トランプがグリーンに

Jan 13, 2026

波乱の幕開け?

コメント要約

  • ベネズエラが新年早々ヘッドラインを賑わせているほか、米国が中南米やグリーンランドにおける支配力を強める中、地政学的リスクが高まっています。
  • 米国の成長基盤は比較的堅調で、先週発表されたISM非製造業景況指数は経済活動の持続的な勢いを示唆しています。
  • 10年国債利回りがキャッシュ金利を上回る水準で取引されており、2026年は利上げよりも利下げを検討する国が多いことも考慮すれば、グローバル債券リターンの見通しは、2020年以降のどの年始時点と比較しても、最も建設的であるように見受けられます。
  • エマージング市場では、ベネズエラ石油公社(PDVSA)債が年初(米国介入前)時点と比較して約30%上昇するなど、ベネスエラ資産の価格が急騰しました。
  • 国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税に関する米連邦最高裁の判決も近いうちに予想されるものの、この関税が否決されても迅速に別の関税が導入されるとみています。また多くの企業がすでに支払った関税を米政府に対する訴訟で取り戻そうといったリスクを冒さないのではないか、と考えています。

 2026年は波乱の幕開けとなりました。トランプ米大統領が再び注目を集めており、ベネズエラのカラカスでのマドゥロ大統領の劇的な拘束や大西洋におけるロシア船の拿捕、そしてグリーンランドを米国主権下に組み込む意向の再表明など、新年早々ヘッドラインを賑わせています。  

しかし、このような地政学的な不安定さにもかかわらず、世界の債券市場は年初来、おおむねレンジ内で推移しています。米国では、10年国債利回りが過去4ヶ月間に亘って概ね4.00%~4.25%の範囲で取引されており、金利先物市場では2026年前半に米連邦準備制度理事会(FRB)による1回の利下げ、後半にさらに1回の利下げが織り込まれています。

米国の成長基盤は比較的堅調で、先週発表されたISM非製造業景況指数は経済活動の持続的な勢いを示唆しています。一方、次期FRB議長は一定の金融緩和を実施すると予想されており、候補者たちは人工知能(AI)による生産性向上によって、強い成長に加え、低インフレ、そして低金利を実現すると強調しています。

したがって、金利が現状のレンジから突き抜けて変化するためには、このようなシナリオを再構築する指標やイベントが必要であり、それまでの間、金利は短期的な均衡状態にあるとみています。

最近の米国の行動による地政学的な影響に目を向けると、現政権がモンロー主義(1823年にジェームズ・モンロー大統領が宣言した、西半球を米国の影響圏とする方針)を標榜しているという認識が高まっています。

これは、昨年ワシントンDCにおける政策立案者との会合でも私たちは感じており、昨年10月のアルゼンチンでの中間選挙に先立ち、ミレイ大統領への手厚い支援を決定した背景でもあります。

足元では、トランプ氏が「当面の間、ベネズエラを事実上『支配』する」と主張したり、グリーンランドにおける米国の目的を「必要であればいかなる手段でも追求する」と発言したりする中で、その傾向がさらに明確に示されています。

ベネズエラに関しては、米国の介入によって、石油産業の荒廃したインフラ再建が進む可能性があり、これにより米国は石油輸出国機構(OPEC)全体の余剰生産能力を上回る規模の生産能力を支配する立場となるかもしれません。

原油価格の下落見通しは、インフレや金利にとって好材料となる一方、カナダなどの高コスト重油生産国や、サウジアラビアなどの財政が原油収入に依存する国々にとっては厳しい環境となるでしょう。

ただし、このような動向は今後数四半期で徐々に顕在化するとみられ、目先数週間で原油価格に影響を与えるものではないでしょう。

一方、トランプ氏のグリーンランドへの脅迫は、欧州各国にさらなるパニック(そして絶望感)を引き起こしています。パワー・ポリティクスの時代において、欧州は昨年、自らが弱いプレイヤーであることを露呈しました。欧州は抗議することは出来ますが、トランプ政権に対する影響力は極めて限られており、その意味で、米国が真にグリーンランドを望むのであれば、それを阻むものはほとんどないと言えるでしょう。

