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コメント要約
先週は、ニューヨークの米国国際貿易裁判所が、トランプ大統領の大統領令による国際緊急経済権限法(IEEPA)適用を通じた関税措置を「違法」であるとの判決を下したことが、米国の政策における不確実性に新たな要素を加えました。この判決自体は、最終的に最高裁判所で覆される可能性が高いと考えています。
しかしその間、他国が法的プロセスの展開を見守る中、貿易交渉は後回しになる可能性が高いとみられます。これにより、トランプ氏が「解放の日」に発表した追加関税について、90日間の猶予期間を延長する必要が生じるかも知れませんが、同氏がアジェンダを大幅に変更することはないと考えています。
米国の関税についての我々の分析では、関税が現在のままであると仮定した場合、(代替効果にも依りますが)最終的には関税は財輸入の12~14%程度で落ち着くとみています。この結果、2,500億米ドルから3,000億米ドル(GDPの約1%)が、予算で必要とされている収入として寄与するとみており、この金額をある種の消費増税として捉えることが理にかなっていると思います。
また関税の影響により、今後18ヶ月間で米経済成長率が1.5%程度に減速する可能性があると考えています。物価が上昇するために、関税によって消費が減少することに加えて、成長の鈍化によって不確実性が高まることにもなるでしょう。このような不確実性は、企業による投資を抑制し、消費者が高額商品を購入することを抑える要因となるでしょう。
企業の投資に関して言えば、新しい工場を建設する決定は通常8年から10年の視点で行われることを念頭に置くべきでしょう。したがって、生産を国内に回帰させる(リショアリング)ためのいかなる決定でも、4年後に政権が交代し、貿易や関税に対する立場が大きく変わる可能性があるというリスクを考慮した上で、慎重に行われる必要があります。
一方この先、米国のコア個人消費支出(PCE)インフレ率は、価格が調整されるために3.0%から3.5%の間で推移するとみています。その場合、成長が著しく減速し、失業率が急上昇するか、もしくは何処かから大きなデフレ圧力がない限り(いずれも可能性は低いとみられます)、この先半年もしくはそれ以上に亘り、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げを予想することは困難な状況です。
失業に関しては、仮に潜在成長率を下回る成長となったとしても、移民取り締まりが失業者数の増加を抑制する役割を果たすとみています。インフレに関して言えば、年初来で米ドルが弱含んでいることから、為替が関税引き上げを相殺する役割を果たすことはなさそうです。
米国予算に関しては、これらの変化を考慮した後、2025年はGDPの約7%の財政赤字になると予測しています。基本的に、減税と防衛費の増額は、関税を通じた増税によって賄われるとみており、政府効率化省(DOGE)による削減はほとんど意味のないものになるとみています。
先週1週間は、グローバルに10年債利回りの水準に大きな変化はなく、債券市場は方向性といった観点では明確なトレンドを欠いた状態です。しかし、これだけでは市場の動き全体を説明できていません。イールドカーブの傾きは非常に不安定となっており、長期債は負債水準の上昇への懸念や、需給に関連したテクニカルな展開に左右されています。
この文脈においては、過去数日間で日本に特に注目が集まっています。ここ数週間に亘り、ボラティリティによって潜在的な買い手が手控える中、日本の長期債は需要不足によって特に圧力を受けています。投資家は、前週の20年国債入札が不調であった後、発行計画に関して、市場に十分注意を払っていない財務省のアプローチに懸念を抱いていました。結果として日本の30年国債利回りは一時3.2%を突破し、10年国債利回りの倍の水準となりました。
しかし先週は、当局が長期債の発行を削減することで、市場環境に対応する準備が出来ている姿勢を示し、状況が大きく好転しました。これにより、日本の10年/30年のイールドカーブが20bps以上もフラット化し、40年国債入札もより良好な結果となりました。
日本のイールドカーブの長期ゾーンでの顕著なフラット化は、他の地域でも同様の動きを引き起こしました。米国では、債務懸念による前週の米国債イールドカーブのスティープ化が過去数日間では反転しましたが、高止まりする負債水準に関連した懸念は早期に払拭されるものではないとみています。
日本とは対照的に、米国債のイールドカーブは比較的フラットであり、今後数週間でスティープ化のトレンドが再び現れる可能性があると考えています。現時点では、米30年国債は5.0%付近で買い支えられているようです。しかし、海外投資家の多くが米国資産や米ドルへの資産配分を減らす傾向がある最中に、米国の債務が増加していくことから、債務水準の増加に伴う追加の発行額を吸収出来るのかどうかは、米国国内の投資家に依るとみられます。
このような文脈においては、債券市場に対するリテール投資家の関与が重要となります。しかし、今のところ、リテール投資家は株式市場が下落したタイミングでの押し目買いや、トランプ米大統領らが推奨する暗号通貨への投資を積み増すことに、より注力しているようです。
その点において、30年国債の利回りがリテール投資家の支持を得るために、どの程度上昇する必要があるのかは興味深い質問でしょう。例えば、この観点で言えば、このような投資家は追加的なリスクや潜在的なボラティリティに対する報酬として、MMFが提供する利回りより少なくとも200bps高い利回りを求めるかもしれないと思います。
この場合、供給が十分な需要を見つけられなければ、米30年国債の利回りが最終的に6%、もしくはそれ以上に上昇するといった見立てを持つことも出来ます。こうした状況下、多くの国が意図的に債務を短期化し、長期債の発行を減少させていることも注目に値するでしょう。しかし、総債務水準が上昇するにつれて、買い手のストライキというリスクが常に潜在的な脅威として、投資家の頭に浮かぶことでしょう。
