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コメント要約
先週は、米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを決定した後も、米国債利回りがここ最近の取引レンジ内の水準に留まりました。パウエルFRB議長がFF金利の中央値を3.625%に引き下げることは広く予想されており、米連邦公開市場委員会(FOMC)の金利予測や会合後の議長のコメントにサプライズはほとんどありませんでした。
今後の金融政策の道筋は、かなりの程度、経済指標次第となる見込みで、現在の政策金利は中立的な水準からさほど遠くないとみられます。こうした状況の中、ハト派は来年の労働市場における下振れリスクを指摘しています。 一方タカ派は、すでに過去5年近くに亘りFRBの目標を上振れしているインフレの軌跡により焦点を当てています。
当社の見解では、特に2026年上半期においては、経済成長とインフレがFRBの現状予測を大きく上回る可能性があると考えています。政府機関閉鎖の影響により、今四半期の成長データは下方に歪む可能性があるものの、基調的な需要のモメンタムは依然として堅調であるとみています。
先週発表された経済指標では、底堅い求人数や中小企業の景況感の改善が確認され、そのような見方を裏付けています。 また、減税による恩恵や規制緩和、さらにこれまでの利下げの遅行効果も経済活動を押し上げると見られる中、来年の初めに掛けて複数の追い風が期待されます。人工知能(AI)関連の企業投資支出が継続的に加速していることも踏まえれば、尚更です。
このような見方を前提として、2026年上半期の米GDP成長率は平均3.5%と予測しており、これはFRBによる2026年を通した予測を1%以上上回る水準です。同様に、インフレもCPIで見て3.5%に上昇し、FOMCが重視する個人消費支出(PCE)コア・デフレーターも、FOMCの最新の予測を約0.5%上回る水準になるとみています。 したがって、今後数ヶ月間で経済指標にネガティブ・サプライズが見られない限りは、米国で追加利下げが実施されるべき根拠は実際にはないとみています。
しかし、次期FRB議長が明確な緩和バイアスとともに就任するとの市場の認識は、トランプ氏の発言も踏まえれば大きく変化しないでしょう。したがって、現状市場が織り込んでいる、今後6ヶ月での1回の利下げ、さらに来年下半期の追加緩和といった見方に強く異論を唱えるのは難しい状況です。
したがって、考えを改めさせるような大きな経済指標面でのサプライズがない限り、米国債についてはレンジ内での取引が続くとみています。現時点では、米国金利に対するアクティブなポジションは持っていませんが、ブレークイーブン・インフレ率について、インフレの2%目標への回帰について当社よりも楽観的な見方が織り込まれている点については注目しています。
大西洋を挟んだ欧州では、金利への上昇圧力が続きました。オランダの年金制度変更が近づき、投資家は長期債の保有に極めて慎重になっています。また、季節的に1月は欧州国債の発行が増加するものの、その買い手が不在であることへの警戒感が金利を押し上げています。
さらに、欧州中央銀行(ECB)のシュナーベル理事のややタカ派的な発言も、ここ1週間のユーロ圏債券市場の弱気なセンチメントにつながりました。しかし、欧州のガス価格が下落していることを踏まえると、今後数ヶ月間でユーロ圏のインフレ率は目標を上回るよりも下回る可能性の方が高いとみています。
このような観点から、足元の金利上昇は、最も選好する市場で金利リスクを積み増す好機になるだろうとみています。ここでは特に、ノルウェー国債に注目しています。ノルウェー中央銀行は政策金利を4%に維持していますが、今後数ヶ月で北欧経済におけるインフレが低下するにつれ、利下げが予想されます。
また、チェコの債券における短期ゾーンにも投資妙味があるとみています。現在、チェコ国立銀行(CNB)が今後数ヶ月で75bpsの利上げをすると予想されていますが、このような利上げは極めて実現性が低いと考えています。
また、英国債の見通しについても、より前向きになりつつあります。スターマー氏とリーブス氏は、少なくとも来年5月まで現職に留まる可能性が高いとみています。5月に予定されている地方選挙では、それまでの間に何が起きたとしても(英労働党にとって)悲惨な結果になると知った上で、後継に名乗り出る者はいないでしょう。
