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コメント要約
先週の金融市場では、トランプ米大統領によるリサ・クック米連邦準備制度理事会(FRB)理事の解任が主な話題となり、米国債のイールドカーブのスティープ化が続きました。クック氏が解任理由を巡って異議を申し立て、最終的に最高裁での審理に至る可能性が高いものの、ここ数週間ではホワイトハウスがFRBに対して優位に立ちつつあるという感覚が強まっています。
このような状況下において、税制優遇措置の発動や規制緩和による経済活動促進の恩恵が来年の成長軌道の支えとなるであろうにも拘わらず、2026年に掛けてのより積極的な利下げに対する期待感が米短期国債利回りの支えとなっています。
これまでにも述べてきた通り、現米政権は財政赤字を削減するために利下げが不可欠であると考えており、トランプ氏の経済担当チームはこれが引き起こす可能性のあるインフレ・リスクを概ね軽視しています。
しかし市場は、政策が過度に緩和されることで価格安定性が脅かされるリスクを、より懸念視しています。その結果、長期債利回りは恩恵を受けられず、市場は中期的なインフレ・リスクを担保するためのターム・プレミアムの上昇という形で反応しています。とは言いながらも、米イールドカーブは歴史的に見てそれほどスティープではありません。
さらに、米国の2年/30年債のイールドカーブは、現在のところ、ユーロ圏や日本、英国のそれよりもフラットな状態にあります。このような点を踏まえ、トランプ氏の「FRB支配」や財政支配に関する批判の一部は、大袈裟かもしれません。
この先を見据えると、今後数年間ではインフレよりも成長を優先する傾向のある米連邦公開市場委員会(FOMC)が形成される可能性があると考えています。このような見解は短期的にはリスク資産を支える可能性がありますが、今後12か月間の緩和策によって、後に物価上昇リスクを抑制するためFRBがより積極的に利上げをせざるを得なくなった場合、リスク資産はバリュエーションの観点から疑問符がつく可能性もあります。
したがって、米イールドカーブは今後数週間でさらにスティープ化する余地があると考えています。とりわけ、先週のジャクソンホール会合においてパウエル氏が利下げに前向きな姿勢を示したことを踏まえれば、尚更です。とは言いながらも、9月のFOMCでの決定においては、今後の経済指標が鍵を握るでしょう。この文脈において、次回の雇用統計や消費者物価指数(CPI)の内容次第では、50bpsの利下げや25bpの利下げ、据え置きの全ての選択肢が可能性を残していると言えるでしょう。
フランスでは、バイル首相が9月4日に信任投票を実施する決定を下したことがフランス資産の下落につながり、フランス国債のドイツ国債に対するスプレッドは一時80bpsに拡大しました。より多くの支持を得られない限り、この秋、予算案を可決させるためにバイル氏が苦戦するであろうことは以前から明白でした。
そのためバイル氏は、危機感を煽ることで妥協への意欲を引き出そうと、自らの運命を切り開こうとしているように見受けられます。しかし、これは非常に厳しい試みのように思えます。社会党と国民連合(RN)がいずれもバイル氏に反対票を投じる意向を示していることから、バイル氏が信任を得て首相の座に留まる可能性は極めて低いように思われます。
またこれを受けて、マクロン大統領が新たなテクノクラートの首相を任命し、予算案を通過させることは困難であり、解散総選挙に踏み切らざるを得ない可能性があります。世論調査において支持率でRNがリードしていることを踏まえれば、2024年には及ばなかった同党が今回は勝利する可能性があります。実際、マクロン大統領は、極右政党に政権を委ねることで、同党が有権者に約束してきた多くの公約を実現できない場合、2027年の大統領選挙における同党の台頭を抑制できるとの算段を立てる可能性すらあります。
このような政治的不安定さはフランスのスプレッドにプレッシャーを与える可能性があり、今後数か月以内に非中道派の首相が選出されれば、フランス国債のスプレッドは中期的な政治的不確実性を反映し、100bps程度に拡大する可能性があるとみています。ただし、2027年の大統領選挙の結果を投資家が明確に見通していない限り、フランスにおける議会権限は限られていることから、これがボラティリティの高まりを抑制する役割を果たすと考えられます。
もちろん、マクロン大統領自身が早期の大統領選挙を呼びかけて危機感を利用して、有権者が急進的な政治的に過激な主張に向かわないしようとする可能性も否定できません。しかし、昨年の早期議会選挙が同氏にとって大きな失敗に終わったことを踏まえれば、この選択肢に対しては非常に慎重になると考えられます。