より大きな危険性としては、米国の政策が他の権威主義体制に与える影響かもしれません。例えば、中国は台湾やアジア太平洋地域でより自由に行動出来ると感じ、ロシアがウクライナ侵攻で国際法に違反したことを批判することが難しくなる可能性があります。

こう考えれば、トランプ政権は自国が明確に保持する力を慎重に行使する必要があり、さもなくば、今後数十年にわたり、より危険で不安定な世界を生み出すことにつながり兼ねません。

過去1年以上にわたって、グローバル市場は地政学的不安定さや、積極的で介入主義的な米大統領の行動に対して鈍感になりつつあるように見受けられます。確かに、米国経済が好調であれば、市場がそうした要因を無視するのも理解できます。

しかし、国家や国際政治において激変の時を生きていることを改めて思い起こせば、今後数ヶ月で市場がより警戒すべき環境になるまでに、それほど多くは必要ないのかも知れません。そのような状況になれば、質への逃避から国債利回りは低下する可能性があります。

同様に、AIの価格評価に対する株式市場のセンチメントが急反転した場合もそのような結果となるでしょう。ただし、このリスクは2026年後半に、AI投資が減速し始めた証拠が確認されれば、より現実味を帯びるとみています。

また、今後数ヶ月では、原油価格の前年比でのベース効果に伴うCPIの低下も国債利回りの支えとなる可能性があります。一方、国債の発行増は、長期債にとって困難な投資環境をもたらしています。ただし、発行計画に応じて平均年限が大幅に短くなることによって、多くの市場のイールドカーブ上に織り込まれているターム・プレミアムへの圧力が和らぐかも知れません。

とは言え、過去数年間で初めて、10年国債利回りがキャッシュ金利を上回る水準で取引されており、この先1年間では利上げよりも利下げを検討する国が多いことも考慮すれば、金利デュレーションに対するグローバル債券リターンの見通しは、2020年以降のどの年始時点と比較しても、最も建設的であるように見受けられます。

相対的な観点では、英国債のイールドカーブに対して、より建設的な見解を維持しています。その理由としては、今後数ヶ月は政治リスクが抑制されているとともに、経済とインフレに関する今後のニュースも、イングランド銀行(英中央銀行、BoE)による、さらなる金融緩和の根拠を強める可能性があることが挙げられます。また、ノルウェーとアイスランドの現地金利についても、利下げの可能性を踏まえて前向きな見方をしています。

ユーロ圏の主要国債は、2025年にドイツの財政拡張に関する発表を受けてアンダーパフォームしました。イールドカーブの長期ゾーンに対する圧力は、長期債への需要減につながるオランダの年金制度改革を控える中で、昨年末に掛けて続きました。

この先を見据えると、ユーロ圏経済は成長に苦戦し、インフレ・リスクは上方よりも下方に偏っていると考えています。ECBは、シュナーベル氏らの発言を踏まえれば、財政政策が緩和傾向にある時期の利下げを躊躇する可能性があり、ドイツ国債に対して過度に前向きな見通しを持つことは禁物とみています。

ただし、短期的にはインフレが下方にサプライズをもたらすことにより、この先数ヶ月間では国債リターンがキャッシュ金利のリターンを上回る可能性はあるとみています。

日本では、利回りには引き続き上昇圧力が掛かったものの、10年国債利回りが2%を上回る水準で、市場に一定の安定感が出ているとの見方も広がっています。また、12月の東京のインフレ率が前年比2.7%から2.0%に低下したことも注目に値します。これは、今後数週間で発表される全国の数値でも同様の低下が予想されることを示唆しています。

