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コメント要約
新たに出てくる貿易面での米国の要求にEUが屈したことは、欧州全体で屈辱、憤り、そして諦念をもって受け止められました。しかし、米国側ではムードは沸き立つばかりになっています。
今日までの貿易交渉において、トランプ大統領は期待していた譲歩をほぼ全て勝ち得たとの印象があります。当社の分析では、米国の平均関税はグローバル・ベースでおよそ18%に上昇しているとみています。これを基にすると、米国の2025年の関税収入は2024年の770億米ドルから4,500億米ドルに至ると予想しており、GDPの1.25%に相当する増加です。この収入は、来年の米国の財政赤字をGDP比で7%をやや下回る水準に引き下げることに寄与すると考えています。
大きな報復関税がないことから、これは米国にとって大きな成果とみられています。このことは、政治的スペクトルを超えて、増税政策に対して米国大統領が賞賛を勝ち得ているということであり、希有なことです!
しかし、恐らくより重要なことは、予算の議会通過と共に貿易交渉の終結によって、数ヶ月前から企業と消費者の信頼感に重石となっていた極度の政治的不透明感が低下することになった、ということでしょう。
これは経済に限らず、あらゆる面で先を見据えて計画を作ることを著しく困難にしていました。視界が開けたことで、米国の経済活動は、多くの人が以前恐れていたよりも上昇基調が続くとの見方が広がっています。
これにより、米国の成長例外主義の終焉を巡る議論に疑問符が付くことになっています。また、AIへの強い需要の下で、米国での投資が促されていることから、ハイテク企業の収益が好調なことも、こうした見方を強めています。
このため、先週米ドルは再度上昇しました。過去数ヶ月、どれほど多くの投資家やトレンド追随型の投資モデルが、弱い米ドルという話題に飛びついたか、ということを強調してきました。
しかし短期的には、この考えを支援する主張の多くは弱まったように思います。現時点では、貿易戦争において米国は明らかな勝者として浮上しています。米国株のパフォーマンスは他を上回っており、財政的な懸念はしばらくの間低下しています。とかくするうちに、トランプ氏が米国政治の信頼性を蝕んでいるとの懸念は、交渉責任者に対する不本意ながらの尊敬の念に置き換わっています。
こうしたことから短期的には、ポジションが解消されることで、米ドルの上昇がさらに続く可能性があります。しかしながら、中期的な視点で考えれば、米ドルの下落というトレンドが再開すると考えています。というのも、次期FRB議長がよりハト派になるということを考えれば、今後金利差は縮小していくとみられるからです。
先週のFOMCでは、パウエル議長は政策金利を当面維持する姿勢を見せました。現時点での事実として、経済指標は良好な状態が続き、このコメント執筆時には発表されていませんが、7月の雇用統計もこうした状況を確認することになると予想しています。目先のインフレ上昇リスクから、今後すぐに利下げが行われると予想する余地は普通なら限られています。
しかしながら、トランプ大統領が積極的な利下げをFRBに要求している中で、金融政策緩和が「あるか」よりも「いつ」の問題となっているという見方から、利下げ予想は継続すると考えています。この点から、トランプ大統領が過去数ヶ月に亘って取り組んできた戦いのほぼ全てで勝利を収めていることは考慮するべきで、それ故に、金融政策の方向について、トランプ大統領が望むものを得るということと逆に賭けることは愚策かもしれません。
米政権は関税に関連した価格の上昇は、一度きりの価格調整で一時的なものとし、消費税に類似したものと見ています。従って、FRBはそうしたノイズを無視すべきであると考えています。
さらにホワイトハウスでは、関税率上昇のおよそ三分の一だけが米国の消費者負担となり、残りは生産者の効率性向上、利益率削減、他国での値上げといったことで吸収されるとの見方です。これが正しければ、今後のコアCPIの上昇率はわずか0.4%程度に収まるということになります。
この予想が正しいと分かれば、今の政策金利4.3%が長期の中立金利を上回ったままであることを鑑みれば、今年9月と12月に利下げが行われ、さらに利下げが行われるとみられます。
しかし、FRBは経済のスラック(緩み)がないことから、インフレ率の再上昇は続く可能性があり、賃金への二次的な影響をもたらす恐れがあると主張するでしょう。株式市場の上昇やクレジット債のスプレッド縮小により金融環境が緩和されており、追加の金融緩和の必要性も軽減されています。
