日本の自民党にとっては素晴らしい、英労働党にとっては悪夢の一週間

Feb 16, 2026

政治では、良い時は良いですが、悪い時は悪いのです!

コメント要約

  • 先週木曜日に見られたAIへの懸念を背景とした米国株の下落が継続すれば、マクロ環境は変わる可能性があります。
  • 英国の政治危機が続いています。マンデルソン前駐米大使の騒動を受けてスターマー首相の支持はさらに弱まっており、左派代表の選出は英国債と英ポンドの両方に重圧となる可能性があります。
  • 日本では、総選挙での高市氏の圧倒的な勝利は、彼女の財政規律と経済成長への焦点を支持を示しました。また超長期の日本国債には魅力的なバリュエーションがあると評価しています。
  • 日本株の追い風となる政策プラットフォームは、企業の投資や消費者支出を強化することから、日本は興味深い投資機会として再び浮上してくるとみています。
  • 先週の英国と日本における政治の展開は、ボラティリティが他の場所で低下していたとしても、国内政治や地政学が引き続き市場の重大なドライバーであることを改めて思い起こさせるものでした。

米国債利回りは週後半にかけて下落しました。直近のJOLTS調査で求人件数が軟調であったことを機に高まっていた、米労働市場の下振れリスク増大への懸念は、堅調な雇用統計によって緩和されました。また、金曜日に発表された消費者物価指数(CPI)も、今月発表される重要な経済指標として、経済見通しの再評価をもたらす可能性があるものとして注目を集めました。

しかし、いずれにおいても大幅なサプライズがない限り、市場が織り込む今年2回の米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げが試されることは、現時点では想定されづらいように見受けられます。米国経済が実際に金融環境の更なる緩和を必要としているかどうかには、疑問の余地があったとしても、です。このような環境の中、米国債市場のボラティリティは抑制された状態が続いており、MOVE指数は5年ぶりの低水準近辺に留まっています。

しかし、先週木曜日に見られたAIへの懸念を背景とした米国株の下落が継続すれば、このような環境は変わる可能性があります。これを除けば、このような比較的安定したマクロ環境が続く限りは、投資家が追加的な利回りを求めていることで、キャリー取引にとっては良好な環境となり得ます。このことが、社債需要を支える一因となっています。しかし、このような強い需要が、大量の新規発行の波に直面しているという兆候も増えています。

また、そんな中、米テクノロジー企業の直近の決算発表では、2026年の設備投資計画の更なる上方修正が見られています。一部では、サプライチェーンにボトルネックがあれば、このようなペースでの支出を実際に実現出来るか、疑問の声が生じ始める可能性もあるでしょう。しかし、現時点ではこれらのトレンドによって企業の起債予想額は更に増加しており、米投資適格社債の純新規発行額は、既に今年1年間で1兆米ドルを超えるとの見通しもあります。

先週の米アルファベット社による巨額の新規発行はその典型でした。米テクノロジー大手である同社は、複数の年限と通貨で、200億米ドルの社債を発行しました。この点において興味深いのは、この発行に100年債が含まれていたことです。同社が、とあるガレージの一角で設立されたのはほんの25年ほど前で、極めて速いスピードで変化する市場で事業を営み、10年後の企業の未来ですら予測することが困難であるにも拘わらず、2136年については言わずもがななことでしょう。

しかし、債券市場にとっては、市場が消化すべき更なる巨額の発行であることは間違いなく、その点を踏まえれば、今回の発行がスプレッドにやや圧力を掛けたことは全く驚くべきことではないでしょう。

需給面以外では、景気後退リスクが極めて低く、デフォルト・リスクが抑制されている最中にあって、クレジット債市場は追加的なリターンを引き続きもたらすと概ね期待出来るでしょう。そのような視点に立てば、マクロ環境は概ね良好な状態を維持しているように見受けられます。

しかし、より一層注目を集めているテーマはAIによる勝者と敗者に関連のものであり、その点で、Insurifyなどの新しいツール出現が保険業界にどの程度の影響を起こすのかを投資家が見極めようとしていることで、クレジット債市場で保険業者にプレッシャーが掛かっていることを興味深く受け止めました。社債市場では、2026年を通じてイベント・リスクの積み重なりが継続する可能性があるとみています。

