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コメント要約
先週のイスラエルによるイランへの攻撃は、欧米時間の金曜朝の金融市場で急激な質への逃避を引き起こしました。事態は急速に進展する可能性がありますが、初期段階の分析では、これらの攻撃は、米国がイスラエルを利用してイランに核合意への圧力を加えるための手段として捉えることが出来ると考えています。
給油においては米国のタンカーが利用されたと見られており、イスラエルのこのような行動のためには、少なくとも米国が暗黙の支持を与える必要があったでしょう。現時点では、中東全域への戦争の拡大の可能性は低いとみています。結局のところ、イラン政権は他の独裁政権同様に、自らの生存を何よりも重視しています。
軍の情報によれば、米国とイスラエルがイランの核計画を排除するためには空爆だけでは十分ではなく、地上部隊が必要になるようですが、イラン革命防衛隊の規模やそのスケールを踏まえれば、極めて困難となるでしょう。
トランプ氏としても、非常に避けたい展開であるとみています。結果として、イスラエルとイランは当面、ドローンや空爆で応酬するかもしれませんが、概ね抑制されたものになることを切に願います。
世界経済や金融市場への主な影響として考えられるのは、石油価格を通じた影響です。しかし、イランがUAEの施設への自滅的攻撃を開始したり、ホルムズ海峡を封鎖しようとしない限り、その影響は抑制されるとみています。
ただし、いずれにせよ、これまでにも指摘してきた通り、市場に幾らか慢心が存在していると見られるこの時期に、中東やより広範な地政学は決して無視出来ないリスク要因であると言えるでしょう。
先週1週間は、このような中東での出来事に加えて、比較的良好な内容の米消費者物価指数(CPI)が国債利回りを支えました。5月のコアCPIは前月比わずか0.1%の上昇となり、前年比でも2.8%と変わりませんでした。しかし、輸入品への関税の影響で価格が調整される中、今後数カ月間でインフレ指標は悪化すると予想しています。
「解放の日」直後、多くの企業は「通常通り」であることを強調したいようでした。不確実性の中、それは短期的には企業が価格や雇用における変更を手控えることを意味していました。しかし今では、貿易交渉が続く中でも、最低10%の関税率が維持されるとの認識が広がっているようです。
その点で言えば、米国には関税収入が入り始めており、実際に米財務省は5月に230億ドルの収入を記録しました。この追加コストはこれまで企業が負担してきましたが、今後時間の経過とともに、その大半が消費者に転嫁されると広く予想されています。米ドルの下落も、輸入コストに関連する価格調整の必要性を増幅させる可能性があります。このような価格調整の結果、今後数カ月間でコアCPIが4%に向かって押し上げられるとの見方を維持しています。
関税によるインフレの上昇が一時的な調整であることから、消費税の引き上げと同様に、目先のいかなるインフレ上昇も一時的になるだろうとの見方があります。
しかし、経済が堅調さを維持すれば、短期的な価格上昇が賃金増を求める声や、期待インフレの高まりにつながるリスクがあるでしょう。
そのような点を踏まえ、米連邦準備制度理事会(FRB)は政策を緩和し過ぎることでインフレ圧力を煽らないよう注意する必要があり、今後数カ月間は米連邦公開市場委員会(FOMC)が政策を維持するとみています。
トランプ米政権が利下げを望んでいることは明らかです。実際、そのような願望によって、次期FRB議長候補としてベッセント財務長官が推されているとの報道にも現れており、ケビン・ウォーシュ氏への支持は弱まりつつあるようです。トランプ氏の意向に従うことに熱心であった人物として、ベッセント氏がインフレ・リスクにあまり焦点を当てず、低金利を実現する可能性が高いとされています。
しかし、実際に同氏が指名され、議会で承認されたとしても、FRBの政策決定は委員会によって行われ、議長が政治的影響に迎合しているという認識があれば、他の理事が強い抵抗を示す可能性が高いでしょう。とは言いながらも、ベッセント氏が承認された場合、市場が将来の政策金利予想を引き下げ、結果としてイールドカーブがスティープ化したとしても不思議ではないでしょう。
今後数日間、世界の指導者たちは第51回G7サミットのため、カナダ・アルバータ州で時間を過ごす予定です。共同での合意形成に対する期待は比較的低く、合意された共同声明は詳細や具体性に乏しいものになる可能性があるでしょう。7月9日の関税期限が迫る中、貿易協定におけるさらなる進展の余地は非常に限られているように思えます。
その意味では、当初日本が最初に合意に達する国の一つとなることを期待していましたが、日本政府は自動車関税を撤廃するための試みで頓挫しています。そのような点からすれば、英国の合意が、日本や他の貿易相手国が望むことができる最良のテンプレートを表しているかもしれません。
2024年の輸出量に基づけば、今後10%の関税率で最大150万台の日本車の輸出が可能になるかもしれませんが、この分野で関税がゼロになるとの考えは非現実的であるように思えます。
その場合、日本の石破首相は、参議院選挙を前にして譲歩することは自らの利益にならないと判断するかもしれません。一方で、EUとの貿易交渉の進展はさらに遅いように見受けられます。
