コンクラーベを再び偉大に

May 11, 2025

コメント要約

  • 先週は、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策を据え置き、パウエルFRB議長が将来の金利調整のタイミングについてほとんど示唆を与えない中、米国債利回りは概ねレンジ内で推移しました。米英の貿易交渉合意については、詳細は明らかになっていないものの、楽観的な見方が広がりました。じきに、インドやイスラエル、オーストラリア、日本、韓国などを含む数カ国との間でも合意に達する可能性があるものの、EUとの間では、夏まで進展は見られないであろうと予想しています。
  • ドイツでは、フリードリヒ・メルツ氏がやや厳しい船出となったものの、財政拡大は多くの期待を上回る可能性があると考えています。
  • 英国では、イングランド銀行(英中央銀行、BoE)は、景気見通しの弱さを背景に政策金利を引き下げました。しかし、英地方選挙において、ナイジェル・ファラージ党首が率いる野党「リフォームUK」が大成功を収めたことで、労働党での不安は増しています。
  • 金融市場は、4月に見られたトランプ氏の転換に関して楽観的すぎるように思っており、その先はさらなる問題が予想されるため、足元ではリスク資産に対するヘッジ・ポジションを積み増し、リスク・エクスポージャーの一部を解消しています。

 

先週の金融市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策を据え置き、パウエルFRB議長が将来の金利調整のタイミングについてほとんど示唆を与えない中、米国債利回りは概ねレンジ内で推移しました。


米連邦公開市場委員会(FOMC)は、トランプ米大統領の貿易政策を踏まえ、インフレ上昇リスクや景気下振れリスクを明確に感じていると見られますが、依然として不確実性は高止まりしており、多くの観点から、次回6月の会合までの間に、そのような状況がよりクリアになるとは想定しづらいように思えます。同会合では、経済見通しに加え、3月の会合の時点で年内50bpsの緩和を織り込んでいた「ドット・プロット」を更新する機会となります。


しかし、時点予測における問題点は、いくつかの大きく異なるシナリオを確率によってウェイト付けしようとしていることです。そのような点を踏まえれば、引き続き米10年債利回りのフェア・バリューは4.5%近辺にあると考えており、現時点では金利に中立的な見通しを維持しています。時が経つにつれて、2年/30年のイールドカーブはさらにスティープ化するとみていますが、これは極めてコンセンサスの取引となっていることから、この先スプレッドが90bps未満に再び縮小した際に、アクティブ・ポジションを積み増す好機として捉えたいと考えています。


また先週後半に発表された米英の貿易交渉合意については、楽観的な見方が広がりました。今後数週間のうちに、インドやイスラエル、オーストラリア、日本、韓国などを含む数カ国との間でも合意に達する可能性があるでしょう。しかし、EUとの間では、7月初めまではいかなる貿易交渉においても明確な進展は見られないであろうと予想しています。中国に関しては、関税のエスカレーションをやや緩和する形での合意が望まれるかも知れませんが、極めて希望的な観測においても、関税率が60%未満に引き下げられるとの予想は非現実的であるように思われます。米政権は、中国からの輸入への依存を断ち切りたいと考えているためです。


また、米国以外で制作された映画に対して関税を適用するというトランプ氏の直近の提案は、世界経済を再び米国中心に向かわせたいという確固たる欲求を改めて浮き彫りする、最新の事例に過ぎないと言えるでしょう。貿易紛争の対象がモノのみならず、サービスにも広がりを見せる可能性があることを示す点も踏まえ、このような動きには一定の注意を払う必要があるでしょう。


貿易の継続的な混乱と取引関係の激変を踏まえ、足元では米国の成長予想を年率換算で0.5%程度まで引き下げています。今のところ、景気後退は回避されるとの見方を維持していますが、失業率が想定以上に速いペースで上昇すれば、景気後退の可能性も現実を帯びるため、労働市場の動きを注視することが重要であると考えています。インフレ率は4%に達する可能性があるものの、米国から中国への食料輸出が停滞しているため、米国内の食品価格が軟化する可能性があることを考慮すれば、インフレ率については、この先食品とエネルギー価格がどのように動くかに依るでしょう。


