避難所にとどまる

Mar 09, 2026

地上からの眺め:プールサイドでみるミサイル攻撃

コメント要約

  • 中東紛争の激化:先週の米国・イスラエルによるイラン攻撃は報復を引き起こし、ドローンとミサイル攻撃は海運とLNG生産での混乱を招きました。一方、観光客(そして某債券部門の投資責任者を含む)は足止めを余儀なくされました。
  • エネルギー・ショックの類似性:石油・ガス価格は急騰し、攻撃が長引く紛争に転じた場合、ロシア・ウクライナ紛争勃発後と同等のエネルギー危機が生じる可能性があります。
  • 米ドル上昇と通貨ボラティリティ:投資家が安全資産を求める中、米ドルはユーロとポンドに対してアウトパフォームした一方、地政学的リスクが激化する中でエマージング資産は苦戦しました。
  • 国防支出の必要性:グローバルでのボラティリティの高まりは欧州の防衛計画能力の不十分さを露呈し、特に英国は周辺化され、ロシア・ウクライナ紛争からの教訓を十分に活かせていないようです。
  • マクロ見通し:目の前に、リスクを積み増す機会が現れる可能性があるものの、グローバル投資家にとって多くの異なるシナリオがある中、現時点では様子見姿勢をとることが賢明と考えています。

先週土曜日の米国とイスラエルによるイラン攻撃の開始は、過去1週間のグローバルなマクロ経済環境と金融市場に大きな影響を与えています。イランのドローンとミサイル攻撃は、より広域な地域戦争を引き起こすことを狙っており、海運と生産(カタールのLNGの場合)が大きく混乱したことから、石油とガスの価格が急騰しています。

この文脈において、この紛争が長期間継続した場合には、ロシアのウクライナ侵攻直後に見られた状況のような、エネルギー・ショックの始まりを目撃していると言えるかも知れません。

この観点から、米国・イスラエルが当初イランの指導部を排除し、航空優位性を確保するとともに、イランの軍事インフラに大きな損失をもたらしたにもかかわらず、トランプ米大統領が望んできたよりも、さらに長期間の事態に発展するリスクは、依然として極めて現実的な可能性として存在しているとみています。

特に注目すべきは、イランが最大75,000機のシャヘド・ドローンを備蓄していると報告されていることです。これらは商業用トラックで輸送・発射することが出来、識別が困難です。つまり新体制は、打倒されるか、交渉に応じることを説得されない限り、今後数ヶ月間にわたって攻撃を続けることが出来る可能性があります。

さらに、イランのドローンの費用が1機あたり1万米ドル程度に過ぎないことを考えると、イランが長期戦を繰り広げることが出来れば、経済面では紛争がイラン側に有利に働く可能性があります。迎撃ミサイルは非常に高価であり、米国・イスラエル軍がイランで大きな軍事的進展を確保しない場合、供給がすぐに逼迫する可能性があります。

イラン国内での民間人蜂起への期待は残っていますが、この段階では願望以上のものではなく、この観点から、先行きは予測し難い状況にあります。

また、今回の攻撃は、トランプ氏の支持率が低く、さらに低下し続けている時期に行われたことも注目に値します。原油価格の持続的な上昇は、米消費者がガソリン・スタンドで素早く感じることとなり、価格が低下しなければ、大統領がこれについての責任を問われことは合理的と思われます。

中間選挙が迫っており、アフォーダビリティがすでに多くの有権者にとって最優先課題となっている中で、これらの攻撃を迅速に終わらせるよう、米国内での圧力が急速に高まる可能性があります。この観点からすると、ウラン濃縮施設の完全な破壊は、トランプ大統領が態度を改める十分な成果となる可能性があります。

イランの体制に関しては、降伏するよりも自滅を望むという規範にコミットしているよう見受けられます。また、彼らは米国よりも長く、この状況に耐えることが出来ると考えており、このことが耐え忍ぶことへの活力になる可能性があります。湾岸諸国全域で攻撃を仕掛けることで、相対的に穏やかで安定したオアシスのような場所として認識されていた地域に、恐怖と不安の感覚がもたらされました。ホテルや空港への損害は、一定の期間、観光客を失ってしまう可能性があり、駐在員の流出を引き起こす可能性もあります。

このことは、エネルギー関連の状況に加えて、これらの国々に経済的な下振れリスクをもたらします。この戦争は、中東のどの国も望んでいたものではなく、ネガティブ・シナリオでは、それらの国が最も打撃を受ける可能性のある戦争という状況から、イランは、これらの国が米軍基地を追い出すという結論に至らせようと望んでいるとの推測も可能でしょう。

また、地域的には、欧州も今回の危機における不釣り合いな敗者です。欧州は、ガスと石油の膨大な輸入国であるためです。域内のエネルギー政策は過去10年間、ESGを掲げるロビー活動に支配されており、湾岸地域やロシアなどの地域からエネルギーを輸入することが望ましいとされてきました。そのようなエネルギーは、より身近な場所で容易に採掘出来た可能性があるにも拘わらず、です。

炭素排出を実質的に第三国にアウトソーシングするこの政策は、現在、主に自己満足的かつ表面的な利益のために、国内の安全保障と成長に壊滅的な影響ををもたらしているように見受けられます。これとは対照的に、石油とガスの輸出国である米国は、実際はイランによるエネルギーセクターへの攻撃から利益を得ています。

