海峡(Strait)に対するストレートな答えを求めて

Mar 30, 2026

二つのシナリオ:交渉、あるいは激化

コメント要約

  • 中東情勢の緊張:イランはホルムズ海峡の封鎖を通じて影響力を維持する中、米国とイランの交渉を巡る矛盾したメッセージは依然として市場の大きな変動要因となっています。
  • 二つの対蹠的なシナリオ:交渉による解決が実現すれば、原油価格は1バレル80米ドルとなり、緩やかなインフレになる可能性がある一方、事態が激化すれば、ブレント原油価格は1バレル150米ドルを超え、欧州経済は景気後退に陥る可能性があります。
  • プライベート市場のストレス増大:予想されていた利下げから金融引き締めへの転換は、レバレッジの過剰な借り手にとってネガティブとなりますが、市場全体にシステミックな影響をもたらすとは想定しづらいと考えています。
  • マクロ経済見通しは不透明:政策当局者はインフレ予測を上方修正し、成長見通しを下方修正しており、供給における混乱は今後数ヶ月間の食料価格と半導体生産に悪影響をもたらす可能性があります。
  • 霧が晴れる時:状況がどちらの方向に進んでいるのかを見極めることが可能となれば、マクロ経済を覆う霧は比較的早期に解消され始めるとみています。

先週も、中東情勢が金融市場の話題を独占し続ける一週間となりました。月曜日にトランプ米大統領がイランに対して、ホルムズ海峡(the Strait of Hormuz)を開放するよう48時間の期限を設定したことを受け、債券と株式は大幅に下落して週の初めを迎えましが、月曜日に大きく反発しました。イラン政権との交渉が進展しているというトランプ氏のツイートが、投資家のセンチメント急変を促す材料となりました。

しかし、イランが交渉を否定し続け、トランプ氏の発言に反発していることから、上昇局面はその後数日間で勢いを失っています。戦争の霧の中、投資家は相反するメッセージとシグナルを踏まえて、誰の言葉を信じるべきかを推し測ろうとしています。

ただし、明白であると思われることは、米政権が紛争を速やかに終わらせ、グローバル経済が被っている痛みを緩和したいと望んでいるということです。紛争の初期段階で、米政権はイランのミサイル発射能力が3月15日までに根絶されると報告を受けていたようで、それ故に、ここ数日では懸念が高まってきています。

この点については、イランの革命防衛隊がまだ攻撃を実行する状態ににあることは明らかで、迎撃ロケットの供給がイランの兵器の在庫よりも速く枯渇しつつあるように見えます。こうしたことから、この数週間では米国が必死に一方的な勝利宣言をし、出口戦略を見つけようとしているように感じられます。

しかし、2025年4月にトランプ氏が市場圧力の高まりに直面して関税政策を修正することが出来たのとは異なり、現在の戦闘において、そのような急な反転を実現することははるかに困難と思われます。

イラン政権は、今回の紛争を、その存続を問う脅威として捉えてきています。米国とイスラエルがイランの体制転換に関する意図を明確にしているためです。また、強硬派である革命防衛隊は、指導部が強制的に排除された後、国内での権力掌握をより強めているようです。

したがって、米国がイラン政権と交渉したいとしても、その交渉相手が、実際に国を支配する者の代理として交渉することが出来るという保証はありません。さらに、イラン政権は、紛争の延長とホルムズ海峡の閉鎖が向こう数週間で、自分たちに有利に働くと結論づけているように見受けられます。

トランプ氏は同地域に追加部隊を派遣していますが、米政権が地上軍を配置し、長く面倒な紛争に引き込まれることを真に望んではいないということをイラン側は認識しています。

結果として、イランは、時間とともに自分たちのレバレッジを増大させ続けられると結論付けたと見え、紛争をいつどのように終わるかを決定出来るのはイランになっているように思います。そのような状況によって、イランは賠償金支払いや制裁解除、安全保障上の保証、ホルムズ海峡を支配し続ける権限といった一連の要求を行っているとみられ、同地域内を支配する権限を確保しようとしています。

こうした条件が満たされれば、革命防衛隊が勝利宣言し、政権をより強い状況にする可能性があります。しかし、このような結果は、トランプ氏がいかにこれを自分自身の何らかの勝利にねじ曲げようとしても、米国やイスラエル、または湾岸諸国にとって到底受け入れられないものです。

