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ポイント
米国は、トランプ大統領の「大きく美しい1つの法案(OBBBA)」による基礎的財政赤字の状態にありながら、対GDP債務比率を安定させるために、10 年間の予算期間に亘って、年平均6.9%の名目GDP 成長率を達成しなければなりません。米国では過去40年間を見てもその水準の成長が安定的に達成されたことはなく、そのような名目成長が続いていた後には、数年間の急速な成長鈍化が伴っていました(図1)。これは、 債務水準を現状のまま安定させるための成長目標が非常に高いハードルであることを示しており、ましてや政府の累積債務残高を超える成長を達成することは、より困難になることを示しています。
米国では人口増加ペースが減速傾向にあります。議会予算局(CBO)の2025年人口動態見通しでは、自然人口増加率は2033年までにマイナスに転じる(つまり年間出生数が年間死亡者数を下回る)と予測しています(図表2)。この時点で、移民の純増がなければ、米国の人口は減少し始めます。これは、米国の潜在GDP成長率にもたらされるべく将来的なプラス要因を打ち消す重要な構造的要因となり、トランプ米大統領の積極的な反移民政策の下では尚更顕著となります。
また、この先団塊世代が退職していくことから、今後10年間で労働人口の減速は人口減少ペースを上回ることが予想されます(図表3、4)。人口の構造的な高齢化は、潜在的な収入基盤(税収)の縮小と、必要な支出(給付金制度)の増加を意味します。言い換えれば、強い経済成長は、必ずしも1対1で赤字を縮小させるわけではありません。政府にとって最大のコスト要因の伸びが、収入基盤を構造的に上回るからです。実際、現役世代100人当たりの退職年齢者数を意味する「従属人口指数」は、2024年の35.8人から、2032年には42.0人に上昇すると予想されており、同年の社会保障制度が支払不能に陥るとされています(図表5)。
トランプ米大統領のOBBBAは、トレンドを上回る輝かしい成長が毎年続くとの想定の下、今後10年間で年間6.5~7.0%の対GDP財政赤字を目標としています。しかし、成長が鈍化した場合はどうなるのでしょうか。
CBOのデータによると、過去40年間で、GDP成長率が低迷した年の潜在GDP成長率の平均は-0.8%でした。これは、予算や追加的な支出に変化を加えない場合、既に基礎的財政赤字を対GDP比4%に押し上げることになります。このこと、つまり、米財政状況と景気循環増幅性の度合いに真の危険性が潜んでいると言えるでしょう。景気が好調で失業率が低いときに、GDPの7%近い財政赤字であることは、景気後退が発生した際に財政赤字が急拡大し、政策対応の余地が制約されることを意味します(図表6)。 景気後退時でありながら、財政政策によって経済を刺激するための余地がほとんど残されていないということです。
米国の財政状況は、確かに経済成長のパフォーマンスにさらされていますが、リスクは非対称であり、下振れ方向に大きく傾いているとみています。予算においては既にトレンドを上回る成長が前提とされているため、目標を上回る財政拡大はそれほど大きく織り込まれていませんが、いかなる経済的低迷も、財政比率や米国の債務状況の軌道に深刻な影響を与えることになります。
確かに、米国では、生産性を向上させるAIブームや規制緩和が潜在的な利益をもたらすとの見方もありますが、これは予算の裏付けとなる成長の前提に織り込まれていると言えるでしょう。
この時点で、トランプ米大統領が財政政策のためにできる最善策は、関税に関するTACO(Trump Always Chickens Out=トランプはいつも怖じ気づいてやめる)姿勢を回避し、影響を与えるために十分なその追加的な歳入を確実にすることです。現状、2025年6月に発生した関税収入を年率換算すると、予算の収支に対してGDPの約1%に相当する2,450億米ドルの追加歳入が見込まれます。財政予測ではこの増収分を計上していますが、ここからさらに関税が引き上げられれば、財政見通しへの恩恵は続くでしょう。
市場は一見したところ、トランプ大統領のOBBBAの成立にともなう財政リスクを軽視しているように見受けられます。米国が財政のジレンマから容易に脱却できるとの主張も多く聞かれますが、これには同意しかねます。米国の債務持続性の背後に潜む成長リスクは、明らかに非対称であり、下振れ方向に傾いています。これは、イールドカーブのスティープ化圧力が持続することを意味し、成長率の鈍化のいかなる兆候であっても、スティープ化の勢いを加速させる要因になるとみています。当社では引き続き2年債/30年債のイールドカーブのスティープ化を選好し、200bps近い利回り差になることを予想しています。
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