ドラゴンの登場

Mar 16, 2026

どれを選択してもグローバル経済には不利な状況となっています・・・

コメント要約

  • 中東における紛争の激化:イランを巡り緊張が高まる中で原油価格は急騰し、ホルムズ海峡での動きがグローバルのヘッドラインの中心となりました。
  • グローバルのサプライチェーンにおける脆弱性:ホルムズ海峡は日次でグローバル消費の20%に相当する原油と世界の液化天然ガス(LNG)の20%の輸送を担うことから、一時的な閉鎖であっても、世界的なスタグフレーション・ショックのリスクや食料品価格に上昇圧力をもたらす可能性があります。
  • 労働市場における人工知能(AI)の破壊的な影響:先週の米大手銀行幹部とのミーティングでは、労働力の大幅な削減の可能性が示唆されました。これが広範な産業全体で発生した場合、マクロレベルで重大な経済下振れリスクを示す可能性があります。
  • 66億米ドルの記録的な起債額:アマゾンが37億米ドルの新規発行を行い、先週火曜日には合計66億米ドルの新規発行と、米投資適格市場での新規発行額の記録が更新されました。ハイパースケーラーは投資支出の継続は、新規発行の継続の可能性を示しており、これはスプレッドにとって引き続き逆風要因となるでしょう。
  • 不透明なマクロ見通し:地政学的緊張やAIによる破壊、不透明な金融緩和見通しによって予測困難な投資環境となっており、資産クラス全体でボラティリティの高まりが予想されています。

グローバル市場は、先週一週間も中東からのニュースに釘付けとなりました。月曜日には原油価格が1バレル120米ドル近くまで急騰しましたが、その後トランプ米大統領の発言を受け、紛争が終結に向かうとの期待感から、一時90米ドル以下まで反落しました。

しかし、米国が目標達成を宣言するために十分であると判断したとしても、イランが直ちに交渉と敵対行為の停止に合意するかどうかは明確ではないように思います。

イランに対する戦争は、イスラム革命防衛隊(IRGC)や体制の一部にとっては存亡の危機であり、この観点から見ると、降伏が選択肢とは決してなっていないように思います。結果として、世界経済にはるかに大きな痛みを与えた後に、これによって地域から米国の存在を排除することを模索するという、湾岸地域の課題が再浮上するとの期待で、イランが敵対行為をやめることを選択する可能性はあるでしょう。

イランの観点からすれば、これは政権が最終的な生存を確保するために利用可能な唯一のレバレッジであると考えているのかもしれません。そのようにイランが見ている場合、米国および同盟国にとって現在の紛争からの脱出口を見出すのは容易ではなく、軍事手段を通じて終結させる以外に選択肢がないかもしれません。

しかし、この戦争の軌道についての、より重要な地政学的影響はさておき、とりわけ金融市場の観点から見てみれば、世界経済にとって唯一、真に重要なのは、ホルムズ海峡であると言えるでしょう。端的に言えば、原油の流れさえ維持されれば、予想される経済的混乱は短命に終わる可能性があります。

しかし、輸送が長期間遮断されると、貯蔵容量が満杯になるにつれて、より多くの油田が閉鎖されます。原油および原油関連製品のグローバルでの不足によって、これらの価格がさらに上昇する可能性があり、備蓄を放出したものの、短期的な措置を除けば国際エネルギー機関(IEA)に出来ることも限定的です。

ホルムズ海峡自体は狭い海峡であり、軍による護衛や貿易保険が出されるかもしれませんが、現実には動きの遅い原油タンカーは、安価なドローンや小型ボートが攻撃するのに十分なソフト・ターゲットとなります。したがって、この安価で低技術な兵器が、最小限のコストで混乱を最大化出来ます。

これまでのところ、米国とイスラエルの軍隊が弾道ミサイルランチャーの排除で進展しているように見えますが、ドローンの展開の容易さと低コストを考えると、ドローンの脅威を軽減するのは非常に困難であることが判明しています。

結果として、イランの攻撃能力がなくなるか、もしくはイスラム革命防衛隊(IRGC)が現在の紛争の緩和を目的とした何らかの交渉に参加することに納得するまで、輸送が大幅に阻害される可能性があることは十分に想定されます。もちろん、そのような突破口が早期に見出される可能性もあります。

