容易な出口戦略はない

Mar 23, 2026

イラン政権が、紛争の終結時期を決定することになる可能性があるとみています。

コメント要約
  • 中東での戦争:イランは低コストな非対称戦争を通じて、相当な期間に亘ってホルムズ海峡を閉鎖させる能力を有しており、紛争終結の時期を左右する可能性があります。
  • 石油精製品不足:中国は先週、精製品の輸出禁止令を発動し、韓国、そして米国も同様の保護措置を検討している可能性があります。
  • 米連邦準備制度理事会(FRB)の姿勢:FRBは先週、政策金利を据え置き、パウエル議長は、司法省の検事捜査が終了するまで留任すると発表しました。
  • 欧州の中央銀行:ECBは先週、インフレに関してより慎重な姿勢を示した一方、イングランド銀行は全会一致で金利据え置きを決定しました。
  • バリュエーション・リスク:押し目買いがかなり根付いている市場においては、価格評価にはるかに深い調整リスクが存在することから、夜明け前の微光に惑わされないよう慎重になる必要があります。

中東での戦争の更なる激化により、過去1週間ではエネルギー価格が急上昇しました。地域全体の石油・ガスインフラへの攻撃が背景にあります。

リスク資産の反応が比較的抑制されていることから、金融市場は、比較的迅速な終結が見込まれるとの期待感から紛争をそれほど材料視していないように見受けられます。しかし、そのような見方にはあまり自信を持てません。

結局のところ、イランは比較的低コストかつ低技術の戦闘を通じて、相当な期間に亘ってホルムズ海峡を事実上閉鎖させる能力を有していると考えられます。ドローンや機雷、小型攻撃艇の脅威は、地上部隊がない限り、長大な海岸線に沿って排除することが困難である可能性があります。

そのような状況下においては、ホワイトハウスによる勝利宣言ではなく、むしろイラン政権が、紛争の終結時期を決定することになる可能性があるとみています。

イランの観点からすると、現在の戦争は現政権にとって自らの存続に関わるものであり、これにより早期の降伏または交渉の可能性は低いように見受けられます。

イランでの民衆蜂起という米国の期待は現実化しておらず、過去のデモは容赦なく鎮圧され、海軍護衛によってホルムズ海峡の安全な通行を確保できるという考えも、過度に楽観的なものであるように思えます。

米海軍が非常に安全な距離を保っている点は注目すべきで、トランプ米大統領による「同盟国」への自国艦船の投入を求める呼びかけが即座に拒否されたことは驚くべきことではありません。イラン側からすれば、紛争終結にあたっての明確な目的として、制裁解除が必要になるという点は明らかであるように思えます。

さらに、米国の存在と影響力を湾岸地域およびアラブ世界全域から排除したいという明確な意図があるようにも思えます。これは非現実的に見えるかもしれませんが、これらの諸国が今回の米国・イスラエルの戦争に対して支払っている代価は極めて大きいものです。

米国の行動がこれらの地域の国との二国間関係の改善をさせたとは思えないことから、今後数週間から数ヶ月かけて、地域内の世論がどのように変化するかは興味深いところです。

石油精製品が日増しに不足していく中、ガソリンとジェット燃料の価格は原油よりもはるかに急速に上昇しています。現時点では市場から事実上遮断されている中東の精製能力への依存度が、この価格変化によって分かります。

結果として、中国は国内での消費を保護する目的で、精製品の輸出禁止令を発令しました。

韓国を含む他国も同様の措置を検討しており、米国も同様の措置に踏み切る可能性があります。

こうした措置により、過去数日間ではブレント原油とWTI指標間のスプレッド拡大が加速しています。一方、中東ベンチマーク原油は既に1バレル当たり150米ドルを超えています。この点で、エネルギー価格上昇による痛みは、米国よりもアジア及びヨーロッパでより強く感じられていると言えるでしょう。

最も被害を受けやすいのは、サプライチェーンの最後にある国々であり、その多くは炭素集約型の産業を自国外に移すことで精製能力をなくしています。オーストラリアやニュージーランドでは既に不足が議論になっており、ホルムズ海峡が閉鎖された状態が続けば、その他の国もまた逼迫を感じることになると予想されています。

需要抑制を目的として、ガソリン配給制の実施や在宅勤務の強制についての議論もなされています。その意味で、仮に紛争が長期化した場合、最も被害を受けた経済の多くで、景気下振れリスクやリセッション・リスクが高まる可能性があります。

とは言いながらも、米国における経済見通しは引き続き概ね堅調さを維持しています。国内での生産を通じてエネルギー及び食品の安全保障を確保している国として、中東における事象は米国にとって相対的に遠い出来事であるという感覚があります。

しかし、物価上昇は米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ能力を制限することになり、これはまた、今年後半の中間選挙においてトランプ氏や共和党に悪影響を与える要因となる可能性が高いでしょう。