ソフトウェアなど、最も影響を受けやすいと見られるセクターは、プライベート・デットやバンクローンなどの資産クラスにとって真の課題を突きつけています。ハイ・イールド債は相対的に良い状況と言え、投資適格債市場では、スプレッドの方向性を決定づける最大要因は、需要と供給といったテクニカル面の相互作用となる可能性が高いでしょう。

それ以外では、当面の間、国債市場にそれほど熱狂することは困難であり、デュレーションやイールドカーブの形状に関してそれほど強い確信度を持っていません。また、ユーロ金利市場に関しても同様の考え方を持っており、欧州中央銀行(ECB)が長期間に亘って政策を据え置くとの予想を維持しています。

為替に関して言えば、成長における米国例外主義が、米ドルの過度な下落を防ぐ可能性があるとの見方を維持しているものの、グローバル投資家の資金フローが継続的に米国から離れ続けている中、上昇モメンタムに乗ることも難しいとみています。グローバル株がS&Pをアウトパフォームし続けている中、これは当面の間、米ドルに重石を与え続ける可能性のあるトレンドかも知れません。

その意味で、足元では一部の高利回りエマージング市場(EM)通貨に投資妙味があるとみており、中央銀行が国内のインフレを抑制しようとする中で、比較的高い実質金利が維持されている国を選好しています。

米国とユーロ圏以外の出来事として、前週末の英首相首席補佐官モーガン・マクスウィーニー氏の辞任は、恥辱にさらされているピーター・マンデルソン前駐米大使の選出を後押ししたという彼の役割によるものでしたが、キア・スターマー首相への支持固めにはつながりませんでした。反対派に囲まれる中、スターマー氏は遠くない将来に退陣が避けられないとの感覚が強まっています。

労働党内閣の閣僚は先週初めに支持を表明したものの、今月末のゴートン・アンド・デントンで補選に敗北すれば、決定打となる可能性があるでしょう。仮に乗り切った場合、傷を負った首相が5月の地方選挙まで耐える可能性はありますが、同選挙が労働党にとって極めて厳しい結果になることが既に広く予想されています。

しかし、その間、この先数週間でマンデルソン氏が英政府高官と行ったコミュニケーションについて、更に多くのことが明らかになる可能性は極めて高いと言えるでしょう。通信アプリWhatsApp上のメッセージや、その他の会話もメディアにリークされているため、首相の立場は急速に失われる可能性があります。ホワイトハウスからの話によれば、米政権はマンデルソン氏が安全保障上のリスクであるとして懸念を提起したとしており、彼が機密情報を共有したとの推測は潜在的に有害であるとしていたようです。

また、ウェス・ストリーティング氏や、その他マンデルソン氏に近い人物の求心力も、このみすぼらしい一件によって弱まる可能性があるとも見られています。これは労働党の中でも左派の政治家、おそらくエド・ミリバンド氏やアンジェラ・レイナー氏への扉を開くことにつながる可能性があります。

左派への急転換は、英金融市場の見通しにかなりの影響をもたらす可能性があります。このことが財政に対する責任を弱め、金融市場への無関心をもたらすという認識は、英国債と英ポンドの両方に重圧となる、リスク・プレミアムの増大につながる可能性があります。

しかし、このような動きが短期的に企業と消費者の信頼感を更に損なうことで、大幅な経済の下振れリスクが存在し、イングランド銀行(英中央銀行、BoE)がさらに利下げを行うことになる可能性があります。この場合、英ポンドは不均衡に脆弱な状態であるように見えるものの、英国債の動きとしては、着実なイールドカーブのスティープ化につながる可能性があり、結果として政府は、英国債務管理局(DMO)に対して、債券発行年限の短期化をするよう求めることになり得るでしょう。

より左寄りの政権による長期的な影響は、これまでとは異なるものになる可能性があります。例えば、労働党が今後EUとのより緊密な関係を追求し、米国とはより距離を置く可能性があります。しかし、英国改革党(リフォームUK)が優勢を保っている中、労働党は次の総選挙で完敗を喫さないよう、ポピュリスト的な声に対応する必要があります。

その結果、これがどのように左翼ポピュリスト寄りの方向へとつながる可能性があるのかは、興味深い点でしょう。しかし、今現在に話を戻すと、この1週間で我々は英ポンドのショート・ポジションを積み増し、今ではこのポジションに比較的高い確信度を持っています。英国債に関しては再評価を続けていますが、より強気なポジションを取っています。

