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コメント要約
過去1週間、グローバルに国債利回りは概ね横ばいの動きとなりましたが、貿易協定に関する前向きな報道を背景に、リスク資産は上昇を続けました。日本が米国との間で15%の関税を盛り込んだ合意に達したとの発表は、25%への関税引き上げが回避されたという意味で、日本では一定の安堵をもって受け止められました。
ただし、この合意の内容はやや一方的に見受けられ、米国は日本市場を、米国の輸出品に開放するという要求を押し通すことに成功したと言えるでしょう。また、アラスカでの液化天然ガス(LNG)投資や、米政権が管理権限を持つ5,500億ドルの投資ファンドに関しての合意も確保しました。
先週末の参議院選挙で自民党が敗北したことを受け、石破首相は貿易協定実現のための大きなプレッシャーを受けていたと考えられます。そのような状況が、米国にとって交渉を有利に進める強い立場をもたらしました。日本との合意が発表された後、注目は欧州へと移りました。一部報道によれば、EUに対しても同様に15%関税の合意が視野に入っている可能性があるようです。
その意味で、あたかも世界各国が貿易に関する米国の圧力に屈し、米政権は概ね効果的にそのカードを切ったようにも見受けられます。また、米関税が、国内生産品をを除外した、実質的な連邦消費税としての性質を持つという説明が、貿易相手国に受け入れられたとも見て取れるでしょう。
さらに、米国の大規模な財政赤字によって、米国の債務状況をこれ以上悪化させないためには関税収入が必要不可欠であるという理解も一定の広がりを見せています。実際、多くの国が政府債務の増加に直面している中、今後数年間で他の国も米国の貿易政策に追随する可能性があるかどうかは、興味深く見守っていく必要がありそうです。
足元の関税を巡る靄が晴れれば、米国の平均関税率は18%程度に落ち着く可能性が高いと考えています。一方、米国の輸出品に対する関税率が3%を超えることはなさそうです。
このような点を踏まえれば、少なくとも現時点では米国が貿易戦争に勝利したとみなされることに関して、疑いの余地はありません。しかし、トランプ政権下における政策の長期的な影響が現れるまでには時間が掛かる可能性があります。この点で、中期的に見て、米国という国家や社会が果たして良くなるのか、それとも悪化するのかについては、依然として大いに疑問が残ります。
結局のところ、米国は数十年間に亘ってグローバリゼーションの多大な恩恵を受けてきており、ここ最近の政策の変化はこれに対する挑戦を意味することは間違いありません。
とは言いながらも、トランプ氏は夏休みに向けて、(もちろん厄介なエプスタイン文書関連の問題を除けば)順調な状況にあると感じているようです。2026年の米国の成長予測は上向き傾向にあり、予算が確定し、貿易協定が整いつつある中で、中期的な見通しは概ね建設的であるように思われます。
しかし、短期的には、経済活動の減速や、関税が生産者から消費者へと転嫁されることに伴う物価上昇が、数カ月以内に見られる可能性が高いとみられます。2025年後半には、米国経済が1.5%の成長率となり、コア消費者物価指数(CPI)が4%近辺でピークを迎えると予測しています。その場合、失業率が大幅に上昇する可能性は低いとみられることから、今後数カ月間で政策金利を仮に動かすとしても、大きく動かす必要があるかどうかについては疑問符が付くところです。
しかし、現在の米連邦準備制度理事会(FRB)は通常の状況ではありません。パウエル議長は、政権が求めている利下げを実現出来ていないとして、既に厳しい批判と圧力にさらされています。米連邦公開市場委員会(FOMC)の他のメンバーも、早ければ来週早々にも利下げを求める声を上げていることから、この先インフレが現在の予測を大幅に上回るサプライズを見せない限り、9月と12月にそれぞれ25bpsの利下げが実施される可能性が高いとみています。
この点において、FRBは、現在の政策が長期的な中立金利と比較した場合に依然として抑制的であると受け止めることも出来るでしょう。そんな中、ベッセント財務長官はトランプ氏に対し、パウエル氏の早期解任を押し進めないよう説得したとみられますが、パウエル氏が利下げの要求に応じることで事態を沈静化させることを期待している可能性があります。