欧州では、債券市場の動きは他の地域よりも控えめとなっています。財政政策が緩和され、成長も米国と同等の1.5%程度になるとの予測に基づけば、欧州中央銀行(ECB)が2%未満に政策金利を引き下げる可能性をやや懐疑的にみています。しかし、インフレ見通しは予測がより困難です。
EUが米国輸入品に対して報復関税を実施することで、域内の価格が多少上昇する可能性があります。しかし、他方では、中国からの輸出が欧州向けには増加することで、物価にデフレ圧力となり、インフレ抑制に寄与する可能性があります。もちろん、EUがダンピングの懸念から域内の生産者を保護するために、貿易制限を強化するかどうかにも依存します。
インフレの状況が不透明である場合、EUの政策当局者との会話でより明確に伝わってくるのは、防衛費の増強やサプライチェーンの構築、キャパシティ追加に対する強いコミットメントです。しかし、このような話は、債券投資家よりも株式投資家にとってはるかに重要となるでしょう。
英国では、与党労働党が政府支出を制約している財政の枠組みを緩和しようとしているようです。この点に関しては、過去の保守党政権のツケを受け継いだ労働党に、ある程度の同情を感じざるを得ませんが、英国債券市場がこの計画を好意的に受け止めないリスクは残ります。
よりポジティブな面では、英国の成長が予想以上に堅調であり、これが財政面での計算を支えるのに役立つかもしれません。しかし、これを相殺する要因として、インフレ関連の話題は悪化し続けており、英小売企業による団体であるBRC(British Retail Consortium)が過去15ヶ月で最大の食料品価格の上昇を報告しています。このような状況を踏まえれば、英国のインフレ(および期待インフレ)は4%程度に落ち着くと考えています。
その意味で、若手医師が29%の賃上げを求めているという報道は心配です。同業界内での極めて特殊な要因が反映されているのかもしれませんが、実際には、多くの人々にとって経験したインフレや実感するインフレの水準は、公式に発表されているCPI指標の数字よりもかなり高いということでしょう。
過去1週間では、特段目立ったニュースがない中、社債市場も比較的穏やかな動きとなりました。欧州ソブリン債市場ではスプレッドが縮小を続けており、これを踏まえて、フランス国債についてショート・ポジションに移行することを検討しています。
とは言いながらも、ギリシャ国債が10年債で見てフランス国債と5bps以下の差で取引されていることには驚いており、特段目新しいニュースがなく、政治的なボラティリティがない場合、夏場にはスプレッドがさらに縮小を続ける可能性があるでしょう。為替市場も先週は概ねレンジ内で推移しました。長期的な米ドル安トレンドに移行しているという考えは、ここ最近の多くの顧客ミーティングを通して、一定の支持があるように見受けられました。資産配分責任者は米国へのエクスポージャーを削減することを検討しているようです。
この点に関して言えば、関税が引き上げられ、貿易制限が課される世の中においては、貿易量が減少する可能性があるでしょう。消費のパターンに自国バイアスがあるとすれば、投資に関してもより自国バイアスが反映されていく可能性があると考えています。
先週は、日本の30年債利回りの低下が10年債利回りの低下幅を上回ったことがリターンにプラスとなりました。その他、金利や通貨、クレジット債のポジションは概ねレンジ内の動きとなりました。
多くの点から、ほとんどの市場が過去数週間に亘って明確な方向性のトレンドに欠き、横ばいで推移しているようです。しかし、このような状況がさらに長く続くことを期待するのは浅はかであるように思え、今年の初めから、次の角を曲がったときに何が待ち受けているのかを予測するのが困難であるという感覚があります。
実際、多くの経済学者や投資家にとって予測が難しい環境であるのならば、FRBのような中央銀行にとっても同様でしょう。その場合、中央銀行のフォワード・ガイダンスはあまり意味を持たないということを認識すべきでしょう。代わりに、政策立案者はこの環境での意思決定において、先手型ではなく反応型となる必要があります。これは、1.5%の成長率と失業率の緩やかな上昇であれば、パウエルFRB議長が現状の政策金利に比較的満足する可能性が高いとしても、FRBがある時点で後手に回る(ビハインド・ザ・カーブとなる)可能性があることを示唆しています。
市場全体の方向性が不確実な状況では、デュレーションの取引よりも、イールドカーブ上の取引の方が魅力的な投資機会を提供しているように思われます。また、多くの投資家が過去、デュレーションを他のポジションに対する「リスクオフ」のヘッジとして保有してきたことを改めて考えています。
しかし、長期利回りの継続的な上昇が株式市場に対する主要なリスクの1つとなる可能性がある足元において、デュレーションを保有することはそれほど効果的なヘッジとはならないように思えます。その観点からすれば、イールドカーブのスティープ化に備えたポジションはより有効な「リスクオフ」ヘッジになると考えています。
債務の懸念が長期債利回りに圧力を掛ける環境で機能するのみならず、貿易面での緊張の再燃が成長の鈍化と景気後退の懸念を高めた場合にも、このポジションは良好なパフォーマンスとなるでしょう。
米国でのイールドカーブのスティープ化に備えたポジションは、マイナスのキャリーとなり、市場コンセンサスの見方ではあるものの、非対称なリスク特性やポートフォリオ構築上のメリットがポジションを積み増す好機を提供していると考えています。
そんな中、市場参加者が「TACO(トランプはいつも逃げる; Trump Always Chickens Out)」に自分たちがいるのだと言い聞かせ始めたことは、トランプ氏の次なる動きにつながるリスクがあると考えています。TACOの見方には、市場参加者の慢心のリスクがあるでしょう。タコスのように、辛いホットソースが最も予期しなかったタイミングで効いてくることもよくあるので、注意が必要でしょう。
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