先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)は、パウエルFRB議長が司法省の刑事捜査が終了するまでFRBに留まる計画があるという発表を除いて、比較的穏やかな内容でした。  

金融政策に関しては、FRBはより広範なマクロ環境に起因するリスクの高まりを指摘しました。

しかし、労働市場が人工知能(AI)エージェントによる労働者の置き換えによって軟化の兆候を引き続き示していることを踏まえると、FRBが2026年中に利上げを実施する可能性は今のところ低いと考えています。

米短期国債利回りはキャッシュ金利を上回る水準で取引されており、米国債の短期ゾーンについては比較的前向きな見方を維持しています。しかし、追加的なインフレ・リスクおよび財政リスクを踏まえ、より長期の年限については、慎重な立場をとっています。

予想された通り、欧州中央銀行(ECB)はインフレ上昇時の金融政策について、より慎重な態度を示しています。ユーロ圏国債利回りが上昇し、足元の先物市場では2026年中に2回の利上げが織り込まれています。

一方、イングランド銀行(英中央銀行、BoE)は9対0で金利据え置きを決定し、よりハト派とされる一部のメンバーも、紛争に起因する物価安定へのリスク上昇の可能性を示唆しました。

しかし、最終的にはBoEはECBと比較して異なる政策反応関数で運営されると考えており、このため英国での利上げの可能性はより低いとみています。政策金利は既に抑制的な領域にあり、英国経済が弱含むにつれて需給ギャップが拡大しているためです。

2022年には、エネルギー価格の上昇と積極的な政策引き締めが同時に起こりましたが、2026年の経済は、コロナ禍後の状況や先の刺激策によるペントアップ需要が存在した当時の状況とは全く異なる状態にあります。

さらに、2022年には中央銀行がかなり政策で後手に回り(ビハインド・ザ・カーブで)、ゼロ金利の状態からの出発でしたが、足元の状況は大きく異なります。

社債スプレッドは過去1週間で拡大しましたが、今のところ変動は秩序立っており、株式市場もまた予想以上に堅調に推移しています。ただし今のところは、慎重な姿勢が必要であるとみています。

投資家の資金フローは過去1年間に亘ってクレジット債の戦略を支え、この間、純新規発行額も増加しています。ここでのリスクは、投資家が資産配分におけるリスク削減を進めた場合、新規発行がほぼ同様の速度で減少するかどうかは明確ではないという点です。

特に、AIのハイパースケーラー企業からの発行は、特に価格にそれほど敏感ではない可能性があるとみています。

その他、プライベート・クレジットは金利の低下による安心感を切に求めてきました。それが見込まれない状況では、プライベート市場における構造的なストレスの増加もまた、より広範なクレジット債市場に悪影響をもたらすきっかけとなる可能性があります。

為替市場では、米ドルが安全資産としての投資家からの資金流入の恩恵を受け続けています。米国がエネルギー価格ショックの高まりから比較的保護されていることから、米ドル高は短期的には傾向として続く可能性があります。

しかし、中東の紛争が収束するにつれ、グローバル投資家がその後数四半期で米国資産からの方向転換を図る傾向が強まる可能性があり、これは米ドルに対する弱気な見方につながる可能性があります。

またこれは、エマージング市場(EM)資産にとって恩恵をもたらす可能性がありますが、短期的には、EM投資家は考えるよりも先にまず売却する傾向があります。しかし、リスク削減が起こった後、EMにおける相対的な勝者と敗者について投資家の注目が高まると予想しています。

特に、一部のエネルギー輸出国が、エネルギー輸入に依存する国と同程度の調整となっていることは注目に値するでしょう。このようなばらつきに着目することは、相対価値ベースでの多くのアクティブな投資機会につながるはずです。

今後の見通し

短期的には、中東での継続的な進展が投資見通しを左右し続ける可能性が高いとみています。

最終的には、この紛争は終結することになり、そのことが明確になるにつれて、市場の大きな転換点となるでしょう。

ポートフォリオのリスクを削減した状況で、次に重要となるのは、再びポジションを積み増す適切な時期を見定めることです。

おそらく、一部はエクスポージャーを取ることに熱心で、転換点を探しておらず、金利市場を除けば、依然として大きなリスク削減は起きていないと捉えています。それが起こった場合、リスクを低位に留めている状態であれば、より迅速かつ断固とした姿勢でポジションを移行しやすくなります。

しかし、その過程において、夜明け前の微光に惑わされないよう慎重になる必要があり、押し目買いがかなり根付いている市場においては、価格評価にはるかに深い調整リスクが存在することを肝に銘じる必要があります。

このような押し目買いに疑問が出てきて、これまでよりもさらに広範にストップロスが引き起こされた場合、深い調整リスクが表面化する可能性があるでしょう。  

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