ドイツでは、フリードリヒ・メルツ氏が、2度の投票を経てドイツの首相に選出され、やや厳しい船出となりました。とは言いながらも、CDU(キリスト教民主同盟)を率いる同氏は即座に仕事に取り掛かると見られ、財政拡大は多くの期待を上回る可能性があると考えています。今後、ドイツからはポジティブな報道があると期待しており、現状EU全体に置いて、米政策転換に団結して立ち向かおうとする意志があるように見受けられます。


また、EUの経済指標についても、将来の関税引き上げを前にした前倒しでの受注に当面は支えられると予想しています。その意味で、短期的なEU経済の悲観論はやや行き過ぎであると考えており、実際には、2025年にEU経済が米国経済を上回るペースで成長する可能性もあるとみています。


EUの他の地域に目を向けると、ルーマニアで行われた大統領選挙で、極右野党ルーマニア人統一同盟(AUR)のジョージ・シミオン氏が予想外に支持を集める波乱がありました。これにより、5月18日に予定されている決選投票を前に、連立政権が崩壊しました。この報道を受けてルーマニア資産は大きく下落しました。シミオン氏の勝利によって、同国の政治的及び財政的な安定性が脅かされ、同国と他のEUの国々との関係が悪化する可能性があるとの懸念によるものです。

しかし、これらの懸念の一部は過剰であるとみています。ルーマニアは依然としてEU基金の巨大な受益者であり、同国内のEUへの支持は依然として非常に厚いものとなっています。シミオン氏は右派ポピュリストですが、イタリアのジョルジャ・メローニ氏(実際シミオン氏と同盟関係にあります)の例は、有益な示唆を与えるかも知れません。


ルーマニア国債のスプレッドはB格の信用格付けのクレジットと同水準にあり、あまりにも多くの悪いニュースが既に価格に織り込まれているとみています。ルーマニアが双子の赤字を抱え、経済的に修正期間が必要であることを考慮したとしても、世界的に見れば全体的な債務水準は比較的低位に留まっていると考えています。


そんな中、イングランド銀行(英中央銀行、BoE)は先週、英国の景気見通しの弱さを背景に、金融政策委員会(MPC)で政策金利を引き下げました。しかし、今後数ヶ月間でインフレ率は急上昇するとみており、追加利下げが実施される可能性は低いとみています。また先週実施された英地方選挙では、ナイジェル・ファラージ党首が率いる野党「リフォームUK」が大成功を収めました。次の総選挙までには長い時間がありますが、与党労働党内での不安は増しています。


労働党系のアクティビストの自然な要求は、支出を拡大する(もしくは支出削減を回避する)ことであり、このことは、自身に課した財政ルールを破るリスクがあるために、リーブス財務相が増税を今秋に打ち出すことになるかも知れません。同氏がこの基本理念を揺るがせないことが理想ですが、これを投げ出そうとすれば、いかなるものであれ、2022年のトラス・タントラム以降、債務の持続可能性に対する懸念に神経質となっている金融市場からの一層の懸念に晒されることになるでしょう。


日本では、米国との貿易交渉合意に向けた進展が注目を集めています。そんな中、日本の長期国債に対しては、海外投資家のポジション解消による売り圧力が続いています。日本の30年国債利回りは今やドイツ30年国債利回りを上回っており、10年債に対する上乗せ利回りは160bpsに達し、相対的な投資妙味が際立っていると分析しています。


日本の投資家は、ゴールデンウィーク休暇から戻って来たばかりであり、今後数週間掛けて、今年度初めに新たな資金を市場に投入する動きが見られることが一般的です。特に生命保険会社は、資産配分において国内資産を増やす計画を明らかにしており、今の利回り水準に魅力を感じると予想しています。


短期的には、価格変動の高まりによって買い手は様子見姿勢を保つかもしれませんが、価格変動が低下を始めれば、すぐにより多くの買い手が現れると確信しています。したがって、過去数週間に亘り、利回りが3%に近づくにつれ、30年債のエクスポージャーを段階的に積み増しています。

 

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