一方で、英国の消費や企業マインドの弱さを示す証拠が増えてきており、このことがインフレのより急速な減速につながり、イングランド銀行(英中央銀行、BoE)が当社の予想していた以上の利下げを実施する可能性があります。
市場間での比較で見ると、米国経済の相対的な堅調さにもかかわらず、2025年に米10年国債利回りが45bps低下した点も興味深いでしょう。一方、英10年国債利回りは、経済パフォーマンスが相対的に弱いにもかかわらず、この間、ほぼ横ばいとなっています。したがって、英国の政策に対する信頼性が回復してくれば、今後1年間で今の相対的なパフォーマンスが逆転する余地があるとみています。
インフレ低下と金利低下は英国の基礎的な財政状況の改善に寄与するため、金利上昇が財政赤字を悪化させるという過去2年間の負の連鎖が、金利低下と財政赤字改善という好循環にむしろ転じる可能性もあると言えるでしょう。
このような状況を踏まえ、過去1週間では英国債のデュレーションを広範な年限において積み増しています。また、最近の売り圧力により金利が上昇した、オーストラリアの長期金利にも投資妙味を見出しています。英国と同様に、オーストラリアのイールドカーブは非常にスティープで、30年国債利回りで見て5.2%超という水準は、米国債と比較しても魅力的に映ります。
さらに、コロンビアやブラジルなどの一部のエマージング国市場にも注目しています。これらの国では金利が相対的に極めて高い水準にありますが、インフレが抑制されていることにより、今後数ヶ月で中央銀行が責任ある政策緩和を行う余地があるとみています。
コロンビア及びブラジルについては、ともにトランプ氏寄りの候補者や政策が台頭しつつあることも期待材料です。これは、トランプ氏が「米国の裏庭」とみなす西半球諸国全体に対して、米政権が強い影響力を及ぼそうとしているためです。
このような動きは、数ヶ月前のアルゼンチンのミレイ政権への過剰な支援や、より最近ではベネズエラにおける砲艦外交にも見られました。その意味で、これは今後数四半期に亘り、中南米のエマージング諸国に影響をもたらしかねない、重要なテーマとなる可能性があるでしょう。
FOMCが終わり、今週は英国と日本の中銀による金融政策決定会合に注目が集まります。それぞれ25bpsの利下げと、25bpsの利上げが行われる可能性が非常に高いとみています。
日本については、高市総裁がリフレ政策と成長の最大化にコミットしていることは明らかです。先週実施した首相の顧問アドバイザーとの面談を通じて、当社では高市氏が年明け早々に解散総選挙を実施し、議会でより強い基盤を確保しようとするであろうとの見方を持っています。高市氏は有権者の間で高い支持率を維持しており、その支持が衰える前にこれを活用したいと考えているとみています。
一方で、同氏が円安に対して神経質であることも明らかです。円の価値が再び下落すれば、高市氏の人気がリスクにさらされることを認識しているためです。このような観点から、同氏が12月の利上げについて日銀にゴーサインを出したと見るのは自然でしょう。当社では、植田総裁が金融政策の正常化に向けた安定的な道筋を主張する機会としてこれを活用するとみています。
2026年にさらに2回の利上げ、2027年初めに1回の追加利上げを予測し、2027年度の開始時点までに日銀が政策金利を中立バンドの下限とする1.5%まで引き上げると予想しています。
日本10年国債利回りは、ここ1週間で2%近辺で幾らか支えられ、当社では保有していた日本金利のショート・ポジションを同水準でやや縮小させました。利回りは依然として上昇傾向にあるとみているものの、日本の基準からすればここ最近の動きは比較的急速であったとみており、一旦安定した期間に入る可能性があるとみています。2026年に突入するにあたり、日本30年国債は需給バランスの改善によって引き続き他の年限をアウトパフォームすると予想しています。
また、絶対的な利回り水準が日本国内の投資家にとって本質的に魅力的な水準に近づいていると考えています。一部のコメンテーターは、日本の長期的な財政持続可能性に懸念を示していますが、国内における潤沢な貯蓄や強い対外純資産ポジション(国家レベルでの純債務は80%程度と、他の多くの先進国の水準を大幅に下回る)を考慮すれば、そのような懸念が現実化する可能性は非常に低いと考えています。