この観点からすると、最大のコストを負担する者は、この紛争を開始した者よりも、むしろこれに反対しようとした者であるということは皮肉に思えます。

金融市場の観点からは、エネルギーコスト上昇に伴うインフレ予測の上方修正に対応して、国債利回りが上昇しています。その点において、最大の変動は英国債市場で見られました。英国債利回りはここ最近、イングランド銀行(英中央銀行、BoE)が3月に利下げを実施するとの期待感から低下していたためです。

英国ではインフレの波及的影響が他の地域よりも大きいことは確かではあるものの、同時に英国経済が苦しんでおり、足元の出来事は拡大するアウトプット・ギャップを悪化させるのみであるという点も注目しています。ベイリー総裁とその同僚は、スポット価格の動きよりも、このような先行き分析により注意を払う傾向があるため、インフレ環境がここからさらに大きく悪化しない限り、BoEは緩和を継続する可能性が高いと考えています。

相対的に見れば、米国債や独国債、日本国債での変動はより限定的となりましたが、イールドカーブはフラット化しており、年初にイールドカーブのスティープ化が幅広いコンセンサスの見方とされていたことからも、一部投資家にとってはやや痛い動きとなっています。一方、社債のスプレッドはマクロ環境の進展を踏まえて拡大しています。しかし、その動きは、過去の重大なボラティリティ・イベント比較すると、相対的に秩序ある、抑制されたものでした。

その一因として、米国株の下落局面では米リテール投資家が買いを入れようとし続けていることが挙げられます。ただし、先週の韓国株での資金フローの急激な反転に見られるように、レバレッジを積み上げながら買いを続けている投資家が強制的に手放し始めた時には、常にリスクとなります。これは、慢心に対する警告と言えるでしょう。

社債についてはより慎重なスタンスを維持しており、価格評価がかつてのように割高には見えない水準までスプレッドは拡大したものの、この動きの初期段階で押し目買いを始めるには時期尚早と考えており、当面は紛争の収束をより容易に見え据えることが出来るようになるまで待つべきであるとみています。

これは現在のところ見えにくく、最終的にイランでの体制転換が望まれるのであれば、歴史的に見れば地上部隊投入の必要性が示唆されますが、米政権はこれにははるかに消極的です。

通貨市場では、米ドルがアウトパフォームした一方、ユーロや英ポンドが苦戦しました。国レベルでの相対的な経済的影響を考えると、これらの動きは短期的には正当化されると言えるでしょう。しかし、先週の出来事を踏まえ、自分と異なる意見を有する者に対して何の敬意も払わない、気まぐれな大統領による動きを目の当たりにしたグローバル投資家が、米国資産への配分を改めてどこかで考え直すことになるかもしれません。

この観点から、攻撃開始時に米ドル売りのポジションが広く保有されていたことからも、短期的に米ドル高傾向は続く可能性があるものの、これにより、魅力的なバリュエーションで米ドルのショート・ポジション構築の機会が生み出される可能性があるとみています。その点においては、円相場に注目しており、介入の節目となる可能性がある1米ドル160円近辺が日本円のロング・ポジション構築の好機となる可能性があるでしょう。

その他の市場に目を向けると、エマージング市場(EM)資産にとっては厳しい1週間となりました。同地域は、常に地政学的なリスク要因に対してより敏感に反応する傾向があります。また、これらの市場は他の多くの高利回り資産よりも流動性が高いことから、ボラティリティが増幅される傾向があります。

中東資産の下落は、不確実性の高まりを考えると極めて理解可能です。しかし、他の地域に関してはそれほど明確ではありません。そのような点を踏まえれば、米ドルが大幅高となったり、グローバルなリセッション見通しが急速に高まらない限りは、下落局面をポジション積み増しの好機と見ています。

今後の見通し

この先を見据えると、全ての市場参加者が今後数日間の出来事を注視し続け、人工知能(AI)や足元の経済指標関連のテーマは、一旦は二の次となるでしょう。

世の中がますます不安定で危険になってきていることで、国防支出に関する必然性が強調され続けるであろうとみています。欧州はその点で遅れを取っており、世界的な舞台では周辺化され続けています。

そんな中でも、英国がこれほど軽んじられ、それほど重要ではない存在であると感じられたことは過去にはありませんでした。ドローンやミサイル防御を提供出来る船舶が1隻だけであるという事実は、4年間のウクライナ戦争からの教訓がいかに十分な迅速さで活かされていないかを露呈しています。また、その艦船が港に停泊していて、数週間に亘って中東での大規模な集結が構築されていたにも拘わらず、それに対応する準備さえ出来ていないという事実も、英国の戦略思考と計画能力のレベルを露呈しています。

先週末、ドローン攻撃を受けたドバイのホテルに滞在しており、非現実的な出来事を体験をしました。他の動揺した宿泊客と一緒に避難しながら、私たちはこれまでほとんどの人が直接経験すると予想していなかったであろう瞬間を目の当たりにしているとの感覚がありました。

プールサイドに座りながら、空から撃ち落とされたドローンやミサイルを眺め、その後、現実が体に染み込むまでに少し時間が掛かりました。そしてこれは、グローバルの投資家にとっても同じかも知れないと感じました。

私たちの目の前には、多くの異なるシナリオや道筋があり、それは非常に穏やかでポジティブなものから、かなり醜い見た目のものまで、実に様々です。ある時点では、より明確な道筋が描かれるでしょうが、今のところは、しばらくの間避難所に身を寄せることが賢明であるようです。  

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