しかし、全般的に見れば、現在の状況は攻撃が少なくとも今後1~2ヶ月間継続する可能性が高いことを示唆しており、この間、原油価格の上振れリスクは継続するでしょう。

さらに、1日当たり2,000万バレルの原油、つまり、グローバル消費の20%に相当する原油の輸送を担うことに加え、ホルムズ海峡は世界の液化天然ガス(LNG)輸出の20%、肥料輸出の25%、および尿素輸出の35%の輸送も担っているという事実は注目に値します。

そのような背景において、同海峡の閉鎖は、一時的なものであっても、世界的なスタグフレーション・ショックにつながる可能性があると言えるでしょう。例えば、今日現在で保留中となっている肥料の輸送は、今年後半の作物収穫量低下につながる可能性があり、食料品価格に上昇圧力をもたらす可能性があります。したがって、最終的なインフレへの影響を精査するために、多くは貿易がどの程度長い期間に亘って阻害されるか、さらにそのどの程度を他の輸送経路に迂回させることが出来るかどうかに依存することになります。

これに対する初期の分析として、消費者物価指数(CPI)が一時的に約1%上昇する可能性があるとの見方が妥当であると思われ、成長見通しも約0.5%低下との見方が妥当と考えています。

中央銀行に関しては、ウォーシュ新議長率いる米連邦準備制度理事会(FRB)が、これらのマクロ環境を理由に利上げの必要性があると納得する可能性は非常に低いと考えています。紛争が今後数ヶ月以内に解決し、原油価格が下落して、政策担当者が短期的な指標におけるインフレ上昇を一時的と見れば、2026年後半の利下げの可能性は依然として残っているとみています。

FRB同様、イングランド銀行(英中央銀行、BoE)も、経済が弱含み、政策の緩和バイアスがある中で今回の紛争を迎えました。ここ最近の展開がなければ、3月末の会合での利下げを期待していましたが、それが難しくなったと見られる今でも、BoEが利上げ政策を議論するまでにスタンスを変更するには、多くを要することになると考えています。

FRB同様に、このことは2026年後半のアジェンダには金融緩和が残ることを意味するとみています。さらに、BoEのモデルは需給ギャップ分析に大きく依存しており、これはフォワード・ルッキングベースで金融政策を引き締めるよりもむしろ、緩和していく必要性を示唆するものです。

一方、欧州中央銀行(ECB)にとっての状況は明らかに異なる可能性があります。2022年における同中銀の最大の過ちは利上げ開始まで長く待ち過ぎたことであったとの反省のもと、今回はインフレの短期的な上昇に、より神経質になる可能性があります。したがって、早期に利上げに動くことは、その後必要とされるトータルの利上げ幅を縮小させ、その後、より迅速に利下げを実施することが可能になるという考え方が存在しています。

米国では、当月発表されたCPIは市場予想に概ね一致し、コアインフレ率は前年比+2.5%となりました。しかし、経済指標は現時点では舞台の後ろに追いやられており、米国債市場も、前週の弱い雇用統計や失業率の上昇にほとんど反応しませんでした。

しかし、労働市場における人工知能(AI)の破壊的な影響は注意深く見守り続ける必要があるテーマです。先週行った、米大手銀行幹部とのミーティングでは、今後3年間の目線で、労働力の最大30%の削減が予想されることが示唆されました。このような急速な雇用喪失が、広範な産業全体で発生した場合、マクロレベルで重大な経済下振れリスクを示す可能性があります。

短期的には中東の紛争が重要であるように見えたとしても、AIとこれが経済、社会、および資産価格にとって何を意味するかについての大きなテーマが、今後長く残り続けるということを示唆していると言えるでしょう。

過去1週間、とりわけ欧州の短期金利市場においてかなりの変動性が見られました。このような動きは、ファンダメンタルズの変化を踏まえれば正当化される部分もありますが、短期金利とイールドカーブのスティープ化を想定したコンセンサス取引におけるストップ・ロスからのポジション解消によって加速したことは明らかです。

これらの動きに照らして、ポートフォリオでは英国金利のエクスポージャーについて、短期ゾーンにフォーカスしたポジションを取っており、市場が英国の利上げを織り込むのは誤りであると考えています。さらに、米国債のイールド・カーブがフラット化したタイミングを活用して、スティープ化を想定したポジションを構築しました。