しかし、先週のハト派なBoE会合を受け、政治的リスクを差し置いて見れば、英国債はファンダメンタルズに対して魅力的な価格評価となっているように見受けられます。

先週は、日本にとっても政治的に大きな動きのあった1週間でした。総選挙での高市氏の圧倒的な勝利は、彼女自身のビジョンに基づき、国を前進させるための強い力を首相に与えたと言えるでしょう。その文脈において、高市氏は経済成長の実現と日本の強化に焦点を当てています。これまでにも述べた通り、2026年の補正予算での消費税の引き下げを予想していますが、26年の財政赤字は対GDP比3.5%未満に留まると予想しており、これは他のほぼ全ての先進国よりもはるかに低い水準です。

したがって、日本の債務持続性に関する懸念の一部は過剰であるとの考えを維持しており、超長期の日本国債には魅力的なバリュエーションがあると評価しています。

さらに、高市氏は、将来の支出を確実に抑制するように注力する姿勢を見せています。その意味で、日本が軍事費を増額しようとしている中で、外貨準備金からの収益を活用できる可能性があるという議論は、比較的鋭い見方のように思います。この点からも、高市氏が在任期間中に日本の財政スタンスを緩和するポピュリスト的な首相になるとの見方には異議を唱えます。

また、高市氏が日本の債券利回りと円の価値に安定を求めていることも印象的です。円高を促す強い動機はないように見受けられるものの、政府が更なる円安を食い止める境界線として、160円という水準は益々明確になっているように見受けられます。引き続き、日銀は今年2回の利上げを実施し、金融政策正常化に伴って短期債の利回りが上昇する中、日本のイールドカーブはフラット化するとの予想を維持しています。その意味で、10年債利回りについては現在の水準近辺に留まる可能性があると考えています。最終的には、30年債利回りが10年債利回りを100bps超上回った水準で取引されるべきではないと考えており、この観点から3.5%近辺にある30年債の絶対的な利回り水準は魅力的であると考えています(とりわけ米ドル・ヘッジした場合の利回りが6.5%近いことからも尚更です)。

円については構造的に強気な見方を維持しているものの、為替ではポジションを保有しないことが最善とみており、円が158円近辺まで下落した場合にポジション構築を検討します。一方、政策プラットフォームは日本株の追い風となるもので、より楽観的な見通しは企業の投資や消費者支出を強化し、経済的利益を支えることになる可能性もあるでしょう。長い間影に隠れていたものの、日本はようやく興味深い投資機会として再び浮上してくるとみています。

今後の見通し

この先を見据えると、今月末に掛けては主要金利において概ね穏やかな市場環境を予想しています。一方で、米国経済が比較的底堅さを維持する中、インフレが市場予想を上回るリスクを注視しています。

AIが今後数年間、米国および広範なグローバル経済における生産性の伸びをどのように促すかについては多くの議論がありますが、実際にはその辺りに関してかなりの不確実性が残っています。AIの導入は急速に加速していますが、生産性の変化は滑らかでも線形でもない可能性があることも認識しています。

このような点を踏まえれば、AI軍拡競争において、急いでキャッシュを投資に回すことにより、事業者が不足する原材料や部品、熟練の労働力を追求する場合、短期的には価格の上振れリスクにつながる可能性があることをより懸念し始めています。

これについては注視し続けていますが、仮にインフレが短期的に上昇しない場合、それは生産性が我々の想像より早く、より急速に上昇したことに起因する可能性が高く、それは市場にとってはポジティブな意味を持つでしょう。

それ以外では、先週の英国と日本の展開は、政治的なボラティリティがいかに市場の重大なドライバーになり得るかを改めて思い起こさせるものでした。確かであるのは、仮にボラティリティが他の場所で低下していたとしても、国内政治や地政学に関しては、ボラティリティ上昇に向かうトレンドは容易に止められません。その点で言えば、英国ではこの10年間で7人目となる新たな首相が誕生することになるかも知れません。

かつては、イタリアのような国で、そのような回転ドア形式のリーダーシップ交代劇が見られた時もありました。イタリア政府はいまやメローニ首相の下、政治的安定のモデルになっていますが、今度は英国がその癖を継承したかのようです。実際、デビッド・キャメロン氏以前の7人の英国首相が務めた期間は、1964年以降46年間に亘り、当時はビートルズがチャートの頂点に座っていた時代でもありました。しかし、もはや今の英国は勢いのある60年代の英国ではありません。対照的に、日本では、次の数年間が今後、華やかな20年代として語られることになるかも知れません。  

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