AI関連株:兜の緒を締める時

Oct 30, 2024

ここ数年間、「AI神話」が注目を浴び続けています。新興国市場においてもAI関連銘柄が中心的な位置を占め、新興国株式投資家にとっても重要な投資テーマとなってきました。AI関連銘柄に対する見解を以下にまとめます。

AIというテーマが構造的成長の局面にあることについて疑いの余地はありませんが、このテーマに関連する株式は割高であると考えています。その一方で、引き続きAI銘柄を追いかける投資家の動きが株式市場を牽引していく可能性もあります。いずれにせよ、この分野における需要や設備投資の堅調さは変わらず、業績を下方修正する兆候は見られません。また、バリュエーションは大幅に上昇しましたが、「異常」というほどではありません。しかし、市場では最終的には合理的な価格形成が行なわれます。2000年3月にITバブルは弾けましたが、「なぜ」、「どのようして」弾けたかは謎のままです。ただ、それは起きたのです。

現時点では以下の4つの要素に注意が必要です。

  • 株式リターンの上昇幅と速さ:2023年年初から半導体メーカーの台湾セミコンダクター(TSMC)の株価は150%上昇し1、これを受けて台湾株式市場も85%上昇しました。韓国ではNvidia GPUメモリーチップの主要な製造メーカーであるSKハイニックスが220%上昇しました2。米国のNvidiaはこれを上回り、同期間で800%のリターンとなりました。そして、HSBC AIインデックスは18か月間で160%上昇しました3。この驚異の上昇率を示す別のものとしては、MSCIの生活必需品セクターに対するITセクターのリターンが、ITバブルの1999年から2000年にかけてのピークを越えたことが挙げられます。
  • バリュエーション:AIサプライチェーンに関連した多くの企業は台湾企業であり、この市場の時価総額の約85%がテクノロジーに関連した企業となっています4。最近、価格調整があったものの、それでも台湾市場は、新興国市場全体に対して、この30年間で最も高いプレミアムがついた株価となっており、相対的にも絶対的にもバリュエーションは高い水準にあります。
  • 銘柄数の偏り:今年の2024年8月までのMSCIエマージング・マーケット指数のリターンは7%程度で、ここ5年間では最も堅調でしたが、上昇した銘柄数という観点ではかなり限定的でした。北アジアのAIやインターネットに関連した3銘柄がインデックス・リターンの70%を占めたのです。AIテーマの起源である米国ではたった20%の銘柄しか市場平均を上回ることができませんでした(2024年8月時点)。この割合は直近20年間で最も低い水準です5。半導体で世界を牽引するTSMCのMSCIエマージング・マーケット指数におけるウェイトは10%に達しており、1銘柄のウェイトとしてはここ25年で最も高くなっています。
  • AIの収益性は未だ未知数:最後に、一番重要な点はAIの収益性が未知数だということです。米国のハイパースケイラー(大規模なコンピューティングやストレージを提供するサービス業者)の設備投資額は、2021年までの4年間で3,660億米ドルでしたが、2025年までには2倍以上の7,500億米ドルになると予想されています6。これが投資家の注目を集めています。なぜなら、こうした設備投資が現時点ではあまり収入を生み出していないからです。生成AIの今後の収益性がみえないこと、学習モデル(将来的に収益を生む可能性がある)と推論モデル(現時点で収益に貢献している)が分かれていること、Open AI関連の収益、学習モデル向けの設備を推論モデルに再利用する余地、といった観点から多くの疑問が湧きあがってきます。こうしたことは、AI銘柄の収益サイクルの継続性に対するリスクを示していると考えています。

テクノロジー銘柄の価格調整も一部に見受けられますが、これは穏やかなもので、ITセクターや特にAI関連銘柄の割高なバリュエーション、投資家の保有状況、需給環境を考慮すると、困難な局面が訪れれば、その悪影響を大きく受けるだろうとの見方を変えるものではありません。

最近の一部テクノロジー銘柄の下落が、深く幅広い下落局面の始まりなのか、単なる利食いなのかはわかりませんが、私たちの見方は、新興国市場は先進国市場よりも底堅く推移するだろうというものです。新興国と先進国のテクノロジー銘柄のバリュエーションには無視できないほどのギャップが存在しています。このギャップは、下落相場やその他の逆風が訪れた時に、下値に対する緩衝材になると考えられます。

1, 2, 5 Bloomberg

3 HSBC、2024年7月現在。同指数は、業績がAIセクターとNvidiaから直接的に影響を受ける30銘柄を加重平均したものです。

4 MSCI

6 RBC、企業データ(Google, Amazon, Meta, MSFT)、2024年7月現在

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