ウォーシュ氏はパウエル氏よりタカ派に?

May 25, 2026

中東の膠着状態はインフレ懸念を高めています。  

コメント要約
  • 中東で継続する緊張:米イラン間の膠着状態は先週も解決に至らず、トランプ大統領が示唆した軍事的エスカレーションの計画は撤回されたものの、協議は依然として遠い道のりにあります。
  • FRB政策:当社ではこの先のインフレ上昇を見込んでいます。ベース・シナリオではないものの、仮にCPIが5%を突破し、数ヶ月間同水準に留まる場合には、米連邦準備制度理事会(FRB)が9月に利上げを実施する可能性があるとみています。
  • 欧州との乖離:欧州中央銀行(ECB)は、既に低迷した経済において、インフレを抑制しようと先手を打とうとしていることから、これが今後数ヶ月間での米国債とドイツ国債間の利回り差拡大につながる可能性があるとみています。
  • AI現在の投資の進捗段階において、AIは米国経済にとってデフレ要因というより、むしろインフレ要因として機能している可能性はあります。
  • エマージング市場:先週、政治的不確実性がブラジルやコロンビア資産の重石となりました。地政学的に関して、より前向きな話題としては、今後数ヶ月間でのウクライナでの和平協議について、やや楽観的になりつつあります。

先週の初めは、ここ最近の利回り上昇がリスク資産のセンチメントに重石となり始め、投資家は、米政策金利の次の動きが2027年初めに利上げとして織り込まれていることを意識し始めました。

しかし、エヌビディアの好決算が人工知能(AI)を取り巻く前向きな環境を支え続ける中、株式市場における強気なマインドセットが、しばらくの間は大きく変わる可能性は低いと考えられます。実際、資金の配分を急ぐ動きによって価格への感応度がほとんど見られていない状況では、ハイテク企業への需要を抑制するために、預金金利が実際にどこまで引き上げられる必要があるのかという疑問があります。

この状況において、今の投資の進捗段階において、AIは米国経済にとってデフレ要因というより、むしろインフレ要因として機能していることを注視する必要があるでしょう。時が経つにつれて、AIが賃金を抑制する可能性はあるものの、今のところ米労働市場は健全な均衡を保っています。従来、賃金を抑圧していた移民労働者の減少によって、低所得の職においても賃金の伸びが見られています。

中東情勢が膠着状態にある中、当社ではこの先のインフレ上昇を見込んでおり、現時点では米消費者物価指数(CPI)が夏場に4.5%前後でピークを迎えるとみています。しかし、早期解決の目処が立たないことは、インフレへの更なる上振れリスクにつながります。

この点を踏まえれば、米連邦公開市場委員会(FOMC)が6月に利上げを行わないことには確信を持っているものの、仮にCPIが5%を突破し、数ヶ月間同水準に留まる場合には、米連邦準備制度理事会(FRB)が9月に利上げを実施する可能性があるとみています。これは当社の基本シナリオではなく、ウォーシュ氏も短期的な物価上昇は見過ごしたいであろうとみているものの、現在の状況が続く限り、利上げのリスクは上昇し続けるとみています。

その点で言えば、市場参加者は、ジュローム・パウエル氏が比較的ハト派なFRB議長であったのに対し、ケビン・ウォーシュ氏はややタカ派なFRB議長となってしまう可能性があると認識し始めるかも知れません。

足元では、インフレ・スワップを通じた米ブレークイーブン・インフレのポジションへの選好を続けています。市場がインフレについて過度に楽観的であるとの見方に基づくものです。FRBがターゲットとしている個人消費支出(PCE)インフレで見た2%の水準は、CPIでは2.5%程度であるとみています。

米CPIが現在3.8%であり、さらに上昇する見通しであることを踏まえると、5年インフレ・スワップが2.75%未満であることは、この先のインフレのオーバーシュートをほとんど織り込んでいないように見受けられます。これは、米インフレ率が過去60ヶ月に亘ってFRBの目標を上回っており、CPIの上昇が確実に期待インフレ上昇につながる要因であることを考慮すれば、とりわけ驚くことのように思います。したがって、インフレ・スワップ金利のリスクは非対称的に上振れ方向に傾いているとみています。

また、ユーロ圏でも同様の論理に基づき、インフレ連動の債券とスワップを保有することを選好しています。しかし、ここでは、ブレークイーブン・インフレベースでポジションを保有するのではなく、実質金利の直接的なロング・ポジションに、より投資妙味があるとみています。

名目金利より実質金利は市場ベータが低いことから、ポートフォリオの構成上は、ユーロの金利デュレーションを若干ロングし、米金利デュレーションを若干ショートして保有していますが、相対価値の点からも適切であると考えています。既に低迷した経済において、インフレを抑制しようと先手を打とうとする欧州中央銀行(ECB)に比べ、米国は後手に回る(ビハインド・ザ・カーブとなる)リスクがあることを踏まえると、これが今後数ヶ月間での米国債とドイツ国債間の利回り差拡大につながる可能性があるとみています。両地域の経済間の相対的な経済成長トレンドもこれを裏付けることになるでしょう。

中東紛争に話を戻すと、トランプ米大統領が火曜日に軍事的エスカレーションを計画していることを発表し、その後湾岸諸国に思い留まらされる中、週の初めに若干のボラティリティが見られました。とは言いながらも、ホワイトハウスのツイートは足元でますます割り引いて受け取られているようで、現時点で現状はほとんど変わっていないというのが現実であるようです。