しかし、イランが効果的にトランプ氏の虚勢を使い、交渉が膠着状態に至るのであれば、その時点で米国がどのような決定を下すかで、ほとんどの事が決まるでしょう。

端的に言えば、今後数週間を見据えて、2つの対照的なシナリオを提示することが出来ます。一つ目は、トランプ氏が交渉期限を延長し、進展がなされていると主張する可能性が挙げられます。それでも地上での敵対行為は続きます。最終的に、ほとんどの戦争は交渉の結果、何らかの形で終結します。継続中の議論の文脈において言えば、米国がイランに十分なものを与え、今後数週間以内に敵対行為の終了を宣言することが可能です。

このシナリオでは、原油価格は1バレル80米ドル付近まで戻ると想定していますが、貿易面での混乱が続くことにより、世界のインフレは依然として0.8%程度上昇し、結果として成長には0.4%のマイナスの影響が生じるとみています。また同シナリオ下では、リスク資産は上昇する可能性がありますが、株式が以前の高値、社債スプレッドもこれまでの最もタイトな水準に達する可能性は低いでしょう。また、このような状況を踏まえ、欧州中央銀行(ECB)は保険的に政策金利を0.25%引き上げる可能性があると仮定する一方、イングランド銀行(英中央銀行、BoE)と米連邦準備制度理事会(FRB)は金融政策を据え置く可能性があるとみています。  

二つ目のシナリオでは、交渉に進展が見られず、月初に開始した任務を「完了する」ことが唯一の選択肢、と米国が結論付けるものです。この点に関しては、革命防衛隊がホルムズ海峡へのアクセスと条件をコントロールして、サウジアラビアや湾岸諸国を人質とする地域マフィアとして活動する状況に置くというイラン政権の考えに、強い懸念を持つこれらの湾岸諸国が強硬になってきていることは興味深いものでした。

このシナリオでは、米国主導の地上作戦が紛争のさらなる激化を招き、イランはグローバル経済や金融市場、および米国を服従させるということを目的として、持続的な攻撃を通じて可能な限り多くの損害を与える可能性があるでしょう。そのような紛争の激化は極めて危険であり、その場合、他の地域からの供給が不足分を満たすまでの今後12ヶ月間に亘って、市場は1,000万バレル(世界原油産出量の約10%)を事実上失うことを意味すると思われます。

紛争が激化した場合、米国はエネルギー輸出を制限し、国内価格を押し下げて、紛争の最悪の事態から米国の消費者と企業を保護することに迅速に対応すると考えています。しかし、欧州とアジア経済への影響は深刻となる可能性があり、原油価格は、需要が崩壊することによって需要と供給の均衡が見つかるところまで上昇し、ブレント原油で1バレル当たり150米ドルを超える可能性があります。

これを踏まえても、米国経済は約2%のGDP成長を続けることが出来、インフレ率は4%でピークに達すると予想することも可能です。対照的に、同シナリオにおいては、欧州と英国がリセッションに陥ると予想されます。ユーロ圏ではCPIが4%に、英国では6%に上昇すると予想されます。

その場合、FRBには利上げ圧力を掛かる可能性はあるものの、おそらく政策を据え置こうとするでしょう。一方で、ECB及びBoEは、エネルギー価格ショックが中期的な期待インフレの加速につながらないことを確実にするため、今後数ヶ月で100bpsの利上げを強いられる可能性があるとみています。

このようなネガティブなシナリオにおいては、税収の低下や、脆弱な消費者をエネルギーコストの高まりから保護する動きや、さらに世界的に不確実性が高まっている中で防衛支出を追加する緊急の必要性によって、広範な財政悪化が生じると考えています。したがって、この場合、国債利回りはイールドカーブ全体で上昇し続ける可能性があり、リスク資産のより大幅な下落が起きる可能性があります。

これまでに、世界の債券市場において既に大幅な金利上昇が見られてきましたが、株式や社債の動きは比較的控えめでした。この価格動向の一部は2025年の市場の経験によって説明されると考えています。昨年4月のトランプ氏の政策転換は、価格がその後、振り返ることなく上昇を開始するきっかけとなりました。

これを踏まえて、投資家は現在の危機においても同様の軌跡を無意識に探すようになっており、トランプ氏が明らかに戦争を速やかに終わらせようとしていることから、投資家は今回も有利な条件が整うまでそう遠くないと考えるようになっています。そうであればこそ、これらの資産クラスの投資家は現在の紛争を「見過ごす」のを望み、ポートフォリオのポジションを調整することをためらうでしょう。