円については、バリュエーション面では魅力的であると考えていますが、比較的堅調な経済状況にもかかわらず、円安圧力を受けなかった場合に、高市氏がよりハト派的な金融政策を推し進める可能性への懸念が、円が反発するのを妨げるキャリートレードを助長する要因となる可能性があります。
社債市場では、スプレッドがインデックス・レベルで比較的安定した動きとなっており、このような状況は2026年半ばまで続くとみています。より細かく見てみると、ハイ・イールドのクレジットでは、安定したB格のユーロ建てローンのリターンが+4.7%である一方、CCC格の発行体リターンが-3.4%というばらつきが見られていることは興味深いと考えています。
このようなディコンプレッションの値動きは市場の最も弱い部分に限定されていますが、ネガティブな報道が見られた信用力の低下している企業が、市場から早々に制裁を受ける傾向を示しています。
その意味で、2026年にかけて、クレジットの選別がますます重要になるとみています。またこのような傾向は、プライベート市場のストレスの高まりによっても裏付けられるとみています。発行体が利息の支払いを継続できないケースが日増しに増えていることから、現在、プライベート債務の20%がPIK形式となっています。
為替市場では、米ドルに対するユーロの上昇基調が続きました。ユーロと米国の金利差が縮小し続けていることがその背景にあります。ドイツ10年国債利回りは2025年に50bps上昇し、過去1年間で米国債とドイツ国債の利回り差は100bps近く縮小しました。
これは、ユーロ圏経済の基調的なパフォーマンスが依然として失望的で、成長における米国例外主義が2026年にも持続しそうな状況下での、ユーロの相対的な強さを説明する要因となります。
この先数ヶ月を見据えると、米国債がドイツ国債に対してさらにアウトパフォームする可能性は低いとみています。 2025年のドイツ国債利回り上昇の一因は、ドイツの財政拡張によるものでしたが、ユーロ圏全体では来年の財政インパクトはそれほど大きくないとみています。
また、向こう6ヶ月でユーロ圏のインフレは低下するとみられる一方、大西洋の反対側ではインフレが上昇するとみています。したがって、来年前半は米ドルが堅調になると予想していますが、為替市場の動きのドライバーとなる他の要因を考慮すると、そのような見方に強い確信を持っているわけではありません。
2026年を見据えると、昨年の今頃と比べて、ドナルド・トランプについて話したり、懸念したりすることが少し減っているかもしれないと考えるのは興味深いかも知れません。多くの側面から、今後数ヶ月の間に大きな政策変更や新たなイニシアチブが発表されるとは想定しておらず、米大統領が金融市場を動揺させる力は依然として残っているものの、その挑発的発言や強気な態度に対してある程度鈍感になることを覚えたようにも思えます。
グローバル金融市場は過去6ヶ月間比較的落ち着いており、2026年前半もこのような状況が続くと予測してしまいたくなります。この文脈において興味深いのは、ワシントンDCからの政策動向ではなく、AIが今後1年間で投資家を悩ます最大の懸念材料となりつつあることです。
今後数ヶ月間、AI関連の投資支出が加速し続ける限り、より楽観的なストーリーが維持される可能性があります。しかし、2026年後半に、投資ペースが頭打ちになり始めたと感じられた場合、バリュエーションへのリスクが高まる可能性があるでしょう。特にリテール投資家が集中する投機的な株式では、モメンタムが市場を動かす大きな要因となります。
とは言え、今後起こり得るマクロ・イベントも多く、過去の経験則上、予想外の出来事や考慮不足の要因こそが、市場への最も深刻な影響をもたらす可能性があることも知っています。このような点を踏まえ、来年もボラティリティが抑制されたままであるとは考えづらく、アクティブ運用の戦略において活用出来るトレンドが確実に出現するとみています。
さて、今回のコメントを2025年最後の週次コメントとさせていただき、また新年にコメントの配信を再開します。今年を通してコメントが皆さまにとって興味深く、有用であったことを願うとともに、読者の皆様に素晴らしいクリスマスと幸せな新年をご祈念申し上げます。そして最後に、例年通り、来年に向けた大胆な予測をいくつか共有したいと思います!
おまけとして、ご参考までに12ヶ月前の予測の答え合わせをしてみたいと思います。
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