我々が抱いている印象の一つとして、よりスタグフレーション的な環境になるにつれ、各国政府は世界的なエネルギー価格の上昇に伴う有権者の痛みを軽減しようと、財政的に緩和に向かう可能性が高いというものが挙げられます。これは、潜在的にさらなる財政悪化を招く要因となり、イールドカーブはより高いターム・プレミアムを織り込む可能性があります。さらに、ここ最近の出来事は防衛支出の増加をさらに差し迫ったものとし、これも同様の動きをもたらす要因になるでしょう。

為替市場の動きは過去1週間、金利市場と比べてはるかに控えめでした。米ドルは全体的に強さを維持していますが、エマージング市場(EM)通貨の動きを除けば、多くは方向感において確信を欠いた動きに見受けられました。現時点では通貨ポジションにおいて強い確信度はほとんど保有していません。対米ドルで160円近辺に近づいた日本円でさえ、この環境下においてはロング・ポジションに移動することは賢明ではないとみています。

日本のポジション全体では、この1週間で金利リスクをほぼフラットとしました。高市氏が経済的下振れを軽減するため、緩和的な政策を志向する傾向が強いと考えているためです。ただし、日本のイールドカーブ上の10年と30年のフラット化を予想したポジションについては、長期的な確信度を維持しています。

社債スプレッドは先週、株式市場の動きにつられる格好となりましたが、概ね秩序が維持された取引となりました。投資適格では、全般的なリスクオフに伴うスプレッド拡大が、社債の多額の新規発行が続いていることによっても加速しています。先週はアマゾンがジャンボ発行を実施し、米国で37億米ドルの新規発行を行いました。その結果、先週火曜日には合計66億米ドルの新規発行があり、米投資適格市場での新規発行額の記録が更新されました。ハイパースケーラーは投資支出の削減を示唆しておらず、今後数か月間では新規発行が継続する可能性があり、これはスプレッドにとって引き続き逆風要因となるでしょう。

社債市場とは対照的に、EMでの価格動向はこの1週間に多くのオーバーシュートの兆候を示しました。同市場の投資家は「まず売り、後で問う」傾向がより強いと言えるでしょう。相対的には、原油輸出国はエネルギー輸入国よりも好調であったと言えますが、多くの側面から、市場は下落相場において相対的な勝者と敗者を十分に区別していないように見受けられます。その他では、プライベート・クレジットが引き続きネガティブなヘッドラインの中心となっており、先週はJPモルガンが、同資産の評価引き下げを実施する最新の事例となりました。

以前にも述べたように、プライベート市場における高レバレッジを鑑みて、この市場の投資家は金利低下を待ち望んでいましたが、そのような希望が失われ、信用毀損が増加することで、今後これらの投資家にとってさらなる問題が待ち受けている可能性があります。

この点において、中東地域の投資家が、これらの戦略に多くのエクスポージャーを有していることも注目に値します。短期的には解約しないと見られるものの、このような投資家層からの新たな資金が投資に充てられることはまずあり得ないように見受けられ、レバレッジの解消を迫られた場合、プライベート市場の需給面において更なる試練となるかもしれません。

今後の見通し

イラン紛争に話を戻すと、欧州全体が進展中のイベントで傍観者となっており、とても間抜けで役立たずのようなままであることにかなり驚いています。このことは、英国で言えば、ミサイルを迎撃する能力を持つ唯一の英国駆逐艦であるHMSドラゴンの配置遅延という形で深刻に映し出されています。この駆逐艦は週末まで港にスタックしていたことから、英国内では、この船が、(フランスからドーバー海峡を渡る難民の小型ボートは阻止できない)労働党政権がドーバー海峡を渡ることを阻止出来た、唯一の「小型ボート」であった、とのジョークまで聞かれているほどです!

米政権に関して言えば、来週に掛けて、イランでのトランプ氏の賭けが日増しに裏目に出始めるかどうかが焦点となるでしょう。トランプ氏が金融市場を落ち着かせ、全てが計画通りであるという認識を示そうとするあらゆる努力にもかかわらず、そもそもこれは当初から計画されていたのかどうかに、疑問を抱く人は多くなるでしょう。確かに、これまで歴史は何度も、戦争は終わらせるよりも始めることの方がはるかに簡単であることを教えてくれていました。

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