しかし、ネガティブなシナリオの現実が明白になれば、視野に入ってくる新たな現実がそのような慢心を試す余地が多くある点が浮き彫りになってくる可能性があります。

このような投資環境を踏まえ、現時点ではアクティブなリスクを取ることは非常に難しいとみています。過去1ヶ月の金利市場のボラティリティはポートフォリオに痛みをもたらしており、ネガティブな価格動向を受けてポジションを解消しました。現在、アクティブなポジションはほぼフラットとなっています。

しかし、状況がどちらの方向に進んでいるのかを見極めることが可能となれば、マクロ経済を覆う霧は比較的早期に解消され始めるとみています。その時点において、より決定的な行動を起こせるように備えています。

過去には、(他の人がポジションを売却しているような)適切なタイミングでリスクを積み増すことが出来れば、市場のミスプライスがその後の良好なパフォーマンスを創出する機会を生み出すことを見てきました。したがって、現在のところは慎重な姿勢が賢明であると考えています。

中東の話題とは別に、プライベート市場に関してはストレスが継続的に蓄積しています。この領域における高いレバレッジ水準を踏まえると、2022年以来の金利上昇によって、これらの企業のフリーキャッシュフローが債務返済コストとして消費され、企業の収益創出や新規公開株式(IPO)を行うための能力が損なわれていることがわかってきています。

プライベート資産が立ち往生している中、これらの企業の信用力の毀損が表面化するまでにそれほど多くは必要とされません。デフォルトが5%を超えるとされる中、これらの企業の20%がクーポン支払いの代わりにPIK形式を採用している状況下、ストレスは時間を掛けて蓄積されてきました。

また足元では、ソフトウェア関連セクターで予想される人工知能(AI)による破壊に関連した懸念もさらなるネガティブ材料となっています。ソフトウェア関連企業はこれらの戦略の投資の約30%を占めています。したがって、プライベート市場は、何らかの救済を得るために利下げを望んでいます。

しかし、今後数ヶ月で予想されていた利下げが、今や金融引き締めの可能性に替わっており、これはレバレッジの過剰な借り手にとって痛手となります。ポートフォリオの評価減によって、同資産に対する投資家のセンチメントが悪化している中、これはプライベート市場における痛みを増幅しています。

とは言いながらも、プライベート市場のより大幅な悪化が、市場全体にシステミックな影響をもたらすとは想定しづらいと考えています。エクスポージャーは広範な投資家層に分散され、長期間に亘って流動性がクローズされている構造を有しているためです。プライベート資産の需要が減退すれば、一部の発行体はローンや債券をパブリック市場で発行することに回帰する可能性があり、発行圧力が掛かる中でスプレッドに重石となる可能性はあります。

また、蓄積されたエクスポージャーを踏まえると、大幅な下落は米国の銀行のバランスシートに重石となる可能性があります。ただし、欧州の銀行は相対的に見て、はるかに強固なポジションにあるように見受けられます。

この文脈で言えば、ユーロ圏で仮に経済シナリオが悪化し、不良債権が増加したとしても、これが高金利と同時に起こる可能性があるという事実は、銀行の利ざやの追い風となり、収益性を支える要因となります。したがって、ボラティリティ上昇や下落の加速によって銀行債がより大幅に売られた場合、中期的な視点から割安感が高まり、ポジションを積み増したいと考える領域となるでしょう。

一方、エマージング市場では、同市場における投資家の考え方として、危機が発生した場合、「まず最初に売却し、その後考える」という傾向があることに注意すべきと考えています。その結果、リスク削減の最初の段階では、最も幅広く保有されている資産ほど、下落が大きくなります。

この点で言えば、コロンビアやブラジル、メキシコなどの国での現地債の相対的なアンダーパフォーマンスは顕著です。これらの国は全て原油輸出国であり、中東の紛争によるネガティブな影響に晒されていない地域です。次のフェーズとして、初期のリスク削減が完了し、EMにおける相対価値の投資機会に、より焦点が当てられる段階に突入するとみています。