次期FRB議長に関する発表は、早ければ9月にも行われる可能性があります。この点において、ベッセント氏は、米政権の要請に耳を傾けつつ、市場からの信頼を維持できる候補者を探す妥協案を模索しているとみられます。
そのような観点で言えば、パウエル氏が年内に利下げ路線を再開し、それを次期議長が引き継いで継続できる方が、パウエル氏が行動を起こさなかったことにより、さらに大きな修正利下げを行う必要が生じるよりも良いと言えるかもしれません。
このような状況を踏まえれば、来年に向けた政策金利の織り込み具合は概ね妥当であると考えています。短期利回りは利下げによって支えられる可能性がありますが、長期利回りが同様に低下する可能性は低く、むしろ上昇圧力がかかる可能性があるとみています。過去数週間、イールドカーブ全体の動きは概ね限定的で、狭いレンジ内での取引が続きました。
しかし、今週のFOMC会合は短期金利低下のきっかけになる可能性があり、現状約60%と織り込まれている9月利下げの可能性が上昇するかどうかが焦点となるでしょう。
欧州では、先週の欧州中央銀行(ECB)会合が投資家の予想よりもややタカ派的な内容となりました。財政緩和を踏まえれば、ECBは利下げを終了した可能性が高いと考えています。しかし、経済および政治的な進展次第とはいえ、この先数ヶ月間では、理事会が利上げよりは利下げを選択する可能性の方がはるかに高いことを考えても、市場は引き続きさらなる緩和を織り込むとみられます。
一方、ユーロ圏のソブリン債スプレッドは、過去1週間でさらに縮小しています。各国で議会が夏季休暇に入ったことで、目先の政治リスクは軽減される可能性があるでしょう。フランスでは、バイル政権が財政赤字削減のための措置を実施しようとしていることから、この先9月から10月に掛け、予算を巡って政治的な不確実性が再燃する可能性もあるとの見方を維持しています。そのため、フランス国債のショート・ポジションを取ることを検討していますが、夏の終わり頃まで一旦はポジション構築を見送っています。
日本では、ここ最近の選挙における自民党敗北の責任を取って、石破首相が辞任するのではないかという強い憶測が飛び交っています。実際ある新聞は、石破氏の辞任を報じる号外を発行するまでに至りましたが、後にこれが否定される展開となりました。石破氏は党内で致命的な打撃を受けているように見受けられます。
そのため、石破氏は今後1~2カ月以内に辞任し、新たな自民党総裁選挙が行われる可能性が高いと考えています。このような動きが、物価上昇に伴う消費者の痛みを和らげるための財政緩和を再び促すきっかけになるとの観測もあります。このような見方は債券利回りを押し上げ、日本の10年債利回りは先週1.60%を突破し、17年ぶりの高水準を記録しました。
今週は、投資家の注目を集める日銀会合が予定されています。インフレ率が3%近辺にあり、米国の見通しが改善するとともに、日本の関税に関する明確さも増したことを踏まえれば、政策を当面据え置いてきた植田総裁は、10月の利上げに向けたガイダンスを示す可能性があると考えています。
最終的には、日本の財政政策に大きな変化があるとは予想しづらく、名目GDPの継続的な成長のおかげで、日本の対GDP債務比率は低下に向かうと予測しています。長期的には、日銀が政策正常化を進める中で日本国債の利回りは上昇を続けると考えており、政策金利は来年末までに1.5%に近づくと予想しています。
その時点で、10年債利回りのフェア・バリューは2.0~2.25%程度とみていますが、超長期債の需給バランスがより適切に調整される中で、30年債利回りは2.75~3.0%に低下する可能性があると考えています。
英国に関連した話題では、引き続き弱気な内容が目立ちます。先週、英国政府は6月の政府借入額が急増したと発表しました。これは、歳出が税収を上回り続けているためです。注目すべきは、最近の雇用主の国民保険料(NI)増税が、英国の財政状況を改善するどころか、むしろ悪化させているように見受けられることです。
一部には、NI増税がコスト上昇の転嫁を通じてインフレをさらに押し上げていることが影響しています。英国では物価連動型の英国債の比率がかなり高くなっています。その結果、インフレ率の上昇は、直接的に利払い費の増加につながります。加えて、公務員の賃金要求や年金、規制価格も物価に連動しています。
したがって、インフレが借入コストを押し上げている限り、スタグフレーション的な状況が懸念されます。加えて過去1ヶ月では、食品価格インフレが5%を超える水準に加速していることも示されています。