根本的なことを言えば、フランスが国家として直面している大きな課題は、フランス国民が生活水準やライフスタイルを当然の権利であるとみなしている一方で、それを維持するための対価として必要な努力を十分にしていない点にあります。
長きに亘って、フランスは自国の実力を超えた生活を続けてきましたが、変化への意欲はほとんど見られてきませんでした。その結果、過去数十年にわたり債務水準は着実に上昇し、財政赤字は約5.5%に達していることから、フランスはユーロ圏の過剰赤字手続き(EDP)の対象となっており、より大きな財政責任を果たすことが急務となっています。
しかしそれでも、社会があらゆる変化に抵抗し続けるのであれば、制御不能な力と動かない物体が衝突するような状況が生じつつあるように見受けられます。このような理由から、足元ではフランス資産に対して構造的なショート・ポジションを構築しており、徐々に進行する危機的な状況において、現在の局面がどのように展開するかを注視しています。
海峡を越えた英国では、英国債が今週も苦戦を強いられ、次回の予算案を巡る選択肢を検討する労働党政権にさらなる圧力を掛けています。これまでにも指摘したように、市場は既に高水準にある税金をさらに引き上げることは、成長を阻害するとともにインフレを助長し、さらに財政赤字を埋める効果はほとんどないと結論付けています。
そのため、政府が急増する社会保障支出を効果的に抑制出来ることを示せなければ、市場の信認を失うリスクがあります。また、利回りが上昇する中で、政府財政において拡大するブラックホールからの重力が強まり、何かが深刻に破綻するまで事態を打開するのが難しくなる、「事象の地平面」に英国は近づいているようです。
このため、政府が必要とする時間的余裕を与えるために、イングランド銀行(英中央銀行、BoE)が量的引き締め(QT)による長期国債の売却を停止し、英国債務管理局(DMO)が債券発行を停止することがますます急務になってきていると考えています。
ユーロ圏の社債スプレッドは、フランスにおける動きの影響を受けて、先週1週間で拡大しました。また、ユーロ圏の成長に対する楽観的な見方も弱まりつつあり、地域全体を覆っていた楽観ムードに水を差しています。
とは言いながらも、社債への継続的な需要は夏の間のスプレッドの変動性を抑える要因となっており、今のところはこのような傾向がしばらく続きそうです。しかし、9月に純発行額が増加するタイミングで変動性が高まる可能性があり、スプレッドが再び拡大する展開も考えられます。
為替市場でもユーロがこの1週間で下落し、FRBの独立性や財政主導に対する懸念があるにも拘わらず、米ドルが広範な通貨に対して上昇しました。投資家のポジションではユーロのオーバーウェイトが目立っていたため、これらの動きはリスク削減を反映している部分もあるかも知れません。ただし引き続き、米ドルの強さは一時的なものに留まる可能性があるとみており、米ドルのショート・ポジションを積み増す機会を探って行く方針です。
今後の見通し
この先、米国のレイバー・デー(労働者の日)の祝日を控えているため、9月のスタートは静かなものになる可能性があるとみています。しかし、来月はFRBの動向が注目される中で、活発な月になると予想されます。クック理事の解任劇を改めて振り返ると、ロバート・カプラン氏やリチャード・クラリダ氏などの理事が、バイデン政権下において、個人取引に関する不正疑惑を理由に辞任したことが指摘されています。
その意味で、例えやり過ぎの(overcooked)、ねつ造された(trumped-up)疑惑であったと考える人がいたとしても、彼女自身に対する疑惑でありながら、リサ・クック(Lisa Cook)氏が役職に留まることを決意したことは、驚きを持って受け止められるかも知れません。また、バイデン氏に指名された同氏が今のホワイトハウスの金融政策スタンスにより近い立場を取っていれば、今回のような状況に陥ることはなかったのではないか、という結論も容易に導き出せそうです。
より広範な視点で見れば、政権はFRBの独立性というテーマに慎重に取り組む必要があることを認識していることでしょう。しかし、過去数年間を振り返れば、完全に独立したFRBでさえも多くの政策ミスを犯してきたという点も即座に思い起こされます。
もしかすると、中央銀行の独立性が過剰に神格化されているのでしょうか。ただし、より重要なのは、トランプ氏が自身の望み通りに物事を進めることに慣れてしまった大統領であるという事実です。そして金利政策に関して、彼が何を望んでいるかはもはや明確です。
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