 今後の見通し

この先を見据えると、原油及びガス価格の高騰は、すでにグローバルに経済的な影響をもたらしており、政策当局者は継続中の混乱を踏まえた上での経済見通しを反映し、インフレ予測を上方修正し、成長見通しを下方修正しています。また、ウクライナによるロシアの港に対する攻撃によって、潜在的な原油輸出供給の最大40%に影響を与え兼ねないという点も注目に値します。ウクライナは、ロシアが原油価格の上昇による勝者にならないようにしているとみられます。

一方、さまざまな契約においてフォース・マジュール(不可抗力)条項がトリガーされている中、国内の利益を保護するために輸出を制限するナショナリズム的な政策が採られる余地があり、今後の経済的痛みは国によって異なる可能性があるでしょう。さらに、肥料の供給が減少していることによる収穫高の減少も、数ヶ月先の食料品価格インフレへのリスクを示唆しています。

そんな中、ヘリウムの不足は高品質チップの生産に悪影響を与え、不足につながる可能性があることも、成長の減速や物価上昇に反映される可能性があります。

矛盾した大量の情報に接する中、真実を嘘や誤誘導と区別しようとすることは、現時点で思ったほど容易ではありません。例えば、トランプ氏の交渉進展に関する主張は、実際には彼が攻撃の準備が出来ている軍隊を集積している瞬間に時間を買うための煙幕である可能性は十分にあります。また、イランが現在主張しているよりも取引を結ぶことにコミットし、紛争を終わらせようとする可能性もあります。

このような状況を踏まえれば、金融市場がある種の剣が峰の状態で取引されているように感じられることは十分に理解出来ます。もちろん、最終的には歴史がこれを裁くことになるでしょう。しかし、米国のコメンテーターでさえ、戦争の真っ只中に彼ら自身の司令官からの発言を懐疑的に扱うという事実は多くを物語っています。

ホルムズ海峡(Strait)に対するストレート(Straight)な回答を見分けるのは難しいようですが、すべてが今後数日間で明らかになるとみられ、それまでは身を屈めることが理にかなっているでしょう。ただし、今回のコメントを締めくくる考察として、リスク資産が現段階で成長ショックを価格に織り込むよりも、金利市場がインフレショックをはるかに早い段階から織り込んでいることは衝撃的であり、ここから先を見据えたとき、より悪いシナリオに転じる可能性があるということを示唆しているかも知れません。

本資料はブルーベイ・アセット・マネジメント・インターナショナル・リミテッド(以下、当社)が情報の提供のみを目的として作成したものであり、特定の投資商品の取引や資産運用サービスの提供の勧誘又は推奨を目的とするものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。本資料は信頼できると判断した情報に基づき作成しておりますが、当社がその正確性、完全性、妥当性等を保証するものではなく、その誤謬についての責任を負うものではありません。本資料に記載された内容は本資料作成時点のものであり、今後予告なく変更される可能性があります。また、過去の実績は将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。なお、当社の書面による事前の許可なく、本資料の全部又は一部を複製、転用、配布することはご遠慮ください。当社との金融商品取引契約の締結にあたっては、下記の投資リスク及びご負担いただく手数料等について契約締結前交付書面等を十分にお読みいただきご確認の上、お客様ご自身でご判断ください。

 

投資リスク
当社との投資一任契約に基づく運用においては、原則、外国籍投資信託を通じて、主に海外の公社債、株式、通貨等の値動きのある資産に投資しますので、基準価額が変動します。従って、契約資産は保証されるものではなく、投資元本を割り込むことがあります。運用による損益は全てお客様に帰属します。主なリスクとして、価格変動リスク、為替変動リスク、金利変動リスク、信用リスク、流動性リスク、カントリーリスク等があります。また、デリバティブ取引等が用いられる場合、デリバティブ取引等の額が委託保証金等の額を上回る元本超過損が生じることがあります。なお、投資リスクは上記に限定されるものではありません。

 

手数料等 
当社の提供する投資一任業に関してご負担いただく主な手数料や費用等は以下の通りです。手数料・費用等は契約内容や運用状況等により変動しますので、下記料率を上回る、又は下回る場合があります。最終的な料率や計算方法等は、お客様との個別協議により別途定めることになります。

 

Fee table

 

なお、上記には、投資一任契約に係る投資顧問報酬、外国籍投資信託に対する運用報酬が含まれます。この他、管理報酬その他信託事務に関する費用等が投資先外国籍投資信託において発生しますが、契約内容や運用状況等により変動しますので、その料率ならびに上限を表示することができません。