交渉についての協議は継続中ですが、米国とイランの立場には依然として相当の隔たりがあり、時間の経過とともに、イスラム革命防衛隊(IRGC)は自らの優位性が高まっていると認識する可能性が高くなっています。したがって、最も確率の高い道筋は、米国が要求を放棄し、ある時点で身を引く決定をすることであるように思えます。

しかし、これは米国にとっては飲みづらいものであり、トランプ氏は明らかに、実際には決してそうではなかったとしても、この作戦を大成功と宣伝することを望むでしょう。このような観点から、米国としては、一貫した計画や戦略を欠いたとしても、最後の攻撃的な行為として爆弾を再び投じることを決定するのかどうか、注視しています。

地政学的に関して、より前向きな話題としては、今後数ヶ月間でのウクライナでの和平協議について、やや楽観的になりつつあります。プーチン氏がますます出口を模索しているように見受けられ、これまでの戦場でのロシアの進展が足元で停滞し、形勢が逆転し始めていることは注目に値するでしょう。

ロシア政府との交渉において、今後EUがより大きな役割を果たす予定のようであり、アンジェラ・メルケル氏、あるいはマリオ・ドラギ氏ですら、その仲介役を担う可能性があるようです。紛争の終結は歓迎すべき結果でしょうが、ここ数ヶ月間で石油輸出国機構(OPEC)の割り当てを大幅に下回る生産となっているロシアのエネルギーの生産構成の状態を考えると、ロシアとの和平合意により、もはや中東の問題を懸念する必要がなくなったと仮定するのは誤りであると考えています。

他のエマージング市場(EM)に目を向けると、今週はコロンビアの大統領選挙の第一回投票が予定されています。投票を控えてコロンビアの現地資産は圧力を受けていますが、当社の期待通り、市場友好的な結果がもたらされた場合、急激に反発する可能性があると見ています。

一方、ブラジルでも政治的リスクが高まっており、現地通貨建て債へのリスク要因となっています。ブラジルについては、インフレが約4%と予想される一方で、14%あるブラジル金利にかなりバリューがあると見ていますし、また、魅力的なキャリー水準に支えられて堅調に推移しているブラジル・レアルについても選好していました。しかし、ブラジル・レアルが海外投資家によって過度に買い込まれていることを踏まえ、政治的ボラティリティがポジションの急速な逆回転につながる可能性に備えて、ブラジル・レアルのポジションについては解消することとしました。

英国では、英国債や英ポンドが前週の下落から持ち直しました。アンディ・バーナム氏が仮に次期英首相となった場合、財政ルールを変更しないことを約束したことが、一部投資家に安心感を与えました。バーナム現マンチェスター市長はまず、メイカーフィールドで補欠選挙に勝利する必要があり、これは確実ではありません。

さらに、同氏は税金と支出を大幅に引き上げることに引き続きコミットしているものの、この夏の終わりに同氏が首相となった場合、これがスムーズに進むかどうかについては懐疑的に見ています。一方、過去1週間で発表された英経済成長やインフレに関する指標は良好で、英金融資産のセンチメントを下支えしています。

しかし、公共料金の上限が7月に13%引き上げられることから、良いニュースは短命に留まるリスクがあるとみており、英国資産については様子見の姿勢を取り、投資家のポジション解消によって、より大規模な市場のミスプライスが発生した場合にポジションを積み増すことが出来る余地を残したいと考えています。

通貨では、引き続き英ポンドのショート・スタンスを選好しています。また、日本円が米ドルに対して160円に接近する中、先週は円のロング・ポジションを積み増しました。

日銀は6月に利上げを実施するとの確信を持っており、これは今後の円を下支えする要因になるとみています。財務省も為替市場への介入にコミットしており、160円を一種のレッドラインとしてきています。

社債スプレッドに関しては、より慎重なスタンスを維持しており、とりわけ経済がリセッション・リスクの脅威により晒されているとみられる欧州については、慎重にみています。これまでにも述べた通り、スプレッドには非対称的なリターン特性が見られています。

既にタイトなスプレッド水準から、スプレッドが更に縮小する可能性は低いとみられます。さらに、豊富な新発債の供給も市場に向かい風をもたらしています。一方、原油価格が150米ドルに向かって上昇し、リセッション・リスクに対する懸念が高まった場合、スプレッドが大幅に拡大する可能性の方がはるかに高いように見受けられます。

今後の見通し

この先を見据えると、英サッカープレミアリーグはこの週末にシーズン終了を迎えますが、どうやら(残念ながらスパーズではなく)ウェストハム・ユナイテッドがリーグから降格することになりそうです。ウェストハムでは、クラブ応援歌である「I'm forever blowing bubbles」を歌いながらゴールを祝う際に「シャボン玉製造機」が使用されていますが、苦戦した今シーズンは、残念ながらそれほどこの機械が活躍する場がありませんでした。

おそらく(エヌビディアCEOの)ジェンセン・ファン氏であれば、別の用途を見つけることができるでしょう!明らかに、エヌビディアの直近の決算内容で印象的だったのは、AI関連の取引と提携の加速です。これを通じて数十億ドルがエヌビディアの自社チップへの注文として還ってきており、売上と利益をさらに押し上げ続けています。

そのようなベンダーファイナンス(売主融資)の取り組み自体に不正は何もありませんが、これらのキャッシュフローの循環的性質は、AIマシン自体が作り出しているシャボン玉を膨らませるのに役立つ一因となる可能性があります。ウェストハムの応援歌はこう歌われます……………Pretty little bubbles in the air(空中に浮かぶ、かわいい小さなシャボン玉)!しかし、ウェストハムのファンであれば良く知っているように、それらのシャボン玉は長持ちせず、やがて跡形もなく消えてしまうものなのです。

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