に関しては、ケビン・ウォーシュ氏の下で米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げを予想することは困難ではあるものの、インフレが低下軌道に乗るまでは、利下げの可能性もまた極めて低いとみています。

金融市場の投資機会を精査すると、米国債に関しては強い方向感を持ったビューは有していません。欧州では、金利市場が既に2回の利上げを織り込んでいることを踏まえ、インフレ連動債へのアウトライトでのエクスポージャーを積み増すことに投資妙味があると考えています。

インフレのオーバーシュートがECB及びドイツ短期債にとっての主要リスクであるとみており、名目利回りの代わりに実質利回りを保有することが、このリスクを幾らか緩和するのに役立つと考えています。イールドカーブに関しては、インフレがピークを付け次第、短期金利の予想値もピークに到達するとみており、その先の成長弱含み見通しを踏まえれば、イールドカーブのスティープ化を予想した取引(スティープナー)への投資機会が復活するとみています。

さらに、財政支出へのプレッシャーは長期債にとって重石となる可能性があるとみています。ただし、今後1~2か月間は経済指標においてインフレの上振れサプライズがもたらされる可能性もあることから、スティープナーへの回帰はなお時期尚早であるとみています。

イングランド銀行(英中央銀行、BoE)は弱い英国経済の状況を踏まえて、利上げに消極的であろうとの見方を維持しています。しかし、英国ではインフレが他の地域よりも容易にオーバーシュートする傾向があり、その結果として、ベイリー総裁はほとんど選択肢がないという状況に陥る可能性があります。インフレのピークを確認できた段階で、英国債に対するより強気なスタンスを再考する機会があるとは考えていますが、すぐに政治的なボラティリティも高まるとの見通しから、現時点での投資は賢明ではなく、国内の安定した買い手層の不在によって、英国債のボラティリティは高止まりすることが予想されます。

日本では、植田日銀総裁および日銀関係者が、中東戦争の経済的影響の評価にさらに時間を費やしたいと判断する中で、今月末の会合では政策据え置きを選択する可能性が高いとみています。日本のインフレは現在1.5%に留まっており、今後2.5%に向かって上昇するとみています。しかし、6月の利上げに対して強い意思表示があり、為替介入の脅威が維持される限り、円相場は米ドルに対して160円以下に留まることが可能かもしれないとみています。

一方、日本では多くの国内投資家が新年度の開始時点で、議論の最中である資産配分決定について、国内資産のウェイトを大幅に増加させる兆候がないかに着目しています。

日本の年金基金の年間リターン目標がわずか2%であることを踏まえ、長期国債に対する配分の増加が日本の長期国債利回りを支えるとみています。現状の日本の長期国債利回りは、この水準をはるかに上回っているためです。

為替市場では、紛争の脅威が後退する中で、米ドルがやや弱含む展開となっています。この先を見据えれば、より弱い米ドルレジームへと戻る過程に移行していると考えており、グローバルのトレンドとして、各国や地域は自国のための資金調達源として貯蓄を国内にとどめようとする中、国内への投資が増えることが見込まれます。

また、米国の国際的地位の低下によって、多くの投資家が米国市場から資金を移動させようとしており、他に投資機会を模索したい意向を示しています。このような環境はエマージング市場(EM)にとって追い風となり得るもので、とりわけブラジルやコロンビア、ベネズエラなどの中南米の原油輸出国経済には好材料でしょう。これらの地域では、中東紛争開始以降の現地通貨建て債や通貨の下落は行き過ぎであるように見受けられ、相対価値の観点から、インドやタイ、フィリピンなどのアジア諸国(いずれも原油輸入国)との間でロングとショートのポジションを積み増すことに投資妙味があるように思えます。

この点に関して、社債及び株式市場では依然相応の慢心が存在しており、トランプ氏が今後数日間で和平合意を達成できた場合であっても、金融市場がマクロ経済的状況の変化をいまだ完全に反映していないように見受けられます。

今後の見通し

今後の見通しとして、この先いずれか時点で市場の注目はホルムズ海峡周辺の日々の分析から経済指標に移行し、今回の出来事が既に与えたであろうインフレ・ショック、その後の成長ショックの表面化へと移る可能性が高いとみています。

CPIの上振れサプライズの可能性は極めて高く、中央銀行の言動がよりタカ派に転じていくにつれて、リスク資産がこの先失速するきっかけとなる可能性は十分にあるとみています。これに関して言えば、株式市場は常に地政学的リスクを織り込むことが得意ではなく、最終的には金利や金融政策がより直接的な影響を与えることになるであろう、ということを念頭に置く必要があるでしょう。

その他の話題として、先週はイタリアの投資家と興味深いミーティングを行いました。米大統領がローマ教皇への攻撃を試みるべきではないとの嫌悪感と不信感を感じ取ることが出来ました。ソーシャル・メディアX上に、宗教的な自画像を投稿したことは、カトリック界においては極めて不適切と見なされていました。

政治的観点からすると、欧州の極右寄りのポピュリスト政党のリーダーらが、トランプ氏との関係について同氏から距離を置こうとしており、自らの選挙基盤における有権者との関係を考慮した上での判断であることも興味深く受け止めました。その点で言えば、JDバンス米副大統領がハンガリーのビクトル・オルバン氏再選の支援を試みたことは裏目に出たように見えますが、これについては、ハンガリーの有権者らが首相としてのオルバン氏をいずれにしても交代させるようになっていた可能性が高いとみています。とはいえ、これは現在の米国の国際的地位を示すものであり、現米政権とのいかなる関連性も、その大部分は極めて有毒であるとみなされていると言えるでしょう。このような状況を踏まえれば、米国と欧州の関係において今後さらなる試練の時が訪れることは想像に難くありません。

今週はワシントンDCに向かう予定ですが、トランプ氏によるNATO攻撃によって米国がいつ同盟から撤退するのか、そして中東における米国の作戦の相対的な失敗に対してPOTUS(米国大統領)が不満を募らせる中で、再びグリーンランド奪取に向かう時が来るのか、などと思いを巡らさずにはいられません……

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