その結果、今後は経済指標に注目が集まり、これがどのようになるのかを見守ることになると思います。これとは別に、ウォルシュ氏などから、FRBがバランスシートを縮小すると同時に、金利を大幅に引き下げることが最適であるという興味深い意見が出てきています。
同氏がトランプ大統領に近いことを考えると、FOMCが難題の解決を模索し、中期的なリスクとなる分裂を回避しようとしていることから、このアイデアが今後注目を集める可能性があります。
米国債利回りは過去1週間でほぼ横ばいで推移し、一定の取引レンジ内にとどまっています。しかし、短期的にFRBのタカ派的な姿勢が強まったことで、過去数日間で米国債のイールドカーブがフラット化しました。この動きは欧州市場でも見られていますが、全般的なことを言えば、前回のECB会合でラガルド総裁が中立的な政策スタンスを示したことで、米国に対してアンダーパフォームする傾向が見られます。
より広い視点では、トランプ大統領がEUの全体としての力とリーダーシップの欠如を露呈させたことで、過去1週間でEUでは多くの内省と懸念が見られました。しかし、少なくとも貿易に関する最悪のシナリオは回避されたという感覚があります。
EUは他のほとんどの米国の貿易相手国と同等の合意内容となっており、米国内の生産者を別とすれば、相対的な競争力を失っていません。一方で、ユーロ圏の経済指標は良い方向に動いている兆候を示しており、貿易の不確実性やトランプ氏から今後しばらくの間解放されるのは良いことです。
同様の考え方は東京でも見られるようです。先週の日本銀行の政策会合では、植田総裁がインフレ見通しを引き上げ、今年後半の金融政策正常化再開の基盤を築きました。当社は、日銀が10月に0.75%への利上げを行い、経済の今後数か月の動向次第では、早ければ1月にもさらなる利上げがあると予想しています。
しかし、植田総裁が急ぐ姿勢を見せていないため、日本円が対米ドルで150円まで下落するのを止めるには至りませんでした。日本円は依然として非常に割安だと考えていますが、現時点では日本円でポジションを取るべき時期ではないと考えています。
リスク資産にとって良好な状況は、クレジット市場にも引き続きプラスな状況です。しかし、バリュエーションが割高になるにつれ、良いニュースが出てもスプレッドが縮小するのは難しくなっています。一般的に、景気後退のリスクが低い、または低下している場合(現在の状況)、クレジット市場は引き続き好調さを維持することが予想されます。
ただし、景気後退リスクが高まると、価格の再評価が起きる可能性があります。しかし、近い将来にそのような再評価を引き起こす材料を特定するのは難しく、新たな外部要因がリスクの再評価を引き起こさない限り、状況は変わらないでしょう。
一方、エマージング市場の動向は対照的にそれほど良好ではありません。これは一部、米ドルが再度上昇したことよるものです。さらに、インドやブラジルのような国に対する関税は、米国政府が貿易協定を武器化することで、各国の国内政策に影響を与えようとしていることを示しています。
今後の見通し
経済指標に焦点が戻る中、米国の雇用統計や今週のISM指数が、全体的に前向きな経済見通しを裏付けると予想しています。市場は四半期GDPの数値に含まれるノイズにあまり注意を払っていませんが、大半の評論家が関税が2025年後半の経済成長を鈍化させると考えているものの、GDP成長率が1.5%になるとの予測に対するリスクは上方に偏っているように見えます。
他方では、8月12日に発表される7月のインフレ指標に関連して、市場のボラティリティが高まる可能性があると見ています。成長が強いままであれば、今後数回のCPIの結果が、この先数か月のFRBの意思決定や金融市場の方向を決定する重要な要因となるかもしれません。
8月に入り、夏の市場があと1か月続きますが、9月に入り「新学期」トレードが始まると、年末に向けた動きが姿を見せてくるかもしれません。しかし、現時点では、テーマは「USA、USA」といったところです。今この時点を「トランプ氏のピーク」として振り返ることになるのかもしれない、と考える人もいるでしょう。その文脈で、先日トランプ氏がスコットランドのターンベリーにある自身のゴルフ場にある、第二の「ホワイトハウス」で海外のリーダーたちをもてなしている姿は面白いものでした。
この調子で、すべてがうまくいっていることから、トランプ氏とキャディたちが、平壌のゴルフ場で金正日氏が達成したとされる、ホールインワン11回の38アンダーパーの記録に挑戦する計画を立てているのではないかと半ば冗談で考えてしまいます。一体何がうまくいかないはずがあるでしょうか……。
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