イングランド銀行(英中央銀行、BoE)は、経済のスラックが拡大するにつれて、インフレが低下するという前提のモデルに基づき、利下げを実施する強い意志を持っているようですが、経済指標はそのような見解にますます疑問を投げかけているように思います。特に、英国の期待インフレ率は今や、4~5%の持続的なインフレ率と一致しているようであると考えています。
しかし、英国に関して少しでも明るい話題を提供するとすれば、少なくとも先週は、米国との貿易協定がスターマー氏にとっての一つのポジティブな成果であったと言えるでしょう。それでも、スターマー氏に関する見通しは厳しいようで、英労働党内ではアンジェラ・レイナー氏が近い将来首相の座を巡ってスターマー氏に挑戦するための準備しているようです。一方、直近の世論調査では、労働党の支持率が、前回の選挙で保守党が得た得票率をも下回っていることが示されています。もし今日選挙が行われれば、ナイジェル・ファラージ氏と同氏の改革党が優位に立つことになるでしょう。
社債市場では、投資家からの資金流入が引き続き堅調で、スプレッドは力強い需給要因に支えられて縮小を続けています。夏休みシーズンにもかかわらず、市場は比較的活況です。特にバンクローン市場では、過去1週間で今年最大規模の取引量が記録されており、借り手がより低いスプレッドで借り換えを望んでいる状況が伺えます。
この文脈において、ハイ・イールド銘柄が高格付け銘柄をアウトパフォームする、いわゆる「コンプレッション」取引が確認されています。同様に、現物債に対するヘッジ・ポジションが解消される中で、CDSインデックスがアウトパフォームする傾向も見られています。
現時点では、CDSインデックス・レベルでの全般的なスプレッド縮小傾向は終了する可能性が高いと考えています。すでにバリュエーションがなくなってきているためです。例えば、CDX IGは50bps、Itraxx Mainは53bpsで、2008年の金融危機以来で最も縮小した水準から5bps以内に位置しています。また、社債市場における強い需給要因は、スプレッド水準にあまり注意を払わない、絶対利回り重視の買い手に基づいていることも注視すべきでしょう。
このような需要は、ベースとなる国債利回りが低下した場合に反転する可能性があるためです。このような点を踏まえ、引き続き、ミスプライスが発生していると見られる、特定の発行体や銘柄に焦点を当てた相対価値に基づく取引を選好します。
米国の短期債に対してポジティブなスタンスを維持しつつ、米30年国債およびドイツ国債のショート・ポジションを組み合わせた、イールドカーブのスティープ化を予想したポジションを維持しています。日本では、利回りの上昇に伴い、ネットベースでの金利のショート・ポジションを縮小していますが、引き続き10年債に対して30年債をロングするポジションを継続しています。通貨のポジションは控えめとしており、短期的には米ドルが上昇した場合の、より明確な米ドルのショート・ポジション構築タイミングを伺っています。
今後の見通し
今週は中央銀行会合に市場の注目が集まりますが、FRB、日銀ともに大きな動きは見込んでいません。8月1日のトランプ関税に関するリスクは低下しているように見えます。
EUでは、加盟国間の意見の相違が、統一された交渉スタンスを巡る合意を困難にしている可能性がある点も強調したいと思います。これは、米国に対する報復関税に関しても言えることです。しかし、私たちは、EU内の多くの人々がトランプ政権に対抗することで得られるものは少ない一方、失うものが多いと判断しているように思います。とりわけ、他の主要な米国の貿易相手国が譲歩している状況では尚更です。
8月1日の期限に不快なサプライズがない限り、市場は強気相場のマインドセットで8月に突入する可能性があります。恐怖心は抑制されています。トランプ氏は多くの批判者を間違いであると証明し、勢いづいているように見受けられます。
しかし、「驕れる者は久しからず」と言われるように、万事が穏やかであるように見える中でも、水面下に潜んでいる多くのリスクがあるように思われます。強欲や慢心が見られる場合では特に注意が必要でしょう。良好な環境が長きに亘って持続するかどうかについては、やや懐疑的な見方を維持しています。
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