コアインフレ率は依然として高水準にあるものの、為替や米価の変動による歪みが指標から消えつつある中で、日銀のインフレ目標に近い広範な物価の安定が出現しつつあるとの見方もあります。当社では、日本の10年国債について、2%を上回る水準でショート・ポジションを解消して以降は、中立の姿勢を維持していますが、相対価値の観点から、10年国債に対する30年国債のオーバーウェイトを維持しています。

エマージング市場では、ベネズエラ石油公社(PDVSA)債が年初(米国介入前)時点と比較して約30%上昇するなど、ベネスエラ資産の価格が急騰しました。

より広範に見れば、中南米全体で米国寄りの動きが強まっている様相も見受けられ、モンロー主義の是非はさておき、同地域の資産への関心が高まる可能性があります。これにより、リスク・プレミアムが低下すれば、建設的な投資環境が生まれるでしょう。

当社では、コロンビアとブラジルの現地金利に対して前向きな見方をしています。これらの国では、左派政権の時代は終わりに近づいていると考えています。為替については、チリ・ペソに対して建設的な見方を維持しています。

その他の為替市場では、米国の優位性という観点から、2026年に入っていく中で米ドルに対して強気の見方を維持しています。英ポンドについては弱気で、経済指標の下振れサプライズや利下げにより、1英ポンド=1.30米ドルを割り込むと予想しています。

また、欧州のマクロ環境が悪化していることから、ユーロに対しても弱気に見ています。相対的にノルウェー・クローネやアイスランド・クローナ、および中国人民元をユーロに対して前向きにみています。

現時点では円に対する強い見解はありませんが、他の通貨では、ボラティリティが低い環境において、為替においてはキャリー取引が魅力的なアプローチであると考えています。

社債市場では、キャリーという点では前向きではあるものの、同資産クラスの価格評価についてはそれほど妙味を感じていません。2026年の社債市場における多くの機会は、セクターや発行体間の相対的なポジションから生まれる可能性が高く、より明確な方向性のある取引からは生まれにくいとみています。

マクロ環境は社債市場にとって概ね好ましいものの、米国では、ハイパースケーラーの巨額発行により、投資適格社債の新規発行額が今年1兆米ドルに達する可能性があることを念頭に置く必要があるでしょう。同額は、昨年の約6,500億米ドル、その前の2年間の典型的な発行ペースであった約4,500億ドルを上回る水準です。

今後の見通し

今後の見通しとして、米国政府機関閉鎖による経済指標の混乱期を脱し、今後は定期的な経済指標の発表が再開されます。常に投資家にとって重要な材料となる雇用統計や、今週水曜日のCPIも注目されます。

ただし、過去数ヶ月間で形成された米国債の均衡状態を崩すには、大きなサプライズやショックが必要になるとみています。また、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税に関する米連邦最高裁の判決も予想され、市場の変動要因となる可能性があります。ただし、この関税が否決されても迅速に別の関税が導入されることは明らかです。

また、多くの企業がすでに支払った関税を米政府に対する訴訟で取り戻そうといったリスクを冒さないのではないか、と考えています。

地政学リスクに関して言えば、グリーンランドに対する米国の軍事行動の可能性は極めて低いと考えています。ただし、小さな人口しかない住民が、「雪と岩の地」の主権を「一握りの米ドル」と引き換えに譲り渡す意向を示したとしても不思議ではありません。

歴史的な前例として、1917年に米国がデンマークから購入した米国領ヴァージン諸島があります。これはパナマ運河の入口を支配するための動きでした。

グリーンランドの価格を600億米ドルとすれば、5万7,000人の住民が一夜にしてミリオネアになれる計算で、過酷な気候であっても幾らか魅力的と思えてしまうような、宝くじのようにも映ります。

とは言え、2026年初の特徴として最も際立つのは、米国の圧倒的な力と強さであり、またそれとは極めて対照的にな欧州全体の弱さと消極性と言えるかも知れません。欧州の政治家たちはこれまで、トランプ氏がグリーン(環境)政策を採用するよう、説得することが出来ると期待していました。明らかに、現在のトランプ氏のグリーン(ランド)政策は、彼らが想定していたものではなかったでしょう!

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