実際、先月合意に達した英国の合意でさえ、政策担当者によって詳細を詰めるための協議が続いています。この点に関して言えば、米国は英国に対し、中国への投資に制限を課すことに同意するよう圧力を掛けていますが、中国政府からの報復措置を恐れる英国側はこれに慎重になっています。
また先週は、中国と米国の政府代表者がロンドンで会合し、先月合意された「ジュネーブ合意」に関する進展を目指して協議しました。レアアースなどの希少鉱物やその他重要鉱物へのアクセスが必要である米国側が協議における進展を求めており、これが中国側に比較的強い交渉力を与える要因となっています。
最終的には、30%の関税は維持され、当面、米中貿易を制限することになるとみています。現時点において、焦点はむしろ第三国を経由地した輸出や、米国が他国に対して中国との貿易でより制限的な姿勢を採るよう圧力を掛けることに関連しているようです。
6月24日に予定されている北大西洋条約機構(NATO)サミットにも注目しています。先週イタリアは、NATOの支出目標を10年間という視点での実施を検討していることを示唆し、より短期間での支出増を示唆するドイツやEUの姿勢と矛盾しているように見受けられました。
ある意味では、イタリアなどの国が、支出の増加を自国の予算ではなく、EUに押し付けたいという願望を反映しているのかもしれません。とは言いながらも、議論されている金額は巨額であり、将来の国債発行に大きな影響を与える可能性があります。現時点において市場は、このような影響や、追加支出に伴う今後数年間の成長への追い風の影響を過小評価していると考えています。したがって、利回りの低下の勢いは失速する可能性があるとみています。
とは言いながらも、リスク資産は「不安の壁」を登り続けています。企業業績は概ね良好で、米国経済も成長を続けています。また関税収入が得られているにも拘わらず、インフレは今のところ抑制されています。7月9日の期限を前にした、このような市場の強気な価格行動にはやや慢心が感じられ、貿易紛争の激化が間近に迫っていたとしても不思議ではないと考えています。
この点で言えば、業種別関税に関して、製薬業界に関する行動が差し迫っていると考えています。トランプ政権は、大手製薬会社やテクノロジー企業が税金の裁定取引のためにアイルランドを利用することを終わらせたいと強く希望しており、米国内の高騰した薬価を引き下げるとみられる並行輸入品に脅威となる状況でもあります。
これはトランプ支持層の有権者にとって勝利と言えるかもしれません。一方、EUによる報復行動は米大手ハイテク企業を標的にする可能性があると考えています。しかし、この点については、トランプ氏が「ウォークな(意識高い系の)」シリコンバレー企業に対するEUの行動にあまり悩まされることはないと考えています。同様に、EUが、過去英国のEU離脱時に既に示したように、アイルランドの利益を守るために全てを賭けるような姿勢を示すことはないと考えています。
貿易面での緊張の激化が米ドルのさらなる下落につながる可能性はありますが、市場が米ドルのロング・ポジションを取っていた4月初めと異なり、現在はその逆です。その他、イールドカーブやクレジット債のポジションは過去1週間で概ねレンジ内で推移しました。
日本では、6月20日に発表される予定となっている長期債供給の削減に関する財務省の計画を心待ちにしています。市場では既に3,000億円の長期債削減がコンセンサスとして期待されていますが、政策当局がこれ以上の内容を発表し、長期債市場により安定をもたらすことを期待しています。
今後の見通し
今後を見据えると、今週予定されているFOMCでは政策に関する明確な見通しはそれほど得られないと考えています。不確実なマクロ環境を考慮すると、FRBにとって選択肢を持っておくことが賢明と言えるでしょう。パウエル氏は、なぜより早期に政策を緩和しないのかという質問に直面する可能性が高く、トランプ氏もこの議論に脇から参加することでしょう。
しかし、現状は米国経済が底堅いことから、成長やインフレに関するFRBの使命の実現が試されている状況とは言い切れないでしょう。このことは、FOMCが現状維持の姿勢を堅持することを正当化する材料となるかも知れません。
過去1週間で利回りが低下していることを踏まえ、この動きがさらに進む場合は金利デュレーションのショート・ポジション構築を検討するかもしれません。しかし、現時点では、米2年債及び10年債利回りはフェア・バリューからそれほど遠くないとみています。
また、貿易面での緊張が高まり、成長に対する下方リスクが再燃した場合に予想される質への逃避の可能性も注視しています。代わりに、イールドカーブ上のポジションに関してよりリターンの非対称性があるとみており、米国債市場では長期のスティープナー、日本では逆のポジションを選好しています。
この先数週間ではボラティリティが上昇する余地が十分にあるとみており、その中心はスコット・ベッセント氏となる可能性があるでしょう。ホワイトハウスでの影響力をめぐる権力闘争で勝利を収めた同氏は、不安定な政府効率化省(DOGE)担当のイーロン・マスク氏にラグビーさながらのタックルを受けたのち、マスク氏にパンチを浴びせたとの話が広まっています。
正直なところ、ベッセント氏がそのようなことをする人物とは誰が思ったことでしょうか!おそらく、現在の市場と同様に、目に見えない表面下の混乱が静けさによって覆い隠されている可能性に、思いを馳せてみるべきかも知れません。
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